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第101回 このままでいいのかなと思ったときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

人生このままでいいのかなと、ふと思うときがあります。

平凡な日常に埋没しそうなとき、何かのきっかけで、自分の人生を見直してみたりします。

そんなときに思い出す詩があります。

*****

Pastime
Christina Rossetti

A boat amid the ripples, drifting, rocking,
Two idle people, without pause or aim;
While in the ominous west there gathers darkness
Flushed with flame.

A haycock in a hayfield backing, lapping,
Two drowsy people pillowed round about;
While in the ominous west across the darkness
Flame leaps out.

Better a wrecked life than a life so aimless,
Better a wrecked life than a life so soft;
The ominous west glooms thundering, with its fire
Lit aloft.

*****

余暇
クリスティーナ・ロセッティ

一艘の舟が さざ波に 漂い 揺れる
ふたりの人影は 所在なく しかし 止まることなく 目指すところなく
不吉にも 西の空には 暗闇が垂れこめる
炎に輝きもする

干し草の山が 草地で ささやき 眠る
ふたりの人影は うつらうつらと
不吉にも 西の空には 暗闇を渡り
炎が立ち上がる

あてどのない人生より 辛い人生の方がまし
あたりさわりのない人生より 辛い人生の方がまし
不吉にも 西の空には 稲妻が走る
雷光が高く昇る

*****

A boat amid the ripples「さざ波に揺れる一艘の舟」も、A haycock in a hayfield「草地の干し草の山」も、のどかな光景そのものです。

のどかな光景とは、目的地を目指してひた走るのでなく、ただwithout pause or aim「止まることなく 目指すところなく」、のんびりと漂うこと。

あくせくと働くのでなく、穏やかに日々の仕事をこなし、ひと仕事終えれば、pillowed round about「うつらうつらと」すること。

*****

しかし、穏やかに見える日常にも、ominous「不吉な」予感が漂います。

across the darkness/Flame leaps out「暗闇に稲妻が走る」ように、人生の天気も急変します。

Better a wrecked life than a life so aimless,
Better a wrecked life than a life so soft;

あてどのない人生より 辛い人生の方がまし
あたりさわりのない人生より 辛い人生の方がまし

穏やかな日常が、突然の稲妻に切り裂かれるのは、嫌なものでもあります。

しかし、たとえ嫌なことであっても、それがあるからこそ、雨を避けて走って別のところへ行ったり、必死に舟を漕いで今いるところから動いたりするうちに、人生にも素晴らしい変化が訪れたりするものでもあるのです。

*****

今回の訳のポイント

クリスティーナ・ロセッティの詩は、いつもやさしくやわらかい雰囲気が漂うのですが、突然の雷のように、急に重く厳しい言葉が飛んできます。

しかし、特別に難しく堅い単語を使うのでなく、簡素な言葉を使うので、日本語にするには工夫が必要です。

この詩人らしいやわらかなトーンを維持しつつ表現するとなると、a life so aimless「あてどのない人生」や、a life so soft「あたりさわりのない人生」のように、ひらがなの力を借りることになります。

こうした工夫をして、詩のメッセージを理解できるとき、「日本語ありがとう!」と叫びたくなります。

 

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Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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