INTERPRETATION

第67回 通訳取扱説明書

寺田 真理子

マリコがゆく

使い方のわからないものがあったら、取扱説明書に目を通しますよね?
通訳の仕事をしていると、通訳者の使い方を知らないお客さまに悩まされることが多々あります。事前に「通訳取扱説明書」をお渡しして、眼を通していただきたいと思ってしまうのですが。たとえば、こんな「通訳取扱説明書」はいかがでしょう?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

1.たくさんお水をあげましょう
10人いたら、10人分しゃべるのが通訳です。

2.資料をきちんとあげましょう
資料は通訳の肥料です。通訳者は、あなたのことも、あなたのお仕事のことも知りません。ちゃんと通訳してほしいなら、事前にきちんと勉強させましょう。

3.快適な音環境を整えましょう
ウィスパリングをしているそばで私語なんて、もってのほか!

4.ちゃんと休憩させましょう
通訳は脳も体力も激しく消耗するもの。このお疲れ顔見たら、わかるでしょ?

5.早口禁止!
あなたは勝手にしゃべればいいけど、こっちは訳してるんです!他人にわかってほしいなら、適度なスピードで。

6.オヤジギャグお断り!
通訳者のほうで不要とみなして処理させていただきます。

7.風邪をひいてる人、近寄らないで!
通訳はノドが命なんですから。

8.通訳者とお世話係を間違えないように
言葉ができるからって、何でもかんでも頼めると思ってはいけません。

9.意地悪チェック願い下げ
言葉がわかるあなた。意地悪な目で通訳をチェックするのはやめましょう。言葉がわかるのと通訳するのは別物です。

10.まともなこと、しゃべってください
編集料金はもらってないんですから。通訳したものがおかしかったとしたら、それはあなたの発言がおかしいせいです。

11.議事録作成はいたしかねます
このメモは通訳するためのもの。仕事が済んだら内容は忘れてしまいます。

12.機材扱いお断り!
そもそも、「通訳者も人間である」との前提で取り扱いましょう。

13.お食事つきで
通訳者も、おなかがすきます。目の前でおいしそうに自分たちだけ食べないでください。通訳者にもきちんと食事を!できれば糖分補給のために、甘いものなんかもいただきたいものです。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

無茶なお客さまにお困りの通訳者のみなさん。どうぞご自由にプリントアウトしてお使いください。みなさんの快適な通訳環境を応援しています!

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

END