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通訳を教えるには・・・

Hubbub from the Hub

通訳・翻訳者リレーブログ

アメリカ生活は来年の1月までで、その後8月に再びアメリカに戻るまでの数ヶ月間、日本に滞在します。バリバリ通訳を頑張ろう、と思っているのですが、4月から7月末まで都内の某大学の通訳コースを担当することになりました。夏前からお話を頂いていて、先日正式に決定したところです。

これまでも「どんな教材が良いだろうか?」と試行錯誤していました。市販のCDも良いですが、なるべく本物の講演や会議を録音したものが望ましいと思って、こちらで参加している色々な会議でも録音してみました。担当するのは入門の授業ですが、全般に英語力の高い学生が集まる大学ですので、ある程度チャレンジングなものが良いかと思っています。しかし内容があまりに難しくても、練習になりません。

自分が通訳学校に通った経験が無いのでよくわかりませんが、そういった学校に通った経験のある友達の話では、結構政治・経済・金融・外交といった固い内容の教材が多いとか。もちろんそれらのテーマも大切だとは思いますが、自分が通訳者になりたての頃に、上記のようなお仕事を頂いたかと考えると、「???」。友達の話を聞いても、最初は工場見学、商品の売り込みなどで経験を積んで、ゆっくりと固い内容をこなすようになるのが大抵のパターン。そして、講座を取る学生の中で、本当に通訳者になるのは一部です。ですからチョムスキーの語る米国政治論も面白いですが、大学の通訳講座には不向きかな?と思ったりします。

そう考えると、通訳者として非常に大切な「話の筋を見つけ、論理的な思考をし、高いコミュニケーション力を有する」という能力を育てる授業にできたら、と考えています。内容は必ずしも固くなく、しかし躍動感に溢れ、コミュニケーション能力の高いスピーカーによるスピーチなどが望ましいかもしれません。

今の自分を見つめなおすと、通訳者になるための訓練を受けたことで、話の焦点を突き詰める力、論理的な思考、表現力、聞く力などが高められたと感じます。もちろん、まだまだ自分を鍛えなければなりませんが、これらの能力は通訳をしなくても、日常生活の中で非常に価値のある力だと感じます。ですから半年弱の授業の中で、できるだけ学生の能力を高めることを目指し、頑張りたいと思います。

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Hubbub from the Hub

幼い頃から英語に触れ、大学在学中よりフリーランス会議通訳者として活躍、現在は米国大学院に籍を置き、研究生活と通訳の二束のわらじをはいている。

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