INTERPRETATION

「カーナビに見る日本の特徴」

木内 裕也

Written from the mitten

先日、カーナビを購入しました。サッカーの審判のためにあちらこちらの競技場に向かったり、リサーチのために図書館や公文書館に車で行くことも非常に多く、そのたびにオンラインの地図で行き先を確認していました。しかしそれだと途中で道に迷うことも多く、また目的地までの行き方を書き出した紙に目をやるのも危険なため、近所の電気屋に向かったのです。自分の予算や用途を考えながら色々なモデルを探していて、日本で主流の電気製品と、アメリカでよく見かける電気製品に大きな違いを見つけました。それは機能です。

 日本で電気製品を購入すると、とにかく多機能です。写真が撮れて、TVも視聴でき、音楽も聴け、お財布代わりにもなる携帯電話に始まり、パンの焼ける炊飯器まであります(これって、驚くべき食文化の融合ですよね)。カーナビシステムもDVDが見れたり、音楽が聴けたり、色々な機能がついています。携帯電話と接続して電話をかけられるモデルもあると聞きます。非常に便利ですが、その反面あまり使わない機能が数多く入っていることもあります。また、多機能であるから金額が高くなってしまい、なかなか手の出せないこともあります。

 アメリカでも日本と同じように多機能の製品を購入することは可能です。しかし普通の電気屋に行くと、どちらかといえば機能は少なめで、金額的に手の出しやすい商品が多く取り揃えられています。今回のカーナビでも、日本では安くても十数万円は覚悟しなくてはいけないでしょうが、100ドル台から揃っていました。もちろん、様々な機能のついている2000ドル台の機種もあります。しかし主流は200ドル〜700ドル程度の商品。DVDやCDの機能はありませんし、電話番号で検索はできません。しかしアメリカとカナダの地図が入っていて、音声ガイドをしてくれて、郵便番号や住所で検索のできるモデルです。通常のユーザーには十分な機能です。

 いくつかのモデルを比較していて、「機能の数は限られていても、本当に必要な機能だけが入っていて、手の出しやすい金額の製品があると言うのは、とてもありがたいな」と感じました。私の個人的な感覚ですが、アメリカは物質主義だというものの、日本人はそれ以上に様々な消費活動をすると感じます。ブランドや多機能がこれほど関心を集めるのも、日本の特徴でしょう。学生がブランド物を持ち、昼間のホテルのレストランには40歳代の奥様方が集まり、街中の車は大半が非常に新しいです。地域による違いもありますが、日本に戻るたびに、「日本人はいいものを持っているな」と思います。「日本人の大半が中流階級」どころか、主要国の中でも大半が上流階級に属するのではないか、と思うほどです。「自分にご褒美」という表現も数年前から頻繁に聞こえますが、これもある意味では過剰(?)消費を推奨する企業と、消費を行う個人がそれを正当化する方法でしょう。

  このように考えると、「アメリカはモノにこだわる」とか「アメリカは物欲が激しい」という固定概念も必ずしも正しくは無いのでは、と思うようになりました。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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