INTERPRETATION

第2回 グローバル・コミュニケーションの源泉

原不二子

Training Global Communicators

 グローバル・コミュニケーションは、単に英語能力を身につけることではなく、むしろ、足もとの関係づくりから始まるのではないでしょうか。ビートルズの「すべての孤独な人」という歌があります。「ああ、すべての孤独な人、どこから来たのでしょう?ああ、すべての孤独な人、どこに属するのでしょう?」と言った歌詞です。ふと、今の日本の状態と重なりはしないか、と思いました。子が生みの親に手をかけ、母が我が子を虐待の上死に追いやってしまう。仕事に就けず衝動的に電車に飛び込んでしまう。為すべきことができずに揺らぐ政治の状況。そのような報道を毎日のように目にします。夫婦、親と子、師弟、上司と部下、すべての関係において、お互いに思いやりの気持ちを通わせるところからコミュニケーションが生まれ、ますます小さくなるように見える地球上での異文化間コミュニケーション、グローバル・コミュニケーションが円滑に機能するようになるのではないでしょうか。

 

 「異文化間のコミュニケーションとは何か」と問われれば、「すべての個を認め合いながらお互いに理解し得る接点を見つけること」と答えたいと思います。すべての個人はミクロの意味での「文化」だと思うからです。誰もが自分の立場を認めてもらいたい、自分の主張を相手に受け入れてもらいたい、と思う。その接点を対話の中で求めていく。それが政治であり、ビジネスの交渉であると思います。私の好きな言葉に「すべての人は幸せになる権利がある。ただし、他人にも同じ権利を認めるという条件においてである。」というのがあります。その気持ちこそが、足もとのコミュニケーション、ひいてはビジネス、グローバル・コミュニケーションを円滑にする鍵となるように思います。異文化が触れあう地球上では、相手の言い分を聞いた上で自分の立場を丁寧に言葉で説明しなければならない。「あ・うん」の呼吸という概念が通じないのが異文化間のコミュニケーションです。 

原 不二子

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原不二子

上智大学外国語学部国際関係史研究科博士課程修了。 祖父は「憲政の父」と呼ばれた尾崎行雄、母は「難民を助ける会」会長の相馬雪香。母の薫陶により幼い頃からバイリンガルで育ち、21歳の時MRAスイス大会で同時通訳デビュー。G7サミット、アフガニスタン復興会議、世界水フォーラムなど数多くの国際会議を担当。AIIC(国際会議通訳者協会)認定通訳者で、スイスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、ILO総会の通訳を務め、最近では、名古屋における生物多様性(COP/MOP)会議、APEC女性リーダー会議、アジア太平洋諸国参謀総長会議、ユニバーサル・デザイン(IAUD)会議、野村生涯教育センター国際フォーラム等の通訳を務めている。

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