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第127回 明るく元気なひとに出会ったときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

いつも明るくて元気な人がいます。

エネルギーに満ち満ちていて、周りのみんなを元気にする人です。

そういう人の心の中はどうなっているのだろうか、そんなことを考えたときに思い出す詩があります。

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She Dried Her Tears And They Did Smile
Emily Brontë

She dried her tears and they did smile
To see her cheeks’ returning glow
How little dreaming all the while
That full heart throbbed to overflow

With that sweet look and lively tone
And bright eye shining all the day
They could not guess at midnight lone
How she would weep the time away

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その女(ひと)は涙を拭いた それでみんなも微笑んだ
エミリー・ブロンテ

その女(ひと)は涙を拭いた それでみんなも微笑んだ
その女(ひと)の頬がまた明るく輝いたから
まさか思ってもいなかっただろう
その心が溢れんばかりにずっと脈打っていたのを

その優しげな面差しと 溌剌とした声
朝から晩まできらきらした瞳
そのせいで気づかなかった 夜はひとり
その女(ひと)が泣き明かしていたことを

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明るく元気な人は、that sweet look「その優しげな面差し」と、lively tone「溌剌とした声」で、周囲の人間にも元気を分け与えます。

いつも溌剌としていて、bright eye shining all the day「朝から晩まできらきらした瞳」を持っているので、誰もが心惹かれる魅力を放っています。

そんな人も、ときには思いが溢れて、She dried her tears「涙を拭いた」りすることもありますが、 To see her cheeks’ returning glow「頬がまた明るく輝いた」のを見て、they did smile「みんなも微笑んだ」りするのです。

しかし、あんなに明るい人が、まさかひとり淋しく夜を泣き明かしているなんて、そう周りの人間は思ってしまうのです。

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「陽気なイタリア人」というのがステレオタイプになっていますが、明るい人が持つ暗い側面というのを、以前、ある記事を目にしてとても納得したことがあります。

イタリア北部が大規模な地震に見舞われた際に、現地取材をしたルポだったのですが、取材中も「大丈夫、何とかなる」と明るく話していた現地の男性が、取材終了後ふと振り返ると、深刻な面持ちで頭を抱えていた。そんな一文があって、この詩を思い出しました。

同じように、繊細な心を持ち、人をいつも元気にしている明るい人を見ると、同じことを思ってしまいます。

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今回の訳のポイント

They could not guess at midnight lone
How she would weep the time away
そのせいで気づかなかった 夜はひとり
その女(ひと)が泣き明かしていたことを

「周りを元気にする明るい人は、人知れずひとり泣いている」というこの詩は、明るい人の核心を突いていると感じます。

周囲の人の心が読めるからこそ明るく振る舞える人は、自分の心もよく読める人なので、自分の心に向き合う「ひとり」の時間も必要なのです。

人を笑わせることを仕事とするコメディアンが、実は、誰よりもひとりの時間を好み、そんな時間は寡黙に自分に向き合っているという話をよく聞きます。それは、繊細な精神によって、人の心を読みその心を思いやっているからこそ、同じくらいに自分の心にも向き合っているからなのだ。そう思います。

Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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