INTERPRETATION

持ち物にも注意

木内裕也

オリンピック通訳

同時通訳でブースの中で1日過ごす場合もそうですが、逐次通訳で会議の参加者や聴衆から目に見えるところで通訳をする場合、持ち物には一層気を払います。飲料系の会社で通訳をする場合、コンビニで買って持っていた水やお茶がクライアントのライバル会社の製品であれば、例え通訳のパフォーマンスが良くても問題となり得るでしょう。私は過去にある印刷機の会社において、自宅で印刷した資料を広げた際に「○○社のプリンターを使っているんですね」と言われたことがあります。印刷物を見ただけでプリンターの会社がわかってしまうのか、と驚き、またその技術者の眼にも驚きました。実際、そこまで気を使って通訳の現場に向かうことは出来ませんが、持ち物に気を使うのはスポーツの通訳でも同じです。

国際会議で飲み物や洋服のスポンサーがついていることは少ないです。気を付けるのはクライアントの会社やその競合会社の情報程度。しかしスポーツとなれば、世界で名の知れた様々な会社がスポンサーとしてついてます。巨額の資金を投入してスポンサーになっているわけですから、大会の組織委員会もスポンサーでない会社のロゴなどが露出しないように、気を使っています。

これは通訳者にとっても気を使うべき点です。スポーツ大会には飲料系のスポンサーがついています。現場に飲み物をもって行くのであれば、中身を別のボトルに入れ替えるか、そのスポンサーを意識して購入します。カバンなどの持ち物にブランドがわかるデザインやロゴがある場合は避けたほうが良いでしょう。

あるスポーツ大会で、大会スポンサーの競合会社のカバンをもって現場に到着した通訳者が、カバンのロゴの部分にガムテープを貼らされていた様子を目にしたこともあります。

スポーツの通訳では屋外で動きやすい格好をして通訳をすることもあるでしょう。あるスポーツの指導者のセミナーでは、海外から講師を呼んで、屋外で一緒に動きながら通訳ということもありました。エージェントからの連絡では「ジャージなど動きやすい格好でお願いします」ということ。私は偶然、クライアントの団体がどのスポーツメーカーからスポンサーを受けているか知っており、自宅にもそのメーカーの運動着がありましたから、それを着て参加しました。スポーツ団体のPR担当者がセミナー中も写真やビデオを撮っていましたので、もしもライバル企業のジャージで参加していたら、やはりロゴを隠すように指示されていたかもしれません。

また、屋外でスポーツの通訳をすれば雨に濡れることも、汗で服が濡れることもあります。そうすると、アンダーシャツなどが透けて見えることになります。アンダーシャツのメーカーにまで気を回せない、と感じるかもしれません。しかし、雨に濡れたシャツの下から、別メーカーのロゴが透けて見えたと、クレームがあったという話を耳にしたこともあります。また、会場脇にあったスポンサーの看板前に手荷物を置いてしまい、看板が一部隠れてしまってクレームに繋がったという話もありました。

このように、スポーツの通訳ではスポンサーに対する注意を普段以上にすることが大切です。

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木内裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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