INTERPRETATION

「新しい英語」

木内 裕也

Written from the mitten

大学で言語学の授業を履修したとき、「言葉は生き物だ」と学びました。つまり、言葉は常に変化しているということです。例えばHe is taller than I (am).というのが正しい英語ですが、He is taller than me.という言い方も、最近では正しいとされるように、時の流れとともに、言葉は変ります。今週は、一般に定着した新しい英語表現の例をいくつか紹介します。

1)Dude

Dudeは仲間同士で「よう、お前」と呼びかけるときの言葉です。最近では男性だけでなく、女性も使うようになっています。しかしあくまでも、対等な関係で使われる言葉です。先日、サッカーの審判員の集りに出席したとき、若手の審判員が個人的に親しい引退後の審判員に対して、Dudeという言葉を使いました。すると、すかさずその年長レフェリーOBが、”Did you just dude me?”と一言。Dudeには「着飾る」という動詞の意味もありますが、彼は「Dudeと呼ぶ」という意味で使ったのです。2人とも良く知った関係ですから、別にDudeと呼んで問題は無いのですが、「最近Dudeと呼ばれたことが無かったから、どうも嬉しくなってね」と彼は言っていました。

2)Facebook / Defriend

 日本でもMixiなどのSNSが有名ですが、アメリカにはFacebookという有名なサイトがあります。そのサイト上で友達リストに追加すること(Mixiなら「マイミクと呼ばれるものですね」)を、Facebookと言います。つまり、”He facebooked me.”とか “She facebooked me.”と言えるのです。私もFacebookのアカウントを持っていますが、時に学生からリストに追加のリクエストが来ます。そんな時には、「学期が終るまで待ってね」と返事をします。でも学期末になって成績をつける段階でF(落第)をつけた学生のリクエストをAcceptするか、Rejectするか、いつも悩みます。また、Facebookで友達リストにいた人を、そこから削除することもあります。そんな事をDefriendといいます。Befriendは「友達になる」というちゃんとした英語ですが、Defriendは今のネット時代に生まれた言葉。実際にはリストから消すだけで人間関係が消えるわけではないのですが、ある意味、ネット社会の歪曲された人間関係を映し出している単語とも言えるでしょう。

3)Turkey Coma

 アメリカの感謝祭は七面鳥のディナーが特徴です。しかし七面鳥には眠気を促進する成分が含まれています。その結果、食後に多くの人が眠気に襲われます。すると多くの人がTVの前でソファーにリラックスしながら、いつの間にか昼寝をしている、という光景を見かけます。そんな様子をTurkey Comaと呼びます。もちろん、お腹いっぱいに美味しい食事をして、ワインを堪能したら、七面鳥を食べなくても眠くなる、という説は否定できませんが。ちなみに、今週の写真は、そんなTurkey Comaを我慢して撮影した、今年の感謝祭のFamily Pictureです。

4)Google

 日本でもおなじみのGoogle。Googleで検索する、という動詞は、Googleで十分です。残念ながら、AltavistaもYahooも動詞として使われている例を聞いたことはありません。しかし”You should google-map it”とか”You should mapquest it.”と主要なオンラインの地図サービスを動詞化している例は聞いたことがあります。ティッシュが全てKleenexと呼ばれるように、ブランド名が言葉の一部になるというのは、その企業の成功を映し出しているのでしょう。

5)Yellow card / Red Card

 上に挙げた例よりは少し一般性が低いかもしれませんが、サッカーの試合ではイエローカードとレッドカードが使われます。それぞれ、警告と退場を意味するカードで、競技規則に従って使用されます。1試合で2枚の警告を受けると退場処分となります。レフェリー仲間だけではなく、サッカーのTV中継などでも、Yellow CardやRed Cardが動詞として使われています。例えば、先日の大会では”Who red-carded today?”という風に、「今日、退場処分を下した審判はいますか?」という質問がありました。というのも、遠くで開かれている大会に審判員として参加すると、退場処分を下したレフェリーが、その日の夜に他のレフェリーにデザートを奢る、という習慣があるからです。後日のブログに掲載しますが、先日フロリダで行われた大会の初日は、私が2枚の退場処分を出しました。他に2人のレフェリーがそれぞれ1枚ずつレッドカードを出していましたから、私がデザートの総額の半分を、残りの2人が25%ずつを出し合って、居合わせた審判仲間にデザートを奢ったのです。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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