INTERPRETATION

Vol.19 高野 勢子さん「フランス語の魅力」

ハイキャリア編集部

多言語通訳者・翻訳者インタビュー

今回はフランス語会議通訳としてご活躍中の高野勢子さんにご登場頂きます。
ご自宅にお邪魔し、フランス語や通訳の魅力・貴重な経験のお話など沢山聞かせてくれました。高野さんのお話を聞けば誰でもフランス語を勉強したくなるかもしれません。

【プロフィール】
高野 勢子さん Seiko Takano
上智大学文学部フランス文学科に在学中、仏国アンジェ・カトリック大学に留学。帰国、大学卒業後、在日フランス大使館に就職し総務部長補佐通訳を務める。フランス大使館を退職後、外資系製薬会社に日本代表医師の補佐として入社。在職中に通訳学校に通い、学校卒業後、フリーランス通訳者となり、現在もご活躍中。
高野さんの個人サイト:
URL http://www.planktonik.com/seiko/index.html

Q.語学の中でもフランス語に興味を持たれたきっかけは?
ドイツ文学やフランス文学の本を読むのがとても好きだったので、高校2年生後半から3年生の進路を決める時期にドイツ文学にするかフランス文学にするか迷ったのですが、他言語に比べ、音の響きがとてもきれいで、聞いていてとても幸せな気分になったので、大学でフランス文学部に進もうと決めました。
実際にフランス語を学び始めると、想像以上に発音や文法が難しかったり、全く基礎もなかったのでとても苦労しましたね。ただ、今でもフランス語の響きが大好きなので正しい選択をしたと思っています。

Q.大学生の時にされた短期留学で初めてフランスに行かれたとの事ですがその時の思い出や印象など教えて下さい。
初めてのフランスだったので、とても新鮮で楽しい事ばかりでした。町から列車に乗って田舎の友達の家に遊びに行ったり、自然が豊富なのでアウトドアスポーツを楽しんだり。また、パリの人とは少し違い田舎の人たちはとても親切でそんな現地の方々の優しさに触れる機会も沢山ありました。フランス人の方は、普段はあまりかまってくれない人でも、本当に困っている時は必ず助けてくれるんです。それが分かってとても心強かったです。

Q.フリーランス通訳者になろうと思ったきっかけは?
フランス大使館で通訳者として働いていた時に通訳の魅力・面白さに気付き、もっと勉強して幅広い分野で通訳がしたいと思いフリーランスになろうと決めました。そこで、通訳者になる為には一般企業での実務経験も必要だと思い、外資系の製薬会社に転職したんです。

Q.フリーランス通訳者としての魅力、又は大変さは何ですか?
毎回の仕事は、業種・内容など全く異なるので事前準備にはかなりの時間と勉強を要します。それが一番大変ですね。ただ、それが逆に魅力でもあります。自分の知らない分野の仕事を受けることにより、その知識が広がり、それが興味へと繋がったりします。仕事を通して自分の世界がどんどん広がるのがとっても楽しいです。
又、仕事により様々な人の立場で話(通訳)をしなければいけません。その人がどんな立場で、どんな考え方をしているのかを考えながら話をしていると、自分の先入観や狭い世界から少し抜け出すことが出来、とても視野が広がります。

Q.通訳者としてお仕事をされてきた中で、特に印象に残っている苦労や失敗談はありますか?
通訳学校を卒業して初めてした仕事がNHKフランス語ニュースの通訳なんですが、生放送で緊張する上に読むスピードも速く、またニュースの内容も幅広い為その背景の勉強も大変で本当に苦労しました。特に私はあがり症だったので、慣れるまでに5年くらいかかりましたよ。お陰様で心臓の壁が10cmくらい厚くなりましたね(笑)

失敗談もたくさんあります。とっても立派なお部屋に入った瞬間、あまりの立派さに足が竦んで何も聞こえなくなってしまった事もありますし。あと、ただの酔っ払いのおじさんだと思って馴れ馴れしく話していた人がとてもお偉い方だったりして、人は見かけで判断してはいけないと実感しましたね(笑)

Q.フランス語の魅力を教えて下さい。
きれいな音の響きに魅力を感じ、勉強を始めたのですが、それだけではありません。フランス語は、ヨーロッパに限らず、アフリカ、カナダなど広い範囲で使われています。フランス語を通して先進国に限らず発展途上国の問題などにも関わることが出来、またそういった方々ともコミュニケーションをとる事が出来るのが最大の魅力だと思います。例えば、アフリカ各国から来日された小中学校の先生達のアテンドをしたり、紛争地域から来た方とのお仕事や、遊牧民の方の音楽を紹介するお仕事など、本当に様々な出会いがあり、その出会いを通して自分の知らなかった現実・知識を沢山得ることができます。通訳者とクライアントの関係には、家族や会社関係者に見られるような社会的な垣根がなく、1日通訳として一緒にいると本音や自分の問題などを話してくれ、本当に深い心の交流が出来るんです。

Q.日々行っているトレーニング・心掛けている事は何ですか?
フランス語のニュース・ラジオなどを聞いて単語帳を作ったりと、定期的に勉強するように心がけています。ただ、毎日ガツガツ頑張っていても疲れてしまうので、私は”三日坊主でいいじゃない”と自分に言い聞かせています(笑)。三日頑張って、休んで、また三日頑張ってと繰り返し、自分のペースでコツコツ頑張った方が疲れないし、逆に続けられる気がしますね。

ただ、単語などの知識はすぐに忘れてしまうもの。脳をザルに例えると、せっかく勉強して砂をザルに入れても、サラサラと下から漏れてしまっているんです。だから、常に漏れたらまた拾って足してという作業が大切だと思います。

Q.語学以外の趣味はなんですか?
いつもは気分転換に週1回くらいのペースで家の周りを一時間以上散歩したりしてます。後は、バードウォッチングが好きなので山にハイキングに行ったり、たまに温泉旅行に行ったりもしますね。
その他、年に1回は長期(約3週間)の休みをとり、旅行に出かけるようにしています。その休みを励みに1年間頑張っていますね。
散歩コース
高野さんのお散歩コースの一角です。とても静かで涼しくて、区で整備されているのでとてもきれいでした。

Q.通訳者になっていなかったら何になっていたと思いますか?
昔から洋服づくりや絵描きなどが好きで、学生の時も行事のポスターを書いてたりしていたんです。なので、通訳者を目指していなかったら、デザイナーなどアーティスト的な道に進んでいたかもしれません。

散歩コース
※高野さんの作品を部屋で見つけました。「籠」お庭にあった枝や蔓を使って作ってみたとの事。やっぱりアーティスティックですね!その他、各国に旅行した際に購入した可愛い小物が沢山ありました。

Q.通訳者を目指している方々へのアドバイスをお願いします。

まずは社会人経験を積むことが大切だと思います。社会の仕組み、社内構成など、内部で働いた経験がないと、通訳者として行っても場を把握するのが難しいでしょう。
又、通訳学校は最低限の知識をしっかり教えてくれるのでお勧めします。
あとは実際に経験を積んでいくしかないと思います。自分の足りない部分や、どの位勉強すれば通訳になれるのかを把握しながら頑張っていけばいいと思います。

Q.これからも通訳者としてご活躍されていくかと思いますが、将来の夢は何ですか?
通訳をする時は、常に相手の気持ちを理解して、考え方などを見通しながら訳すんですね。それがとても面白いんです。仕事を通してなのか、別の形なのかまだわかりませんが、自分の存在がある事で、対立している人が対立しなくなったり、相手に気持ちを伝えられたり。そういった人と人との懸け橋となり、自分の周りが和やかになればいいなと思っています。そのために引き続き通訳者として、より正確な訳が出来るように理解を深めていきたいと思います。

【高野勢子さんの七つ道具】

フランス語の辞書・持ち歩き用の電子辞書とその原本
電子辞書
チョコレート
のど飴・ビタミン飴など
その他:会場により温度などコンディションがまったく違うため常に自分で温度調節出来るよう、脱ぎ着出来る服装にする。

【編集後記】
明るく笑顔のとっても素敵な方でした。お家、お部屋、そしていつも行かれるお散歩コースなどもご紹介頂き、高野さんの素敵な私生活も見ることが出来ました。
インタビューの中で最も印象的だったのが、フランス語通訳者としての魅力をお話して下さっていた時の表情・言葉の全てがとっても魅力的で、ダイレクトに心に響き伝わってきました。玄関でお出迎えして頂いてから帰るまでの間、すっかり高野さんマジックにかけられてしまいました。

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記事を書いた人

ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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