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母国語とは

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 今日の大学での授業のときに隣り合わせた女の子と、授業前にちょっとおしゃべり。明らかにアジア人の顔なのですが英語が非常に流暢だったので、「母国語は?」と聞いたところ、ちょっとちゅうちょしていました。中国から来たのが小学校のころなので、英語の方がスムーズなのだそう。「両親と話すときは中国語だけれど、なんだか変な感じ」で、「時々混乱してしまう」ことがあるとのこと。小さいころの中国語の勉強はどんなだったか、とか、聞いたみたかったのですが、そこで授業が始まったので突っ込んできけませんでした。
 たしかに、小学校から英語で教育を受けていれば、アカデミックな状況では英語の方が強くなっても不思議ではないけれど、両親との日常会話でも英語の方がよくなってしまう、というのにちょっとびっくり。考えてみれば、我が家の娘(日本では新6年生)なんて幼稚園からこちらなので、大学生ぐらいになったら英語の方が第一言語になってしまう可能性もあるわけです。
 確かに今の時点でも、英語の読解力は学校のテストによると14歳並のレベルがありますが、漢字は小学校5年生の読みでも5割程度と、日本語は遅れ気味です。私との会話も単語に英語が混じってしまうことがあります(「今日は好きなテレビ番組をmissしちゃった」という感じ)。注意すると言い直しますが、「なんだかついまじっちゃう」とのこと。
 でも、学校の友人が遊びに来たときの会話を耳にしていると、ふっと日本語が混じる時もあるのです。娘に確認したら、「時々、ぼっとしていると日本語がうっかり入っちゃうことがある」とのこと。日本語と英語の自動切り替え回路がまだ完全ではない、ということなのでしょうか。
 まだ娘が幼いころは、両親が日本人なのに英語がメインのお子さんを見かけると、「日本語教育に興味がなかったのかな」なんて思ったりしていました。ところが、いざ娘が10代になると、日本語を母国語として習得させるには、いかに親が支援し、本人が努力しなければならないかを痛感しています。
 幸い、娘は日本の漫画大好き、日本の歌大好き、日本のおかし大好き、という日本好きなので、漢字や本読みといった日本語補習校の宿題もしぶしぶながらやっています。外国に住みながら、日本人として日本語(そして日本文化)を習得してほしいと思うのは親のわがまま、おしつけかな、とも思いますが、法律上は日本人なわけだし、やっぱり日本語を第一言語として習得してもらうために、もうしばらくあがいてみようと思います。

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記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

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