INTERPRETATION

第30回 効率化へのちょっとした工夫

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

我が家の片づけもようやく一段落し、「気に入った物を大切に使いながら暮らす」という生活に、少しずつシフトしつつあります。もっとも、日々の慌ただしさに圧倒されて油断するとついモノが増えてしまうのは事実ですが、それでも「要らないものは入手しない」ということを意識するだけでも変化は出るように感じています。そこで今回はそうした考えに基づき、効率化に向けたひと工夫についてお話します。

1.割高でも少量を買う
モノを増やさない最大の工夫は「必要な時に必要なだけ購入する」という原則です。イギリスに暮らしていたころ、Buy one, get one free(一つ買ったら二つ目は無料)という販売方法がよく見られていました。同じものをついでにもう一つもらえるというのは確かに魅力なのです。けれどもかさばるものをもう一つおまけでもらっても収納場所に困る場合は、その都度買う方がよさそうです。また、たとえば「初めて購入するリップクリーム」をこうした買い方で入手してしまうと、「やっぱり肌に合わなかった」「なんとなく香りが好みでない」といった場合、二つ目が無駄になってしまいます。ですのでやはり割高でも、買う手間がかかっても、一つずつ手に入れる方が良いと私は思っています。

2.クローゼット内にハサミを
みなさんはハサミをどこに置いていますか?「机の引き出しの中」「ペン立ての中」というケースが多いと思います。私はそうした「取り出しやすい場所」に加えて「クローゼットの中」にも置いています。というのも、たとえば服のほつれを発見した時など、手元にハサミがあればすぐに切れるからです。洋服を購入後にタグをとる際にも、対処できます。ちなみにタグは帰宅後すぐに取り外すと「さあ、明日にでも着よう!」という気になれます。そのままハンガーにかけてしまうと、いざ取り出して着ようとした際に「時間がないからタグが外せない。じゃ、今日は着るのをやめよう」となってしまい、結局吊るしたままとなりかねません。

3.ワード文書は2ページ表示で
私は原稿を書く際ワードを使っていますが、「2ページ表示」で執筆しています。スクリーンのサイズにもよりますが、2ページ表示にしてワード右下の表示パーセンテージを「80%」にしておくと、ちょうど本を見開きにしたような感覚で全体が見渡せるのです。1ページ表示で作業をしていた頃は、画面下に原稿が差し掛かるとマウスでスクロールしなければなりませんでした。でもこの方法なら全体のバランスもパッと見渡せるので便利です。

4.印刷も2ページまたは4ページの割付印刷で
上記同様、インターネットサイトやワード文書などを印刷するときは印刷設定を「2ページ」または「4ページ」印刷で行っています。なお、活字があまりにも小さくなってしまうと印刷後に読みづらいので「プレビュー」で確認してから印刷することをお勧めします。

5.必要なものだけを手元に置いて作業
たとえば原稿を書く際、参考資料、辞書、筆記用具など色々なものが必要になります。けれどもその一方で「今、その作業に使わないもの」がないかどうか、客観的に見渡すことも大切だと思うのです。私の場合、以前は「この仕事が終わったら次にやる書類」も机の上に出して作業をしていました。けれども何となく視界の端にそうした資料がチラチラと目に入ってしまうと、やはり気になってしまうのです。そうなると今やるべき作業になかなか集中できません。このため、「今の仕事」に必要なものだけを厳選し、あとは別の場所に置いておくことにしました。携帯電話も「今は執筆に集中するので留守電機能にしておく」というのであれば、鞄の中にしまってしまうのも一つの方法だと思います。

以上、5つのポイントをご説明してきました。今後も引き続き、目の前のことを丁寧に行いながら、暮らしていきたいと思っています。

(2011年7月11日)

【今週の一冊】

「けんちく体操」チームけんちく体操著 エクスナレッジ 2011年

先日日経新聞の文化欄に出ていた記事が面白かったので読んでみた一冊。著者の「チームけんちく体操」は4名の男女からなるグループで、いずれも博物館学芸員や建築家などである。

「けんちく体操」とは建造物を体操で模写するというもので、たとえばパルテノン神殿や凱旋門、フジテレビ本社ビルなどを体で表現している。本書は73もの建築物をそのような形で表した写真集だ。

中でも傑作なのが東京ビッグサイト。ほかの建物が複数名で表現しているのに対し、こちらは一人で表されている。しかも比較的やりやすい動きなので子供でも真似できそうだ。

日ごろ何となく眺めている建物を、こうした別の形で表現してみるというのも立派な芸術。通訳という仕事に携わる私にとって、「表現」は言葉だけではないと改めて気づかされた一冊であった。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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