INTERPRETATION

第21回 Americanization & Globalization

木内 裕也

American Culture and Globalization

 今週のテーマはEntrepreneurshipです。まずは復習からはじめましょう。

▶ 第21回のレクチャーはこちらにアクセスしてください。

lecture21_1.gif

これまでGlobalizationを考える中で、AppaduraiのScapeという考えが有益であることを解説しました。例えば人が仕事や留学のため、または旅行目的で世界を飛び回るのはEthnoscapeと呼ばれます。Ethno-とは、人の意味を持つ接頭語ですね。同様に、ビジネスや様々な取引でお金が飛び交うことは、Financescapeといいます。為替情報が気になったり、外国のオンラインショップから商品を購入できたりするのはFinancescapeの一部です。これらのScapeの1つに、Ideaの行き来を指すIdeoscapeという言葉があります。今回のテーマであるEntrepreneurshipはIdeoscapeの1つです。
 

lecture21_2.gif例えばLibertyやFreedomという考えは、アメリカ的なものと考えられていますが、元はフランスから来たもの。その前は、例えばギリシャなどで議論された概念です。したがって、「自由」などという非常にアメリカ的と思われている概念も、グローバル化の一部であることがわかります。自由の女神がフランスからの贈り物である事実も、Ideoscapeを象徴していますね。また、最近アメリカではアジアの概念としてZen(禅)やConfucius(儒教)が関心を集めています。これももちろんIdeoscapeの一部です。
 

lecture21_3.gifEntrepreneurの場合も、スペルから想像がつくかもしれませんが、フランス語の影響を受けている単語です。英語で使用される場合には、リスクを背負いながら物事を行い、何らかのプラスの結果を期待する人をEntrepreneurと呼びます。多くの場合、すでにご存知の通りビジネスの世界で使われます。
 特に1980年代以降のIT産業で、Entrepreneurが多く生まれました。Microsoft、Apple、Facebookなどすべて、Entrepreneurの1つとされていますね。しかしよく考えてみれば、例えば古くから日本にある企業も、Entrepreneurが始めたもの。日本語で「起業」ということからわかるように、最近始まった傾向ではありません。
 

lecture21_4.gifしかし今回のレクチャーで何より強調したいのは、Entrepreneurshipがビジネスでだけ使われる言葉ではない、ということです。例えば先日、私が教える大学で会議が行われました。会議は日本の大学構造で言う学科長と、来年度に新しく開講される授業のアイデアを話し合うものでした。その会議の中で、学科長が「Entrepreneurshipを持ってアイデアを出しあってほしい」とコメントしたのです。授業の提案をしたり、授業を教えることがビジネスの観点から言うEntrepreneurshipとは少しずれていますが、アイデアを開拓していくという意味では、共通するところがあります。
  日常生活においても、例えば部屋の内装に手を加えるとか、家具を新しくするという部分にも、Entrepreneurshipを発揮できます。収益を上げる、という目的だけではなく、気持ちが一新されるなどという目的も、充分にEntrepreneurshipの精神です。そう考えると、Entrepreneurshipとは、いかにして目指すものを手に入れるか、いかによりよい生活を求めるか、ということと大きな関係があるのでしょう。

Written by

記事を書いた人

木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

END