INTERPRETATION

第29回 兼用できるか考える(その2)

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

先週のこのコラムでは、自分が持っている「モノ」を兼用することについてお話しました。今週もその続きです。

6.アルミの粉ふるい
台所で使う粉ふるい。私が持っているのは片手で使えるストレーナータイプです。ケーキを作る際にふるいとして活用していますが、それ以外にも色々と使えるのです。たとえば野菜の水切りかごにもなりますし、裏ごしに使うこともできます。食器の水切りかごを先日撤去したので、最近では食器をここにいれて水切りとしても使っています。

7.ガラス製ボウル
お菓子作りで材料を混ぜるときに役立つのがボウル。私はかつてアルミボウルを使っていましたが、ハンドミキサーで傷がついてしまうのが気になり、ガラス製を使うようになりました。実はガラスだと電子レンジでも使えますし、サラダを作ってそのまま食卓に出すこともできるので、大いに重宝しています。

8.ガラス製スポンジ型
スポンジケーキを作る際の型。これもケーキにとどまらず、野菜のオーブン焼きやグラタンなどにも兼用しています。丸型なので炒め物や煮物の大皿としても使えます。ちなみにケーキ作りで溶かしバターが必要な時はこの型にバターを載せてレンジで溶かし、材料に混ぜます。スポンジ型にうっすらと残ったバターをそのまま型に伸ばせばオーブンシート代わりになります。

9.パウンドケーキ型
こちらは長方形のガラス製。パウンドケーキだけでなく、ゼリーや寒天などもこの型で作っています。ガラス製ですので中が見えて、夏などは特に涼しげな雰囲気になります。我が家ではプリンやゼリーなどはあえてカップではなく、このような大きい型で作ります。

10.万能オイル
以前よんだドミニック・ローホーさんの本に「顔、髪、メイク落としすべてに使えるオイルが一本あれば十分」という文章がありました。以来、ローズオイルを愛用しています。通常の化粧品より多少お値段が張るため、メイク落としにはもったいなくて使えないのですが、髪と顔に使うことで洗面台周りのボトルが一気に減りました。オイルなので少量でも十分なじみますので、費用対効果の高いアイテムです。

以上、片づけを通じて兼用できるようになったアイテムをご紹介しました。これからも工夫をしながらお気に入りのモノを大切に使っていきたいと思っています。

(2011年7月4日)

【今週の一冊】

「今日もていねいに。」松浦弥太郎著 PHP 2008年

松浦弥太郎さんは2006年以来、「暮しの手帖」編集長を務めている。「暮しの手帖」といえば老舗の雑誌。なぜ高校をドロップアウトし、アメリカを放浪した若干40代男性の松浦氏が編集長になったのだろうと以前から不思議に思っていた。

しかし本書を読んでその理由が分かった。ひとえに松浦さんの丁寧な生き方が雑誌の方針とぴったりだったからであろう。確かに「暮しの手帖」が昔の雰囲気から少し異なってきているのも松浦さんの編集ゆえかもしれない。けれども少ないもので豊かに暮らすという基本的な理念が松浦さんにはあり、それが本誌にも反映されているのだと思う。

「今日もていねいに。」は日々の生活で著者が感じていることがエッセイ風にまとめられている。生き方が丁寧なのはもちろんのこと、文章も松浦氏の人柄を反映している。思えば私が敬愛する佐藤初女さんと通じるところがある。せわしない現代社会ではあるものの、その中で目の前のことをいつくしみ、丁寧に行う人の文章そのものは穏やかで丁寧なのだ。「折り目正しい文章」と言ってもいい。

たくさんのアイテムや便利グッズに囲まれて私たちの生活は一見幸せになったように見える。けれども「めんどうくさい」ことをいとわず、そのこと自体に意義を見いだせれば、私たちの生活は本当に充実したものになると思う。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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