INTERPRETATION

第26回 片づけで発見したこと(その1)

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

先週に引き続き、片づけの話題です。このたび「こんまり」さんこと近藤麻理恵著「人生がときめく片づけの魔法」(サンマーク出版、2011年)を読み、家の中の片づけを大々的に行ったことは先週のこのコラムで書きました。その際、色々な発見がありましたので2回にわたってご紹介しましょう。

(1)読まない本:
本棚に入れたままの未読本。「いつか読もう」と思いつつ、何か月もぎゅうぎゅうに詰められたまま月日だけが過ぎ去っていました。書棚を見るたびに「ああ、早く読まなければ」と思いつつ、結局は手を付けない時期がずっと続いていたのです。そしていざ手にとってはみたものの、なぜその本を買ったのか思い出せないぐらい、当初の関心も消え去っていました。
こうなってしまうと、その本はまさに「命がない状態」です。ほかにも箱に入れたまま引っ越し後の半年間、一度も開封しなかった子どもたちの本がありました。かつてはお気に入りだった本なので、転居の際まとめて箱に入れておいたのです。けれどもその後数か月をたった今の今まで一度も箱から出してあげることはありませんでした。

本は本来、「誰かが読む」ことによって生かされるものだと思います。日の目を見ないまま暗い箱の中に閉じ込められ、書棚に押し込められたままではかえってかわいそうなのではないか。そんなことを思い、すべて古書店に引き取っていただきました。誰かのお役にたてることを願いつつ。

(2)洗剤やシャンプーの詰め替え作業について:
確かに地球環境を考えると毎回ボトル入りシャンプーを買うよりも「詰め替え用」を購入することは大事です。けれども我が家の場合、シャンプー用詰め替えボトルが800mlしか入らず、一方の市販の詰め替え品は1リットル以上。余った液体の入ったパッケージをゴムで留め、こぼれないように保管するのが大変でした。さらにもう一つ。ずっと同じ詰め替えボトルを使い続けるうちに、ボトルに水垢がたまって非衛生になっていたのです。これは台所洗剤も同じでした。
詰め替えボトルにたまった水垢や詰め替えの煩雑さの代わりに、毎回新しいボトルを買ってはどうかと考えました。シャンプーや洗剤は月に1回使い切るかどうかです。PETボトルのごみを減らすというのであれば、その分PETボトル入り飲料の購入頻度を減らそうと思っています。

(3)頂き物:
こんまりさんの言うとおり、「頂いた」という瞬間に感じた気持ちが大事です。プレゼントをあげる方は「あ、相手が喜んでくれた。うれしい」となり、頂く方は「私のことを考えてプレゼントをくださった。幸せだなあ」という感情を抱くことになります。タイミングや好みなどを総合して、双方が完全に満足できる状況になれば、これほどの素晴らしい贈りものはありません。
けれどもせっかく頂いたのに使わずじまいになってしまっては、あまりにもその「モノ」がかわいそうです。見るたびに「あの人がくれたのだし。でも好みじゃないしなあ」とネガティブな感情に見舞われてしまっては、贈り主への感情もマイナスになってしまいます。

モノは使われてこそ生きてきます。どうしても使えないものは「ありがとう」と言葉にしてからチャリティーショップへ寄付することにしました。

次回も引き続き、片づけを通じて感じたことを書いていきます。

(2011年6月13日)

【今週の一冊】

「整理HACKS!」小山龍介著 東洋経済新報社 2009年

著者の小山氏はこれまでも「IDEA HACKS!」「TIME HACKS!」など、いずれも「HACKS!」シリーズを手掛けている。時間の使い方や勉強の仕方など、実にシステマティックになっており、前著も大いに参考になった。

本書は整理の仕方を記したもの。私はさほどデジタルグッズを使わないので、その章はななめ読みとなったが、それ以外のページは早速取り入れてみたアイデアがいくつもあった。

たとえばペン立てとティッシュケースを机に貼りつけるという考え。私もこれまではペンを取り出すたびに微妙にペン立てがずれてしまい、そのたびに元の位置に戻していたのである。ペン立ての底に両面テープをつけて机に固定するというシンプルなアイデアだが、これだけでも元に戻すという小さな作業が一つ減った。ティッシュ箱も同様である。

もう一つはPCのタスクバーにあるIMEバーを画面の上端中央に置くというもの。通常IMEバーは画面の右下にあり、日本語・英語入力を切り替える際、わざわざ右下に目線を下げなければならなかった。しかし上端の中央に置くと、入力の際すぐに言語状況がわかるので使いやすい。「右下か上か」だけの違いだが、私のPC作業環境に大きな変化をもたらしてくれた。

こうしたビジネス本を読む際に心がけているのは、著者の述べるアイデアの中で一つでも取り入れられるものがあれば、その本を買った価値はあるということ。すべてを真似しようと思うと大変なので、少しでも参考になるものを導入したいと私は考えている。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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