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the apple of my eye

通訳・翻訳者リレーブログ

在宅翻訳者には iPod は不要だが、音楽が欲しい時はある。もちろん CD プレイヤーがあれば一応事足りるが、手持ちの CD ばかり聴いていると飽きてくることもある。そこで重宝するのが、インターネットで聴けるラジオ。海外のラジオも聴くことができるので楽しい。私はロンドンに住んでいた頃、主に Capital FM という民放ラジオを聴いていたので、「お気に入り」登録をしていた。
「していた」と過去形なのは、なんと、今年の4月から Capital FM が聴けなくなったのだ。その理由は、著作権の問題。音楽を流すラジオは、Phonographic Performance Limited (PPL)という団体に、licence fee を支払って曲をかけることを認められている。PPL は個々のミュージシャンを代表して印税を徴収しているというわけだ。PPL が、そのライセンス契約には海外に音楽を放送することは含まれていないといって、「今後、海外にインターネットを通して放送を続けるならその分のライセンス料を支払ってもらう」と英国のラジオ局各社を脅したらしい。民放ラジオ局の収入源はスポンサー、スポンサーがターゲットにしたいのは UK 国内に住む人だ。海外に住んでいる人に放送を聴いてもらってもたいしたメリットはないのに、ライセンス料だけがっぽり支払わされちゃたまらないってことで、Capital FM も、もうひとつ私が気に入っていた Heart Radio も Virgin も、こぞって海外への streaming を停止する措置を取ったのだ。
それにしてもテクノロジーってすごいもんで、Capital FM にアクセスしようとすると、「私は日本にいる」なんて一言も言ってないのに、「あなたはどうやら英国外にお住まいですね」と聞いてくる。「この判断に何か間違いがあれば、お住まいの郵便番号を入力してください」ですって。Heart Radio なんて問答無用に「アクセスできません」でおしまい。試しに、Capital の方には「CR8 5JF」なんて、手元の英字紙に載っていた英国のSECOMの広告から郵便番号を盗んで入力してみた。おお、プレイヤーが立ち上がったぞ。音声も聴こえ始めた!……と思った途端、ブチ! 音が消えた。なになに、「システム上に gremlin が発見されましたので、一時的にストリームを停止します」だと? 負けた。私ごときが考えることなど、お見通しというわけだ。それにしても gremlin とは失礼なっ!
アメリカのラジオ局は OK だそうた。なぜって、アメリカでのラジオ放送に関する著作権の取り扱いが違うから。アメリカではラジオ局が流す音楽は、ミュージシャンにとっては「宣伝」なんだそうだ。ミュージシャンたちは、レコード(CD) が売れたときに印税を受け取るだけ。
米英の違いは、どうやら民放ラジオの力の強さにあるらしい。アメリカは元々民放ラジオが発達し、ラジオで曲が流れることによって売れ行きが左右されるという仕組みで音楽界・ラジオの双方が発展してきたが、英国はご存知の通り、国営放送が強かったお国柄。民営化された今でも、BBC ラジオには国内向けでもいったいいくつ station があるのというくらい。海外向けには BBC World 以外にペルシャ語やロシア語放送まである。そして、現時点でまだ、BBC ラジオ は国内向け放送を海外在住者にも聴かせてくれるのだ!
なぜか? そりゃもう、大英帝国のおかげに決まっている。今も世界中に、大英帝国の庇護下にある国々が数多くあり、BBC はその国の人々に向けて英国の番組を放送する義務があるのだ。すばらしい。Brava! 女王陛下、万歳!

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記事を書いた人

the apple of my eye

日本・米国にて商社勤務後、英国滞在中に翻訳者としての活動を開始。現在は、在宅翻訳者として多忙な日々を送る傍ら、出版翻訳コンテスト選定業務も手がけている。子育てにも奮闘中!

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