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第187回 切ない歌を聴いたときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

切ない歌。

なぜか魅かれますよね。悲しくって、胸がぎゅっと痛むのに、心をとらえて離さない。

悲しいのに、美しい。それはなぜだろうと考えていたら、この詩を思い出しました!

*****

Sleepless
Sara Teasdale

If I could have your arms tonight-
But half the world and the broken sea
Lie between you and me.

The autumn rain reverberates in the courtyard,
Beating all night against the barren stone,
The sound of useless rain in the desolate courtyard
Makes me more alone.

If you were here, if you were only here-
My blood cries out to you all night in vain
As sleepless as the rain.

*****

眠れない夜に
サラ・ティーズデイル

今夜 君がいて抱きしめてくれたらいいのに
でも 世界の半分と波打つ海原が
君と自分の間にある

秋の雨音が中庭にこだまする
寂し気な墓石に一晩中雨は打ちつける
寂し気な中庭にしとしと降る雨の音
自分もなんだか寂しいな

君がいたらな ここにいたらな
身体の奥の血が君を呼んで叫ぶ
一晩中 返事もなく
雨と同じく 眠ることもなく

*****

こんなに切なくて美しいラブソングが、いや詩が、あるでしょうか!

If I could have your arms tonight-
今夜 君がいて抱きしめてくれたらいいのに

これは切ないですねえ!冒頭から切なさが爆発しています。If I could have…「…があればいいのに」とは、つまり、「ない」ということ!そして、そんな自分と「君」を分かつのは、何か。

But half the world and the broken sea
Lie between you and me.
でも 世界の半分と波打つ海原が
君と自分の間にある

こ、これも、切ない!

「君」がどこにいるかは分からないけれど、わたしたち二人が世界そのものだから、今ここにいない「君」は、世界を半分隔てたところにいる。

そして、切なさを強調したければ、「秋」と「雨」と「中庭」と「墓石」があれば十分とばかりに、切ないキーワードの大渋滞!

If you were here, if you were only here-
My blood cries out to you all night in vain
As sleepless as the rain.
君がいたらな ここにいたらな
身体の奥の血が君を呼んで叫ぶ
一晩中 返事もなく
雨と同じく 眠ることもなく

「君がいたらな」って、そう、ここにはいないんだよ!と言ってあげないといけないくらいに、これは切なさMAXですね。

「身体の奥の血が呼ぶ」って、そんなにも想われる幸運な奴は一体どこのどいつなんだと!

何が切ないって、こんなに求めているのに、こんなに呼んでいるのに、「返事もなく」過ごすしかないということなんですよね。

*****

今回の訳のポイント

悲しいのに、美しい。その理由は、この詩の冒頭の一行に集約されているかもしれません。

If I could have your arms tonight-
今夜 君がいて抱きしめてくれたらいいのに

そこにいて欲しいのにいない。この、「悲しさ+恋しさ=切なさ」こそが、美しさにつながると思うのですが、その最大の鍵は「共感」と言える気がします。

苦しいとき、悲しいときに、言葉や映像を通じて、人の苦しみを見たり、人の悲しみを知ったりすること。自分の心の苦しみや痛みは、誰かも感じていた苦しみや痛みだったんだという、悲しいけれど喜びを感じる不思議。

そこに、人との心のつながりをリアルに感じるからこそ、ぐっとくるものがあるのかなと思います。

それで言うと、世界の半分や波立つ海どころか、100年近くの時を越えた詩の言葉に共感するという事実に、改めて感動を覚えます。

 

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Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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