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スポーツのすがすがしさ

Hubbub from the Hub

通訳・翻訳者リレーブログ

日本にいる時は季節に関わり無く、ボストンでは雪の降らない4月〜10月の週末は、大抵サッカーの審判をしています。時には平日の夜であっても、誘われて予定が無ければスタジアムへ直行する生活です。ここ数年は比較的よい評価を得て、TV放送が入るような試合を担当するようにもなりました。しかしボストンに戻ってから数回、中学生年代の試合を担当する機会に恵まれました。それも、めったに経験しない女子の試合です。

別にサッカー協会から干されて、大人の試合を担当しないのではありません。子供たちは夏休みで試合をするのですが、多くの審判は夏休みで外出中なのです。従って、いつも数万人の観衆が入るスタジアムで一緒にプロの試合を審判をするような仲間が、ローカルなグラウンドに集合することとなりました。私の担当は14歳の女子と17歳の男子。17歳の男子ともなれば、試合中に文句も言うし、口答えも一人前です。その反面、こちらも警告や退場のカードを出しやすい。

しかし14歳の女子となると、話は別です。試合後にいつもはプロリーグを担当している仲間と異口同音に感想を言い合ったのは、15歳位までの選手は、見ていて非常にすがすがしいということです。試合の残り時間を聞かれて教えてあげると"Thank you!" 反則のあった地点を教えてあげると、やはり"Thank you!" 無言で立ち去っていく17歳の男子や、もしくは大人の選手とは全く違います。そして相手の反則や、自分の失敗に腹を立てて、少し乱暴な言葉遣いをしてしまったことに気づくと、必死に相手や審判に「ごめん、ちょっと言い過ぎた…」と反省の念。

もちろん大人の試合で選手が14歳の選手と同じような反応をしたら少し不気味です。プロの選手ともなれば、ある程度のことが許容されるのも事実です。しかし相手の選手や審判、チームの仲間を思いやりながらプレーをする気持ちは、大人の選手も14歳の選手から学べることが多いと感じました。

日本の多くの選手は、これまで経験したことのあるアメリカやフランスの選手より礼儀正しい場合が多いです。しかし、サッカー先進国のヨーロッパや南米に技術レベルが近づくと同時に、少しずつ日本の特徴であった礼儀正しいプレーが失われているようにも感じます。言葉を超えて理解しあう道具にもなり得るスポーツが、相手の選手を(時には審判を)「敵」とみなすことでコミュニケーションの橋渡しを阻害していることもあります。たまには14歳の女子の試合も悪くは無いな、と思った週末でした。

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Hubbub from the Hub

幼い頃から英語に触れ、大学在学中よりフリーランス会議通訳者として活躍、現在は米国大学院に籍を置き、研究生活と通訳の二束のわらじをはいている。

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