INTERPRETATION

第242回 今年心掛けたいこと

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

2016年が始まりました。新年の開始にあたり、私は今年、以下の10点を心掛けたいと思っています。みなさまの参考になれば幸いです。

1.いかに早く手放すか?

昨年末に片づけを大々的に行った際、ずいぶん不用品を処分しました。そこで得た教訓が「なるべく早く手放してモノをためこまない」ということでした。もともとなかった場所にモノが入り込むがゆえに、増えてしまうのですよね。チラシにせよ新聞にせよ仕事で使った印刷資料にせよ、本当に必要なもののみ保管し、あとはできる限り手放したいと考えています。

2.平面確保

たとえ大きな家で収納場所がたくさんあっても、平面にあれこれ載せてしまえば、いざ物を置こうとしたときに一苦労です。テーブルの上や洗面台脇の平面など、ちょっとしたスペースがあるとついついモノを置きたくなってしまうのでしょうね。けれどもそこを我慢して空間を確保しておくと、いざ使いたいときに使用できます。「平面=モノを常時置く場所ではない」ということを意識したいと思います。

3.期限を決めて処分

たとえば食器の場合、1年間まったく使わないものがあるかもしれません。使わなさそうな食器類を私は箱に詰めてふたをし、「2016年末まで一度も使わなければ処分」とシールを貼っています。これは洋服などにも応用できると思います。1年間使わない場合、おそらく今後もご縁がなさそうだというのが私の考えです。

4.在庫品でサバイバル

昨年末の大掃除の際、冷蔵庫の中をきれいにしようと考えました。そこで取り組んだのが、冷蔵庫内のものだけでサバイバルというものでした。冷蔵・冷凍食材をとにかく使い切る方向で調理をしていきます。このおかげで拭き掃除もできて大助かりでした。乾物類もこれを機に使い切り、新年に新しいものを調達できました。

5.まずは工夫

片づけをしていると、引き出しの中をうまく整理するために仕切り板やちょっとした小箱が必要になってきました。私は日頃無印良品を愛用しているのですが、わざわざ買いに行くほどでもありません。そこで思いついたのが紙袋の活用。紙袋はサイズもいろいろありますので、引き出しの大きさに応じて使い分けられます。好みの高さのところで袋を折り返しておけば、補強にもなります。

6.なるべく身軽に

年始に屋内型アトラクション施設へ行きました。建物の中でしたのでコートを着ているにはちょっと汗ばむ感じだったのです。以前の私であれば「手に持って歩けば良いし」と考え、わざわざ有料コインロッカーは使わなかったのですね。けれどもコートやサブバッグなどを預けて身軽になってみると実に快適!コインロッカーも立派な投資だと思ったのでした。

7.目の前の光景を楽しむ

冬の車中の楽しみは何と言っても冬晴れの光景です。青く晴れ上がった冬空には雲も少なく、遠くまで空気も澄んでいます。雪景色の富士山や、夏であればかすんでしまう彼方の建物も良く見えます。そうした光景を楽しむだけでも心が和みます。目の前の景色だけでも十分気分転換になるのですね。

8.先を考えすぎない

「ああなったらどうしよう?」「これはこうなってしまうのかしら?」日々の生活を続けているとついついこうしたメンタリティになってしまいます。けれども先を案じても疲れるばかりです。建設的な考えは前に進めますが、まだ起きていないことをあれこれ考えても仕方がありません。心配しすぎないことを今年は心掛けたいと思います。

9.過去を悔やまない

先を不安に思っても仕方がないのと同様、過去を悔いても前進は期待できません。エッセイストの松浦弥太郎さんは「反省ノート」というものを付けているそうですが、大事なのは反省から何を感じとり、どういう教訓を得るかだと思います。単に悔やむのではなく、未来のための反省が大事だと思います。

10.目の前に集中

就職セミナーなどが今は学生たちに人気だそうです。歩き方講座やマナーに関するレッスンなどいろいろあるようですが、大事なのは日頃からの心掛け。マナー講座に参加する一方、電車内で大あくびをしていては元も子もありませんよね。歩き方、所作、考え方、生き方など、まずは目の前のことに集中するのが大切だと私は考えています。

以上10項目を挙げてみました。今年はこうしたことを意識しながら毎日を大切に過ごしたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

(2016年1月4日)

【今週の一冊】

“The Kurds of Asia (First Peoples)”  Anthony C. LoBaido, Yumi Ng, Paul A. Rozario著、Lerner Publishing Group, 2002

大学の授業で難民問題を取り上げたことがあります。「日本はシリア難民を受け入れるべきか」という課題を学生たちに提示し、話し合いをしてもらったのです。2015年はシリアから大量の難民がヨーロッパへ押し寄せました。日本から地理的に見れば遠い話なのかもしれません。しかし、日本でもかつてインドシナ難民を受け入れるかどうかで世間が大きく注目をしたことがあったのです。1970年代のことです。そうしたことを考えると、シリア情勢も決して他人事ではないと私はとらえています。

今週の本は、イラク・イラン・トルコなど広い地域で暮らすクルド民族を紹介する一冊です。ISISに抵抗する勇敢な兵士たちとして最近はニュースでも話題になっていますよね。クルド族は現在、国家を持たない民族としては世界最大規模と言われています。

本書はアメリカの小学生向けに書かれており、カラー写真をメインに説明文があります。英文も非常にわかりやすく、難しい単語は言い換えがなされており、巻末には専門用語の解説も出ています。私は調べ物の際、まずは児童書から入るのですが、日本語の百科事典や英語で書かれた小学生向け教科書や参考書などは実によくできていると思います。

クルド地域における資源の問題やクルドの歴史、文化、政治など、本書を読めばクルドの概要をしっかりとつかめる構成です。本シリーズは世界の少数民族を扱っており、オーストラリアのアボリジニ、カナダのイヌイット、日本のアイヌなども含まれています。ぜひほかのシリーズも読んでみたいと思うほど、ためになる一冊でした。

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柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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