INTERPRETATION

語学学習には意地と工夫を

柴原早苗

通訳者のたまごたちへ

 今年4月から学び始めたフランス語。完全に独学で、メインの教材となっているのはNHKラジオ講座とラジオ・ジャパンのフランス語ニュースポッドキャストです。放送通訳という私の仕事柄、フランス語学習はあくまでも「フランス語でニュースを理解すること」がメインの目的です。このため、会話や作文よりは、耳を鍛え、基本的な文章構造や語彙を理解することが重点項目となっています。

 初夏に受けたフランス語検定5級は、幸いなことに合格したのですが、それを機に「学ぶ」というモチベーションが下がってしまったのは、以前このコラムで書いたとおりです。「何としても合格する」という目標は学習の上で大いに原動力となります。しかし、いったん合格証書を手にしてしまうと、人間というのはダレる生き物なのでしょう。私も中だるみの時期を迎えてしまったのでした。

 しかしちょうどそのころ、関西大学の田尻悟郎先生のインタビューを読み、考えが変わりました。田尻先生は長年英語教育に携わっていらっしゃいますが、今でもなお、NHKのラジオ講座をコツコツと聞き続けておられるとのこと。毎日ラジオに耳を傾けることについて田尻先生は、「自分への意地でありプライドである」と述べていらっしゃいました。

 語学学習において必要なのは「継続」です。けれども、ただ気合いだけで続けるのは大変だと私は考えます。本人のやる気だけに任せても、よほど意志が強くない限り、そこまでのテンションを保持するのが難しいからです。一方、勝間和代さんは、「がんばれないのならば、がんばらなくても良い仕組みを作るべき」と述べています。やる気一筋だけで続かないのが人間ですから、こういうときこそ、取り組む上でのハードルが低くなるような工夫が必要ということでしょう。

 私の場合、ダレそうになったり、面倒くさく思えたりしたときほど、大きな努力を払わなくてもすむようなアプローチを考えています。最近はスケジュールが合わず、リアルタイムでラジオ講座が聞けないため、もっぱらNHKウェブサイトでアーカイブを聞いています。このため、取り組む工夫として、夜寝る前にフランス語講座のテキストの該当ページを開き、辞書と筆記用具を添え、パソコンにイヤホンを接続した状態で就寝しています。これだけでも、朝起きた時に取り組もうという気持ちになれます。

 このおかげで、田尻先生が述べる「意地とプライド」が私にもインプットされたのか、最近は穴を開けることなく聞き続けています。語学学習で必要なのは、「やる気という名の頑張り」よりも、むしろ「意地と工夫」なのかもしれません。

 (2009年9月7日)

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学非常勤講師。 上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。 ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。 NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。 ESAC(イーザック)英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。 通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。 著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。

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