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第162回 若いころの苦労を考えるときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

涙の数だけ強くなれる、と言われます。

若いうちに苦労したほうが、心が豊かで深みのある人間になると言われたりもします。

でも、涙なんて流さないほうがいいんだけどなあ。そんなことを考えていると思い出す詩があります。

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There Is But One May In The Year,
Christina Rossetti

There is but one May in the year,
And sometimes May is wet and cold;
There is but one May in the year
Before the year grows old.
Yet though it be the chilliest May,
With least of sun and most of showers,
Its wind and dew, its night and day,
Bring up the flowers.

*****

五月は一年に一回
クリスティーナ・ロセッティ

五月は一年に一回
じめじめひんやすることもある
五月は一年に一回
一年が深まるのはまだ先
でもこれ以上なく凍える五月
陽の光は差さず雨ばかり
風がしずくが 夜が昼が
花を咲かせる

*****

There is but one May in the year,
And sometimes May is wet and cold;
五月は一年に一回
じめじめひんやすることもある

五月は新緑まぶしい季節。ところが、ときに雨が続いたり、寒さが続いたりすることもあります。

There is but one May in the year
Before the year grows old.
五月は一年に一回
一年が深まるのはまだ先

涼しい秋、ましてや凍える冬はまだ先なのに、五月でもう凍えるほど寒いって、、、

*****

若さとは、人生の若葉の季節。

本来ならまぶしく輝く季節。しかし、うまくいかないことも結構あります。

人生は長く、まだまだ先があるのに、なぜ若葉の季節に、雨に濡れて凍えているのだろうと、自虐的になってしまったり。

Yet though it be the chilliest May,
With least of sun and most of showers,
でもこれ以上なく凍える五月
陽の光は差さず雨ばかり

理不尽なことやいじめに苦しめられたり、自分はただまっすぐ葉を伸ばしたいだけなのに、自分にだけ雨が振り続けているような感覚に襲われてしまったり。人生という季節の行く末に、何も見いだせなくなってしまったり。

*****

Its wind and dew, its night and day,
Bring up the flowers.
風がしずくが 夜が昼が
花を咲かせる

でも、大人として思うのは、やっぱり、涙の数だけ強く優しくなれるなあ、ということなんです。

人生には、風も吹くし、雨も降る。人生には夜もあるけれど、やっぱり昼もあって、それは交互に訪れて、よしっと思っても、やっぱりうまく行かなかったり。

雨はないほうがありがたいけれど、そういう風にして、強く花を咲かせた人もいる。それを知ると、未来を信じてみようとも思えてきます。

*****

今回の訳のポイント

この詩の最高にかっこいい部分は、この2行ではないでしょうか。

There is but one May in the year
Before the year grows old.
五月は一年に一回
一年が深まるのはまだ先

1年を人の一生に喩えているのが素敵ですよね。5月は、まだ若く、これから年老いてゆくもの。

そんなときに降る雨は、花を咲かせるためのもの。

「過去の苛酷な体験があったからこそ、今の自分がある」と言っても、しなくてもいい体験はしないほうがいいし、順調満帆に可能性を広げられたら、そのほうがいいに決まってる。

だけれども、人生の「五月」は1回しかないし、人生も1回しかないわけで、自分の身に起きたことは自分の一部であるということは変えようがない。

だとしたら、やっぱり自分らしく「花を咲かせる」ということに力を注いでみようと思えてくるのです。

 

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Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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