TRANSLATION

Tradosとぼくとタグのお話

すみす

Tradosとぼくと東京タワー

みなさんはタグ、お好きですか?

Tradosをご利用されている皆さんであれば、タグについてもよくご存知だと思いますが、本題に入る前に今一度タグについて確認しておきましょう。

タグを一言で言うならば「文字列に属性を与える記号」といったところでしょうか。例えば、文字を太字にしたい場合は<b>Trados</b>と囲むことでタグに囲まれた文字は「Trados」と太字になります(bはBoldの略です)。身近な例で言えば、TwitterやFacebookでよく使われている「ハッシュタグ」も文字通りタグの一種です。ハッシュタグを使用することで、#(ハッシュマーク)以下の文字をグループ化することができます。グループ化するメリットは特定の文字列として検索を容易にする機能を持ちます(例えば、SNSなどで#Tradosと検索すると#Tradosをもつ投稿のみを探すことができ、不要な検索結果を除外できます)。

上記で示した通り、タグには「ボールド」のような目に見える装飾的なタグの他、「ハッシュタグ」のような目に見えない意味的なタグなど、様々な種類があります。我々が普段目にしているウェブサイトや文書ファイルでも、目に見える部分、目に見えない部分双方のタグが効果的に働くことで単純なテキストデータを見やすい記事に変更してくれています。

さて、本題ですが、Tradosでは翻訳をする際にこれらのタグについても処理してあげなければいけません。例えば、”How to use <b>Trados</b>”と原文で表記されている場合は「<b>Trados</b>の使い方」のようにタグに応じた翻訳が必要となります。上記の例のような単純な文章であれば比較的容易に処理できますが、中にはタグが入れ子構造になっていたり、訳出した際に語順が変わってタグの位置も一緒に移動してあげないといけなかったりと、何かと手間のかかる作業です。かといって、タグの整備をおろそかにしてしまうと訳文生成した文章に正しい属性が与えられず、レイアウトが崩れる原因となったりフォント情報が変わったりしてしまう場合があります。

そんなややこしいタグなんてTradosが処理してくれよ。と思うこともありますが、タグが文字列に紐づいているため、翻訳の性質上やはり人間が意図した場所に移し替えてあげないといけないのでしょう。また、Tradosは基本的にファイル内に散らばっているタグをそのまま拾ってしまうので、中には不要なタグというものも含まれています。例えば、特殊な欧文フォントがタグ化されていたとします。日本語として訳出する場合は日本語用のフォントに変わるため、欧文フォントに関するタグは不要となりますね。Tradosを使い慣れている方の訳文を確認すると不要なタグについては削除したり文末に寄せたりされているようです。ただ、どのタグがどのような働きをしているのかわからないうちは一つ一つ設定しなおすのがやはり安心というものでしょうか。

翻訳者には語学力だけではなく、ITスキルも必要だとよく耳にします。Tradosのような翻訳支援ツールを使うにしても本日紹介したタグの知識などが求められます。特に2010年代以降は様々な翻訳支援ツールが各社より販売され、より一層ツールへの順応性も求められるようになっていると思います。翻訳会社としても翻訳メモリの使用を求められる機械が増えており、翻訳支援ツールからは避けられないような状況になりつつあるのではないでしょうか。また、現場の実感としても、弊社へ新規登録に来られる翻訳者さんのうち、半数以上は何らかの翻訳支援ツールを使用された経験がある印象です。

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記事を書いた人

すみす

埼玉大学大学院人文社会科学研究科を卒業後、翻訳コーディネーターとしてテンナイン・コミュニケーションに入社。大学院ではドイツ文学を専攻し、文献学の観点からカフカを研究。
現在は翻訳コーディネーターとしてTradosに悪戦苦闘中。
趣味はヨーロッパ作品を中心に読書と映画鑑賞。ときどきジャズと短歌。

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