INTERPRETATION

第53回 イギリス、国民投票後 その3

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

すみません! またこの話題です!

実は、今週は別の話題にする予定で、「交渉に関する表現」と題して既に原稿もある程度まとめていました。でも、先週の通訳業務においてやはりBrexitの話題がかなり出たので、通訳者としてBrexitの知識を持っておくことの重要性を再認識しました。

というわけでこの一週間で気になったBrexit関連の英語表現を取り上げます。

1.stand aside/ stand down/ step down 辞任する、引退する、退陣する

Q: キャメロン首相の辞任表明、ボリス・ジョンソン前ロンドン市長の首相レース不出馬に続き、先週辞任表明をしたのは誰でしょう? 

A: 前回「a liar」として紹介した英独立党(UKIP)党首のナイジェル・ファラージ氏。

EU離脱派の中心人物だったファラージ氏ですが、「自分が政治家になった目的は果たせた」「今は自分の生活を取り戻したい (I want my life back)」という理由で辞意を表明しました。投票結果は出たものの、これから実施という段階での辞任は「無責任だ(irresponsible)」とあちこちで批判されています。

「辞任する」はresign, quitの他に上記の句動詞も覚えておくと役に立つでしょう。

2.UK’s 2nd female Prime Minister イギリスで2人目の女性首相

Q: キャメロン首相の後任者選びが始まりました。首相レースには5人が出馬しましたが、議員による投票で選ばれた二人の政治家とは誰でしょう?

A: テレサ・メイ内相とアンドレア・レッドソム エネルギー担当閣外相

投票前は、有力政治家のメイ内相とマイケル・コーブ司法相が残るものだと思われていましたが、コーブ司法相の裏切り行為は不信感を煽ったようです(前回記事参照)。その結果、離脱派からは政治家としてあまり経験のないレッドソム・エネルギー担当閣外相が決選投票に進むことになりました。今後は保守党の一般党員およそ15万人による投票で9月9日までにどちらかが選ばれます。どちらが勝ったとしても、次のイギリスの首相は女性になることが決まりました。マーガレット・サッチャー氏以来、25年ぶりの女性首相 (first woman prime minister since Margaret Thatcher) の誕生となります。来年のG7サミットは女性首脳が3人となる可能性大です。ヒラリー・クリントン氏は2008年の大統領選では”we were not able to shatter that highest and hardest glass ceiling (一番高く、最も硬いガラスの天井を打ち砕くことができなかった)」と言って撤退を表明しましたが、今回は打ち砕いて青空に手を伸ばせるといいですね。

3.Oustria/ Italexit/ Czech-out/ Departugal

EU最大の懸念事項は、Brexitそのものではなく、BrexitがきっかけとなりEU自体が崩壊することです。28加盟国の中には既にEUに懐疑心を抱いている国々があり、それぞれ造語が作られています。第51回で紹介した語に加え、Oustria (Oust + Austria), Italexit (Italy +exit), Czech-out (the Czech Republic + out), Departugal (Departure + Portugal)など。EU離脱を望む最大の理由は、移民・難民問題です。自由に人が移動できることによるメリットは大きいものの、テロリストも簡単に国外逃亡できるという欠点もあります。

一方、残留派の国を示す造語ではRemania (Romania + Remain) があります。

4.Bremigration/ Brexodus

こちらはBritainにemigration(国外への移住)、exodus (集団脱出)を加えた造語で、企業や個人がイギリスから大陸のEU諸国に引っ越すことを意味します。英語圏にとどまりたい人はカナダへの移住を考えていて、Canadexit(Canada + exit)という造語も生まれています。なぜ米国ではなくてカナダかというと、ドナルド・トランプ氏の台頭している国を避けるためです。ただし、私見になりますが、イギリスが単一市場に残る可能性もあり、EUの将来も不透明な現状(上記3参照)で、Bremigrationを実行するのは先走りしすぎじゃないかと思います。

以上、今週もブレグジットの話題でお送りしました。お役に立てば幸いです。

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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