INTERPRETATION

第12回 Americanaization & Globalization

木内 裕也

American Culture and Globalization

 

 今週も前回から引き続いて、グローバル化を考えてみましょう。いつもどおり、復習からです。

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数週間前に、グローバルブランドの話をしました。そこで、まずアメリカのブランドが非常に強い価値を持っていることを話しました。飲料系、IT、電化製品など、アメリカに本拠地を持つ会社が世界中でその製品を販売しています。しかし日本も負けたものではありません。自動車、電化製品など、やはりさまざまな領域で日本のブランドは世界に進出しています。同時に、他の国も強力な価値観を持っていますね。スウェーデン、韓国、フランスなどの国名がその時のレクチャーではテーマになりました。これは「一流ブランド」と一般に呼ばれるものだけですから、企業の規模は小さくても、世界に与える影響力の大きいニッチ産業ブランドなどは含まれていません。
 前回は野球の話をしました。野球といえば、やはりアメリカ主導のイメージが強いです。MLBの人気は日本でも依然として高いです。選手はMLBでプレーしたいと考え、ファンもMLBの迫力あるプレーを見たいと感じています。しかしWBCの例を考えてみると、MLBのビジネスモデルは非常に成功を収めていますが、必ずしもアメリカ流のプレースタイルが世界で通用するとは限らないことがわかりました。実際、日本、韓国、キューバなど野球の強豪国がありますし、アメリカの戦績は優れているとはいえません。これはアメリカ中心と思われている文化が、実はより複雑なグローバル化を象徴している例といえるでしょう。

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 今週は同じスポーツでも、アメリカとは程遠い存在と思われているサッカーを扱います。サッカーは特にそのワールドカップが世界3大スポーツイベント(他の2つはオリンピックとF1)に挙げられるように、非常にグローバルなスポーツです。世界のどこに行っても、サッカーはプレーされていて、サッカーを知っていれば仲良くなれる、と言っても過言ではないかもしれません。その中で例外をあげるとすれば、アメリカでしょう。フットボール、ホッケー、バスケットボール、そして野球の4大スポーツの影に隠れています。女子サッカーは人気ですが、残念ながらどこの国でも女子スポーツはスポンサー収入に苦しみ、観客動員数もなかなか伸びません。その影響もあって、サッカーはアメリカ的なスポーツではない、と一般に考えられています。

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 しかしそれを覆すデータもあります。アメリカで競技人口が増えている2つのスポーツは、ゴルフとサッカー。アメリカの若者にプレーしたことのあるスポーツを聞いてみると、サッカーが1番です。ユース年代では、多くの子供たちがサッカーを経験するのですが、大人になるとサッカーから離れていくという傾向が見えてきます。しかし将来的にサッカーを経験したことのある世代が拡大し、また社会人になってもサッカーをする傾向の強い移民が増えることで、アメリカにおけるサッカーの位置も変わってくるでしょう。これは世界のスポーツがアメリカに侵入している例です。野球やブランドの例とは少し違ったグローバル化の一例と考えられます。

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 このように分析していくと、ただグローバル化といっても、それにはいろいろな形やスタイルがあり、一概に「グローバル化はアメリカの文化侵略」とは片付けられない様子が見えてくるでしょう。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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