INTERPRETATION

第153回 「首相」を英語で言うと?

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。10月最後の日曜日というとイギリスでは冬時間の始まりです。これからの4カ月は日照時間が短く、暗くてジメジメした日が続くと思うとちょっと気が滅入ってしまいます。だからこそ、クリスマスのイルミネーションが楽しみな季節ともいえます。

さて、今日は「首相」の英語表現を取り上げます。

「そんなの簡単すぎる! Prime Ministerでしょう?!」と思われる読者さんも多いかもしれません。確かにそうです。メイ首相はPrime Minister Theresa Mayだし、安倍首相はPrime Minister Shinzo Abe。でも、英語で肩書を付ける場合は、このようにフルネームが続くことが多いのは日本語とは異なるし、また単にMrs MayやMr AbeのようにPrime Ministerなしで言及されることもよくあります。書き言葉ではPMという略語も使われます。

では「メルケル首相」はいかがでしょう?

ドイツ語圏の「首相」を英語ではChancellor(チャンセラー)と言います。昨年31歳の若さでオーストリアの首相になったセバスチャン・クルツ氏もChancellor。

ただし、イギリスの政治の話でChancellorと出たら、それはChancellor of the Exchequerの略で財務大臣のこと。現在のChancellor of the ExchequerはPhilip Hammond(フィリップ・ハモンド)というシルバーグレーの紳士風政治家。前任者は国民感情を無視して緊縮政策を推し進めMr Austerityと揶揄されていたGeorge Osborne(ジョージ・オズボーン)。

では中国の「李克強首相」は英語で何と言うでしょう?

中国の首相の場合はPrime Ministerも使われますが、Premierが正式な表現のようです。したがってPremier Li Keqiang。「李克強」の英語読みは「リークチャン」のように聞こえます。余談ですが、次男の名前が「陸」で日本の家族や友人からは「リクちゃん」と呼ばれているのでLi Keqiangと聞くと愚息のことを思いドキッとし、心の中でクスッと笑ってしまいます。

最後に「アイルランドの首相」は何と言うでしょう?

これはなかなか知っている人が少ないのではないでしょうか。答えはTaoiseach。「ティーショク」のように聞こえますが正しい発音はこちらでご確認ください。現在のTaoiseachはLeo Varadkar(レオ・バラッカー)。クルツ首相ほども若くないけれどもまだ30代なので結構若いです。

そういえば最近のヨーロッパは、スペインのペドロ・サンチェス首相(Prime Minister Pedro Sanchez)46歳、フランスのエマニュエル・マクロン大統領(President Emmanuel Macron)40歳など若くてイケメンタイプが多いですね。イタリアのジュゼッペ・コンテ首相(Prime Minister Giuseppe Conte)は54歳ですが、こちらもイケメン。(笑) こういうメンバーが集まる欧州首脳会議ではやはりメルケル首相は「みんなのお母さん」のイメージ。それに対して英メイ首相は「親戚のおばさん」でしょうか?!

2005年に首相に就任したメルケル首相は世界的にもリーダー格ですが、最近の選挙では厳しい結果が出ています。寛容な移民政策は一時は称賛もされましたが、今では不満の一番の要因となっているようです。

以上、「首相」と訳される英語表現にはPrime Minister以外にもChancellorやPremier、Taoiseachがあることを紹介しました。

2018年10月28日

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記事を書いた人

グリーン裕美

結婚を機に1997年渡英して以来、フリーランス翻訳・通訳として活躍。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。

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