INTERPRETATION

第1回 グローバル・コミュニケーション

原不二子

Training Global Communicators

 いま最も大事なことは、一人ひとりが率先して他者とのつながりを造り、それを育てていくことではないでしょうか。グローバル・コミュニケーションとは異なる言語や違う文化をもつ人とのつながりを求め、育てていくことで、根本は同じです。英語ができれば自然にグローバル・コミュニケーションができるということではありません。双方が相手に関心をもち、いろいろなことを打ち解けて話し合い、相手が夢や苦労を語ってくれるようになった時、心が通じ合う関係が築かれていくのです。所詮、言葉は気持ちを伝える道具でしかありません。

 言葉は文化でもあります。例えば、英語はフェアプレイ、コモンセンスなどに代表されるように開放的でバランスのある文化を象徴します。一方で日本語は、年齢、組織や社会の上下関係により話し方が変わるため、若い人が年上、目上の人に気持ちを伝えるのは難しい場合があります。どちらかというと日本では、目から入る文章がコミュニケーションの主体であり、話をしたり、演説をしたりすることが疎まれた時代がありました。反論すると相手の人格を攻撃しているように受け止められてしまうためです。

 

 グローバル・コミュニケーションの第一歩は、日本語で自分の意志をきちんと伝えることなのかもしれません。他人は自分と異なる考えをもっているという前提で話し合い、お互いに納得いくまで話し合うことができるようになれば、ビジネスや外交上の交渉にも応用できるようになります。

 

 私たちが食べるもの、着るもの、使うもののすべてが世界中から運ばれてくるほどグローバリゼーションが進んでいます。異文化間の理解を深め、互いの文化を尊重し合ってコミュニケーション・スキルを身につけていかなければ、個人も国も生き残れないのが21世紀の現実です。コミュニケーションは、相手を慮る気持ちや、問題の多い世の中を少しでも良くする役に立ちたい、と思う真摯な気持ちの延長線上に成り立つのではないでしょうか。

来年から、ディプロマットスクールでは「Global Communication Skills」という新しいクラスにおいて世界レベルで活躍できる人材の育成を目指していきたいと思っています。

原不二子

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原不二子

上智大学外国語学部国際関係史研究科博士課程修了。 祖父は「憲政の父」と呼ばれた尾崎行雄、母は「難民を助ける会」会長の相馬雪香。母の薫陶により幼い頃からバイリンガルで育ち、21歳の時MRAスイス大会で同時通訳デビュー。G7サミット、アフガニスタン復興会議、世界水フォーラムなど数多くの国際会議を担当。AIIC(国際会議通訳者協会)認定通訳者で、スイスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、ILO総会の通訳を務め、最近では、名古屋における生物多様性(COP/MOP)会議、APEC女性リーダー会議、アジア太平洋諸国参謀総長会議、ユニバーサル・デザイン(IAUD)会議、野村生涯教育センター国際フォーラム等の通訳を務めている。

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