INTERPRETATION

夢をかなえるゾウ

上谷覚志

やりなおし!英語道場

こんにちは。今回はちょっと趣を変えて、ある本について書いてみたいと思います。偶然、情報番組で紹介されていたのを見て買ってみたんですが、非常に面白かったのです。本のタイトルは『夢をかなえずゾウ』水野敬也著(飛鳥新社)です。本の紹介をそのまま引用すると、“夢をなくしたサラリーマンと関西弁のゾウの神様が繰り広げる「笑えて」「泣けて」「タメになる」全く新しいエンターテインメント小説”とあり、お笑いにうるさい関西人でも、このゾウの神様ガネーシャの関西弁に“なかなかおもろいやん!”と思わず笑ってしまうエンターテインメント性に加えて、この本の本来のテーマ「人はなぜ変われないのか?」「どうすれば変われるのか?」を二人の会話の中で紐解いていきます。

ある本を読んだり、ある人に会ったり、ある事件に遭遇したりして、これを転機に自分は明日から変わる!と興奮し、強く心に決めたはずなのに、一晩寝たらまたこれまでの自分に戻ってしまい、“自分ってやつは・・・”ってため息混じりに肩を落としたこと、誰でも一度や二度あるのではないでしょうか?

通訳の授業を例に取ると、受講を開始した当初はほとんどの人がやる気になり、これからは猛勉強して、このコースが終わる頃までには英語をものにして通訳になる!と非常に高い志を持っているのですが、学期が終わる頃には大体の方が最初の頃の凛々しい面持ちから、何となくまったりした面持ちに変わり、“そんなことも言ってましたよね・・・”と遠くを見つめながら、来期継続・・・となっていきます。もちろんこれが悪いと言っているわけではありません。人それぞれ自分のペースがあるわけですし、コースを受講する目的も人それぞれでいいと思います。ただこんなはずではなかったのにとか、自分のイメージしている姿と現実とのギャップがなかなか埋まらないという方は一度この本を読んでみてください。何かのヒントが得られると思います。

私がカウンセリングや普段の生活の中で感じていたことをこの本で見事に表現してくれています。

(1) 絶対成功できない人とは人の話を聞かないで、勉強にしろなんにしろ楽に成功できる秘訣のようなものがあり、それを聞き出すことに注力して実際にとりあえず行動してみることができない人

(2) やる気を維持できない人は一日の終わりに、その日頑張れなかったことで自分を責め、よく頑張ったことに対して自分を褒めて終わることができない人

(3) 人は意識を変えることはできないということを自覚し、意識ではなく本当に自分が変えられる環境とか何か具体的なものを変える姿勢こそが本当の変化を生み出す

こういう風に書き出してみると単なる自己啓発本みたいに聞こえてしまいますが、これを小説風に書き下ろし、誰もが読んでいて“そうそう、そうやねん!”って絶対に共感できる部分が見つかります。また、“こうすればよかったのか”と参考になったり、“自分がやっていたやり方でよかったんだ”という再確認ができたりと、読む人によって感じ方は様々だと思いますが、こうありたいという自分の姿があるのにどうしていいのかわからないとか、自分に本当に向いている仕事や自分の選ぶべき生き方に迷いを感じている方など、とにかく今の自分を変えたいと思っている人にはお勧めの一冊です。

2008年こそはこれまでとは一味違う年にしようと新年の抱負を誓ったのに、桜の季節を迎え“えっ!もう4分の1終わったの?”と焦りを感じている方や新年の抱負を密かに下方修正している方、4月から学校に通おうと思っている人もたくさんいると思います。この本を読むと、ひょっとしたら自分にもできるかもという勇気を与えてくれるかも知れません。

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記事を書いた人

上谷覚志

大阪大学卒業後、オーストラリアのクイーンズランド大学通訳翻訳修士号とオーストラリア会議通訳者資格を同時に取得し帰国。その後IT、金融、TVショッピングの社での社内通訳を経て、現在フリーランス通訳としてIT,金融、法律を中心としたビジネス通訳として商談、セミナー等幅広い分野で活躍中。一方、予備校、通訳学校、大学でビジネス英語や通訳を20年以上教えてきのキャリアを持つ。2006 年にAccent on Communicationを設立し、通訳訓練法を使ったビジネス英語講座、TOEIC講座、通訳者養成講座を提供している。

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