INTERPRETATION

第154回 移民問題

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。11月に入り秋が深まった今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。イギリスでは朝は凍り付くほど寒く、最高気温も10度前後の寒い日が続いています。

この1週間の世界のニュースを振り返ると、注目の話題(hot topic)は「移民問題(immigration)」ではないかと思います。

米国では11月1日にトランプ大統領から移民政策について演説がありました(スクリプト動画)。この演説でトランプ氏は、ポイント制で合法的な移民を歓迎する一方、難民申請者や不法移民への取り締まりを厳しくすること、国境(特にメキシコとの国境)管理を厳格化することなどを発表。また質疑応答ではメキシコを北上中の移民集団がメキシコ軍や警察に対して石を投げていることに触れ、そのような暴力があれば火器使用も検討する(When they throw rocks like they did at the Mexico military and police, I would consider that a firearm)と発言。

この発言を受け、ナイジェリアではナイジェリア軍がイスラム教シーア派に向けて発砲し死亡者も出たことが正当化されるという動きにも発展しました(参考記事)。

前回の記事で「欧州首脳陣のお母さん役」と紹介したメルケル首相ですが、先週の記事を投稿した直後に引退予告が行われ大きな話題を呼びました。10月に行われた地方選で連敗したことが理由ですが、その連敗の一番の理由として挙げられるのが移民政策です。東ドイツ出身のメルケル首相は移民・難民に寛容な政策を取ってきましたが、それが国民の反感を買う結果となったのです。メルケル首相の政策を引き継ぐと考えられるクランプ・カレンバウアー党幹事長やメルケル首相の難民政策を批判するシュパーン保健相などが後継者の候補として挙がっていますが、誰が選ばれるかで移民・難民政策にも大きく影響が出ると考えられます。

今週の英エコノミスト誌でもギリシャイタリアの移民・難民問題が取り上げられています。

ここで移民問題を正しく理解するためにキーワードの解説をします。

まずはrefugeeとeconomic migrantの違いを理解しなければなりません。

refugee(難民)の国連の定義は以下の通りです。

A refugee is someone who has been forced to flee his or her country because of persecution, war or violence. A refugee has a well-founded fear of persecution for reasons of race, religion, nationality, political opinion or membership in a particular social group. Most likely, they cannot return home or are afraid to do so. War and ethnic, tribal and religious violence are leading causes of refugees fleeing their countries.

つまり戦争や迫害(persecution)などが理由で自国にいると命に危険があるため亡命を余儀なくされた人たちです。難民は国際法によって保護されることになっています。

それに対してeconomic migrants(経済移民)は経済的によりよい生活を求めて他国に移住する人です(a person who leaves their home country to live in another country with better working or living conditions)。自国に残ると貧しい生活ではありますが、命に危険があるわけではありません。

そしてasylumという用語ですが、トランプ大統領はこう説明しています。

Asylum is not a program for those living in poverty. There are billions of people in the world living at the poverty level. The United States cannot possibly absorb them all. Asylum is a very special protection intended only for those fleeing government persecution based on race, religion, and other protected status.

Asylum seekers(庇護申請者)とは、他の国に到着して難民に認定されるために申請している人たちです。到着した国・地域で法的な判断が下されるのを待っている人たちですが、米国ではこのような人たちが釈放(release)されているので、本国送還(deportation)の判決が出てもどこに行ってしまったか分からず結局アメリカに不法滞在したままになっていると指摘しています。今後は釈放せずに拘束する、そのための施設を建築するとのことです。

移民問題はイギリスのEU離脱国民投票(Brexit Referendum)でも離脱が決まった理由の一つです。

先進国の中で移民政策が少し異なるのは日本でしょう。日本は少子高齢化の影響で労働力不足が深刻になりつつあることから外国人労働者が滞在しやすくなるよう入国管理法改定案が国会で検討されています。

それぞれの国が抱える移民・難民問題。まずは難民を発生している国々の安定化を願います。そしてグローバル化が進む中、人々の交流が増え、移住する人が増えるのも自然な流れ。互いの文化を尊重しながら共存できる社会になってほしいと思います。今後も注目のトピックです。

2018年11月5日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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