INTERPRETATION

オリンピック通訳

木内裕也

オリンピック通訳

皆さん、始めまして。今回、「オリンピック通訳」のコラムを担当することになった木内裕也です。2020年のオリンピックとパラリンピックでは色々な場所で語学を使うボランティアやプロが活動することになります。1年数か月後に迫った大きなイベントに向けて、色々な情報を共有できればと思います。

私は高校生の時に長野オリンピックやプレベントでボランティアを行い、少しだけ語学ボランティアの様な活動をしました。それまで語学には興味はありましたが、特にそこでの経験が通訳に対する興味に繋がり、今に至ります。その間、サッカー、野球、陸上等いろいろなスポーツの通訳を行いました。選手のインタビューもありましたし、TV中継での監督のコメントを訳したこともあります。また電動車椅子を使ったサッカーの競技規則翻訳に携わる機会を頂いたこともあります。これらの経験を通して学んだことを、月に2回のエッセイで紹介できればと思います。

さて、スポーツの通訳と一般的な会議通訳や放送通訳の間には、ある意味で壁があります。会議通訳と放送通訳の両方をする人はいますが、チームや選手についたスポーツ通訳を専門にする人が会議通訳や放送通訳をするということはなかなかありません。トップレベルの会議通訳者でも「スポーツは苦手」という人は少なくありません。確かに案件の数(=経験できる案件数)で考えると、スポーツの案件は会議通訳者にとって多くはありません。スポーツ選手が広告代理店のイベントに来ることはあっても、スポーツの通訳というのは少ないものです。

しかし駆け出しの通訳者や、通訳を目指し始めた人にとって、スポーツの通訳は非常に有意義だと思います。例えば会場を訪れる人に対する通訳であれば、少し英語が得意である、というボランティアの方々でも、通訳のイメージを理解することができます。通訳の仕事が自分に向いているか、何となくイメージが沸くでしょう。ワールドカップや世界陸上のように、ある特定のスポーツに特化した大会で仕事ができれば、そのスポーツに対する知識が豊富になります。スポーツに苦手意識を持つ通訳者が多い中で、その経験は有益でしょう。

また、スポーツの場では様々な分野の内容が話題になります。ドーピングであれば薬学や化学の用語が必要です。パラリンピックであれば医学用語が飛び交います。ルールの会議であれば、法廷通訳ほどではないですが、細かい用語の訳に気を払うことが求められます。金メダルを取った選手のインタビューを訳すときには、訳す声に嬉しさを表現することが求められます。どんなに業績の良かった会社の社長でも、株主総会で金メダルを取った選手ほど喜ぶことはないでしょう。会議通訳では経験のできないものです。

このように非常に興味深く奥の深いスポーツ通訳の世界を、このコラムでは紹介していきたいと思います。

 

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木内裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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