ENGLISH LEARNING

第217回 「来る?」と聞かれたときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

「来る?」と誘われたら、何も考えずに「行く!」と言ってしまいます。

それがどんなものなのか分からなくても、自分のことを知るこの人が誘ってくれたのだからきっと面白いだろうと、とりあえず行ってみようと思うのです。

楽しいとその人が思うことを一緒に楽しむのだ。そんなワクワクを感じたときに思い出す詩があります。

*****

The Pasture
Robert Frost

I’m going out to clean the pasture spring;
I’ll only stop to rake the leaves away
(And wait to watch the water clear, I may):
I sha’n’t be gone long.—You come too.

I’m going out to fetch the little calf
That’s standing by the mother. It’s so young,
It totters when she licks it with her tongue.
I sha’n’t be gone long.—You come too.

*****

牧草地
ロバート・フロスト

牧草地の井戸の掃除に行くところなんだけど
落ち葉を掻きだすだけだから
水がきれいになったかしばらく見てるかもだけど
そんなに長くはかからないから 来る?

仔牛を連れ戻しに行くところなんだけど
母親のそばに立ってる仔牛 まだ子どもだからさ
母親に舐められるとよろけちゃうんだよ
そんなに長くはかからないから 来る?

*****

「来る?」の内容が、ものすごく牧歌的でいいですよね。

一緒に来るかと誘われているのは、牧草地の井戸掃除と、仔牛の連れ戻しって、最高じゃないですか!

何よりもキュンと来るのは、素朴な事実や気持ちが漏れてしまうところ。

(And wait to watch the water clear, I may):
I sha’n’t be gone long.—You come too.
水がきれいになったかしばらく見てるかもだけど
そんなに長くはかからないから 来る?

わざわざ括弧をつけて遠慮していますが、井戸の落ち葉をすくったら、きれいになった水面を見ていたくなりますよね。それを踏まえての「来る?」

答えはもちろん「行く!」しかないですよね。

*****

井戸の掃除も実際すぐ終わるのか分かりませんが、仔牛の連れ戻しはどうでしょう。

It totters when she licks it with her tongue.
I sha’n’t be gone long.—You come too.
母親に舐められるとよろけちゃうんだよ
そんなに長くはかからないから 来る?

こちらも、仔牛を連れ戻す話をしながらも、仔牛ってかわいいんだよという、素朴なのろけ話。それを踏まえての「来る?」

母親牛に舐められてよろける仔牛という最高にかわいい瞬間が待ち構えているとしたら、こんなに素朴な気持ちで誘われたら、「行く!」としか言えないですよね。

*****

今回の訳のポイント

「牧草地」というタイトルからして、牧歌的で素朴な魅力が爆発しているこの詩。

実は、訳し方が最重要なのです。

I’m going out to clean the pasture spring;
牧草地の井戸の掃除に行くところなんだけど

英語の詩で、The Pasture「牧草地」と言われると、伝統的にはロマンチックな詩が期待されます。麗しい表現に満ち、美を体現するかのような情景を雅趣に富む詩行で表現する、というのが典型的なロマンチックな詩でした。

詩人ロバート・フロストのいいところは、素朴な農村の日常のままに、素朴なテーマを日常の言葉で紡いでいるところです。

井戸の掃除はどんなにがんばってもロマンチックにはならなそうですが、そういった主題を詩として取り上げるということそのもの。日常会話のような言葉で紡ぐこと。これらが、当時は斬新かつ人の心に響いたわけです。

*****

そして、セミコロン(;)が、接続詞として文をつないでいますが、ここもポイントです。

「文をつないでいますが、」って、どこにも逆接の意味はないのに、「が、」「けど、」で文をつなぐのが日本語の日常会話ですよね。素朴な日常を、素朴な言葉で話すように詩にするならば、「行くところなんだけど」とするしかないですね!

 

【英語力をアップさせたい方!無料カウンセリング実施中】
これまで1700社以上のグローバル企業に通訳・翻訳・英語教育といった語学サービスを提供してきた経験から開発した、1ヶ月の超短期集中ビジネス英語プログラム『One Month Program』
カウンセリングからレッスンまですべてオンラインで行います。
One Month Program

Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

END