INTERPRETATION

第4回 負け犬通訳

寺田 真理子

マリコがゆく

結婚できなくなるから、やめたほうがいいですよ

その昔、わたしが通訳学校に通うと報告したところ、ある男性通訳さんがそうアドバイス(?)してくれました。その予言は的中し、今に至っております。あれって、もしかして呪いだったんじゃないかと思ってしまうこの頃です。

結婚していて通訳をしている方は多いのですが、「結婚後に通訳を始めた」パターンが大半のようです。逆に「通訳として働いた後で結婚した」という方は少数派ではないでしょうか。(もしこれを読んでいて、後者の方がいらしたら、負け犬通訳の希望のために、ぜひ名乗り出ていただきたいです!)

それもそのはず。通訳の生活って、仕事以外はひたすら勉強ですもんね。特に通訳デビューしたての頃なんかは、休日返上で資料と格闘してました。勉強しすぎて具合が悪くなったり、あまりの資料の膨大さに泣きながら勉強したり。そんなこともしょっちゅうありました。

近頃はそんなに根をつめて勉強していないので偉そうに言えませんが。それでもやっぱり、直接関係ないような本を読む時でさえ、語彙を増やしたいとか、理解の幅を広げたいという気持ちはあります。「すべての道はローマに通ず」ならぬ「すべての道は通訳に通ず」というところがありますよね。

あんまり勉強ばっかりしていると、「いっそ学者とかになるほうがいいのかしら?」と思ってしまうこともありました。でも、あれこれ気が多いわたしの場合は、やっぱり通訳のほうが向いてそうです。

通訳を続けるって、一生受験生のような生活をするっていうことなんですよね。本を読んだり、単語の整理をしたり。新聞で専門にしたいテーマの切り抜きをしたり、調べ物をしたり。そんなことをしていると遊びに行く時間が勉強の時間になってしまって。なんだか通訳のお仕事が増えると生活の色気のなさが一気に加速してしまうような・・・。

今となっては、自分に言ってあげたいです。

結婚できないから、やめたほうがいいよ

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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