INTERPRETATION

通訳者になるには?

ハイキャリア編集部

教えて!通訳のこと

1. 通訳者になるための4ステップ

「どうやったら通訳者になれるのでしょうか」という質問をよく受けます。フリーランスの会議通訳者として活躍している人は人数が限られていますので、詳しい情報は少ないのかもしれません。将来通訳者を目指している人が、最短で通訳デビューできる方法を4つのステップでご紹介します。

1.1 通訳学校を探す
プロの通訳者として活躍するには、英語力だけでなく通訳技術を身に着けるための勉強が必須です。インタースクール、サイマル・アカデミー、ISSインスティテュートなど有名な通訳学校があります。まだどの通訳学校もオンラインのクラスがありますので、遠方からも受講が可能です。自分に見合った学校を探しましょう。

通訳学校はプロの通訳者になるための技術を学ぶところです。中には独学だけで通訳者として活躍されている方もいますが、それはかなり少数派です。会議通訳者のほとんどは、最初に学校で通訳技術を身につけるところからスタートしています。数年間学校に通って勉強するのは時間も費用もかかりますが、結果的には通訳者になるための一番の近道だと思います。

通訳学校で専門分野の英語はもちろん、通訳技術や勉強の仕方、そして通訳者としての立ち振る舞いなど体系的に学ぶことができます。どの通訳学校を選ぶにしても入学前に必ずスキルチェックを受けて、自分の実力に合ったクラスからスタートします。そして進級または卒業を目指して、クラスメイトと切磋琢磨しながら通訳技術を身に着けていきます。

1.2 とにかく毎日勉強をする
通訳学校では大量の予習復習の課題をこなすことが求められます。学校ではいろんなコースがありますが、大体1週間に4時間ぐらいのクラスを取ります。そして授業以外に毎日2時間から4時間勉強します。人によっては授業時間の10倍から15倍の時間を勉強時間に充てる人もいます。受験勉強を経験した人はイメージできると思いますが、それぐらい勉強をしないとくクラスについていくことは難しくなるでしょう。多くの方はフルタイムで昼間別の仕事をしながら学校に通っていますので、勉強時間を捻出するのも一苦労で時に犠牲を伴います。例えば休日に友人と映画や食事に行く時間はほとんど取れなくなるかもしれません。限られた時間の中で、隙間時間をうまく活用しながら効率的に勉強しています。「赤信号を待っている間に3つ英単語を覚えた」「毎日の通勤時間に歩きながら英語の音声をシャドーイングをした」「朝起きたら必ず日経新聞を音読した」「昼休みは5分で社食を食べ終わり、残りの時間は勉強時間にあてた」など現在通訳者として活躍している人にはたくさんの逸話があります。

1.3 通訳の仕事を探す
通訳学校では一つ上のクラスに進級するだけでもハードルは高く難しくなります。また上のクラスに上がるほど通訳の仕事をしながら学校に通っている仲間も増えてくるでしょう。一番上のクラスを卒業できるのはレベルの高い限られた人になりますが、ある程度通訳技術が身に着いた時点で、卒業を待たずに仕事を探すのもいいかと思います。勉強だけでなくOJTで経験することによってより通訳技術は磨かれていきます。

通訳の仕事を探すにはまず通訳エージェントに登録にしましょう。通訳エージェントにはサイマルインターナショナル、コングレ、インターグループ、KYトレード、ISS、テンナイン・コミュニケーション等があります。登録する場合は、最初にスキルチェックを受けることになります。エージェントではその方の能力を把握し、実力に見合った、または成長に繋がるお仕事をご紹介するためスキルチェックを行っています。

通訳という仕事はサービス業なのでスキルチェックでは語学力だけでなく、その方の人柄や仕事に対する姿勢、コミュニケーション能力も審査します。まず絶対に面接時間に遅刻しないこと、そして将来どのような通訳者を目指しているのか、将来のビジョンをしっかり伝えてください。

また通訳者は自由に好きな時間に働けるイメージがありますが、最初の仕事を探す時は、仕事に自分のスケジュールを合わせるぐらいの意気込みが必要です。通訳の仕事は首都圏に集中していますので、地方で仕事を探すより首都圏で働ける体制を作った方がチャンスは早く訪れるでしょう。また企業内通訳の仕事は5日間フルタイムの仕事が多いので、スケジュールを確保することも必要です。ある程度経験と実力がついてフリーランスとして独立できるレベルになれば、現在はリモート通訳の案件も多くありますので、自分の条件にあった働き方が出ができるようになります。

1.4 通訳者として働く
通訳者は今までの通訳経験が問われる仕事になりますので、仕事を受ける際には経験者が優先されます。つまり通訳未経験でフリーランスとして独立するのはかなりハードルが高いと言えるでしょう。まず経験を積むためにも派遣スタッフとして社内通訳者のポジションを探すのがいいと思います。フリーランスは毎回違う会議を通訳しますので難易度が上がりますが、社内通訳者はある一定の期間同じ業界で経験を積むことができるので、時間をかけてより深くその分野を学ぶことができます。

しかし今までの仕事を辞めて通訳の仕事に移行するのは最初は勇気が必要でしょう。「途中で契約が終わるかもしれない」「安定的に収入が確保できるのだろうか?」「自分のスキルは現場で通じるのだろうか?」という気持ちから第一歩を踏みだすのを躊躇している人も多くいます。

弊社では通訳者としての一歩を踏み出そうとしている人を対象に「COWプロジェクト」を展開しております。未経験でも一定の語学力があり、何が何でも将来通訳者・翻訳者になりたいという人にCOWプロジェクトに参画してもらい、通訳者として独り立ちするまでを伴走するプロジェクトです。詳しくは下記サイトよりご応募ください。今までCOWプロジェクトからは10名以上のフリーランス通訳者・翻訳者を輩出しております。

COWプロジェクト

2. 通訳者になるために必要な力1「プロフェショナルとしての語学力」

通訳者になるまでの4つのステップをご紹介しましたが、そもそも通訳者を目指すにはどれぐらいの語学力が必要とされているのでしょうか?通訳者には公的な免許や資格は一切ありません。あくまでも通訳パフォーマンスで評価されます。通訳者になるには語学力向上に向けてたゆまない日々の努力が必要です。

2.1 ただ英語を話せるだけでは通用しない
通訳者を目指す人の英語力の基準はTOEIC900点以上、英検1級レベルと言われています。多くの通訳学校で入学できる英語力の目安にもなっています。しかし「TOEIC900点以上、英検一級レベル」はやっと通訳者として勉強するためのスタートラインに立てるだけで、すぐに通訳ができる訳ではありません。通訳者を目指している人の中にはTOEIC満点の人もたくさんいるのです。TOEICで高得点が取れても必ず通訳者になれる訳ではなく、実際に求められる英語力はもっともっと高いのです。常に現状の語学力に満足するのではなく、日々語学力向上を意識して、継続して勉強することが重要です。

ネイティブレベルで英語を話せる人の中には、過去に仕事や友人から「英語ができるから通訳してほしい」と頼まれた経験があるかも知れません。気軽な気持ちで引き受けたけど、実際にやってみると通訳が全くできなったという話を聞きます。

つまり自分の意見や考えを自ら英語で話す場合と、第三者の言葉を短時間で記憶し、他の言葉に置き換えてアウトプットするのでは、頭の中の作業が全く違うのです。ただ英語を話せるだけでな通用しない理由は通訳技術がなければ通訳ができないからです。

2.2 英語力だけではなく日本語力も必要
通訳者は高い英語力が不可欠という話をしましたが、それ以上に重要なのは母国語である日本語力です。第二言語はどんなにトレーニングしても母国語以上にうまくならないと言われています。通訳者として極めるのは英語だけでなく、日本語も大切なのです。なぜなら通訳者は日本語から英語だけでなく、英語から日本語へも訳出しをするので、日本語の語彙力や専門知識が重要になります。通訳者を目指す人の中には英語を集中して勉強し日本語がおろそかになる場合がありますので、両方の言語で語彙力と専門知識を身に着ける必要があります。

3. 通訳者になるために必要な力2「相手の立場に立ったコミュニケーション力」

通訳という仕事は人と人、国と国の架け橋になる仕事です。ただ言葉を縦から横に直訳するのではなく、話し手の言葉に含まれた意図やニュアンスも相手側に伝わるように適切な言葉を選び、なおかつ正確に訳していきます。そのためにはそれぞれの国の歴史、文化、そして習慣の違いを理解した上で、相手の立場に立った円滑なコミュニケーション能力が求められます。

3.1 異文化コミュニケーションの架け橋になれる力
通訳者はグローバル社会の異文化コミュニケーションにととって欠かせない存在です。スピーカーの言葉を素早く置き換えるだけでなく、聞き手の立場や属性を理解した上で「相手にきちんと伝わるか」ということを常に意識しながら通訳をします。通訳者がコミュニケーションの架け橋になることによって、お互いの誤解が解け、ビジネスが成功する可能性があるのです。

3.2 状況に応じて柔軟に対応できる力
通訳という仕事は何か目に見えるものを売るのではなく、目に見えないサービスという付加価値を評価していただくお仕事です。通訳現場ではクライアントのニーズを素早く察知して、臨機応変に対応する力が求められます。円滑なコミュニケーションを実現するために、状況に応じて言葉を選び、意図をくみ取って対応する柔軟性が鍵になります。何とか人のために役立ちたいという気持ちを持っている人は通訳者向きの性格です。そういう気持ちは必ず相手に伝わります。

3.3 相手に聞き取りやすく伝える力
通訳現場では必ずマイクがあるとは限りません。もしも小さな声でぼぞぼそ訳していたら「聞こえません」とすぐにクレームが入るでしょう。まず大きな声でハキハキと訳すことが大切です。どんなに素晴らしい訳でも聞こえなければ意味がありません。また小さな声は時に聞き手に自信がなく聞こえたり、本当に訳が合っているのだろうかと不安を与えてしまいます。聞き手に不安を感じさせないというのも通訳としての基本です。仕事の時だけ大きな声で話すというのも難しいので、普段から大きな声で話すように心がけましょう。

4.通訳者になるために必要な力3「絶対に諦めない精神力」

通訳現場ではスピードが求められます。またその場でクライアントの反応が返ってきますので、うまく通訳できた場合は安心ですが、反対の場合は厳しい目に晒されてしまいます。強いプレシャーの中でも、平常心で仕事に立ち向かえる精神力が求められます。

4.1 プレシャーに打ち勝つ強いメンタル力
現場で万が一うまく訳せなかったとしても、プロとしてその場を離れることはできません。迷ったり、悩んだり、落ちこまず、安定したパフォーマンスで通訳をすることが重要です。例えば一つの単語が聞き取れなかったことに落ち込んでその後のパフォーマンスが崩れてしまったら負のスパイラルに陥ってしまいます。万が一失敗しても引きずらず、気持ちをすぐに立て直すだけのメンタル力が求められます。

4.2 継続的に勉強を続けるメンタル力
通訳者になるには圧倒的な英語力とそれを実現するために継続的に勉強することが大事だと伝えしました。英語力も通訳技術も目に見えて成果が出る訳ではありません。毎日大量の単語を覚え通訳トレーニングをしても、すぐに通訳ができるようにはならないのです。「これだけ勉強して本当に通訳者になれるのだろうか?」という不安な気持ちを抱きながら勉強を続けることになります。Plateau(プラトー)を呼ばれるラーニングカーブの中で、なかなかスキルが伸びない時に、それでもそのまま勉強を続ける強いメンタル力が必要です。猛勉強も全く辛いとは感じず、知らない文化や言葉といった未知の世界を知る喜びなのだと捉えられる人は、将来いい通訳者になれると思います。

4.3 将来必ず通訳者になるというあきらめないメンタル力
果てしなく続く勉強と、どんなに努力しても自分のイメージ通りにできない日が続くと目の前に大きな壁を感じるかもしれません。せめてこれくらいはできるようになりたいと思っても、なかなかそのレベルに到達できないと、壁はより一層高く感じるでしょう。その壁をやっと乗り越えられたとしても、必ず次の壁が立ちはだかります。壁を乗り越えるには、ひたすら努力するしか道はありません。どんなに困難な道でも、言い訳をせず、あきらめず「絶対に将来通訳者になる」と心に決めた人だけが通訳者になっています。あきらめない強いメンタル力が必要です。

5 通訳者になりたい人のよくある質問

●通訳者になるには海外在住経験が必要ですか?
帰国子女や、海外留学経験がある方はリスニング力や英語の発音という点で通訳者として有利に働き、通訳を目指す上で大きなアドバンテージになります。しかし海外在住経験は必須条件ではありません。日本でずっと英語を勉強してきたという方の中でも、会議通訳者として第一線で活躍されている方はたくさんいます。また海外で学校教育を受けた場合は、その期間はどうしても日本語の教育から離れていますので、日本語の習得に時間がかかるという側面もあります。

●通訳者の年収はいくらですか?
通訳者の年収はその方の経験や能力、そして働き方によって様々ですが、フリーランスの会議通訳になれば、1500万以上の年収が見込めるでしょう。

●通訳者の仕事の魅力を教えてください。
通訳の仕事の魅力は活躍の場が日本にとどまらずグローバルだということです。様々な国の人や価値観と触れ合うことができます。人と人、国と国を繋ぐのが通訳者の仕事になりますが、異なる言語の話し手と聞き手を通訳で繋ぐことでき、伝えたいメッセージが相手に伝わった時、大きな達成感を感じることができます。

通訳者になるための4つのステップと求められる3つの力についてご説明しました。
現在テンナイン・コミュニケーションでは、通訳者を目指している方向けに無料カウンセリングを行っています。年間200名以上の通訳者をカウンセリングしているコーディネーターが担当します。是非ご興味のある方は下記までご連絡ください。

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テンナイン・コミュニケーション編集部です。
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