INTERPRETATION

第10回 「タブー」の由来

原不二子

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管直人総理は、中部電力株式会社に対し浜岡原発の全面運転停止を要請しました。生命財産の保護、子孫の繁栄、国家の運営を託して国民が選出した政治家だけができるお役人にはできない英断でした。マスコミにはとりあげられませんでしたが、今回の前面停止要請の決め手となったのは、全国から寄せられた92万筆の署名。東海大地震が過ぎるまで浜岡原発を止めておくための署名活動が全国で継続されることも決定した矢先です。

また福島原発事故を受け、ドイツのメルケル首相は、核廃棄物処理の問題が未解決であることを主因に改めて脱原発へ舵を切り直しました。

日本ではよく「タブー」という表現が多用されますが、今回の原発問題でも例外ではありません。原子力における「タブー」とは、原子力を「国策」としてすべての反論を封じてきたことを指します。福島原子力発電所事故の背景や経緯、その対応策など、これまで「タブー」とされてきた原子力政策に関わる実情が表面化するにつれ、私たち国民は愕然とするばかりです。

そもそも「タブー」の語源をご存じでしょうか?

トンガ王国で生まれた言葉であることが、当地を訪れた英国の探検家クック船長により明らかにされています。「人の前で座ったり、食べ物を口にしたりしない島民」に驚き、それを質すと、人々は「タブーだから」と答えたと言い継がれています。ポリネシア地域一帯では、「なになにを禁止する」の意味で広く使われるようで、トンガ語では、「tapu」とも表記し、慣習や法律で禁止・制限される意味をもつ一方、「犯されない」とか「神聖な」という意味もあります。「トンガ・タプ」とは、3島から成る同国の南端の島を表す「神聖な(悪に侵されない)南の島」という意味だそうです。        

原 不二子

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原不二子

上智大学外国語学部国際関係史研究科博士課程修了。 祖父は「憲政の父」と呼ばれた尾崎行雄、母は「難民を助ける会」会長の相馬雪香。母の薫陶により幼い頃からバイリンガルで育ち、21歳の時MRAスイス大会で同時通訳デビュー。G7サミット、アフガニスタン復興会議、世界水フォーラムなど数多くの国際会議を担当。AIIC(国際会議通訳者協会)認定通訳者で、スイスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、ILO総会の通訳を務め、最近では、名古屋における生物多様性(COP/MOP)会議、APEC女性リーダー会議、アジア太平洋諸国参謀総長会議、ユニバーサル・デザイン(IAUD)会議、野村生涯教育センター国際フォーラム等の通訳を務めている。

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