INTERPRETATION

Vol.17 青宿操さん 「 あらゆる可能性を 」

ハイキャリア編集部

多言語通訳者・翻訳者インタビュー

【プロフィール
青宿操さん Misao Aoyado
筑波大学第二郡比較文化学類在学時から通訳者として活動を開始。大学卒業後、ドイツ三越フランクフルト支店入社、バイヤーとして経験を積む。日本帰国後、フリーランスドイツ語通訳・翻訳者に。現在、通訳・翻訳業の傍ら、株式会社フィートバックの代表取締役営業部長として多忙な日々を送る。

小さい頃から言葉に対する関心が強かったのでしょうか?
小学校の卒業文集に「DJになりたい」と書いたことを覚えています。NYに住む叔母の影響で、幼い頃から海外に対する興味はありましたが、田舎で育ったためバリバリのカタカナ英語教育を受けました。なぜか、発音には敏感だったようで、中学校の先生が「トゲザー(together)」と言ったときには、さすがにそれはないだろうと思ったのを覚えています(笑)。
中学校卒業後、単身ドイツへ?
母が仕事でドイツに行く機会が多かったこと、私自身歌とピアノを習っていたことから、ヨーロッパに対する関心は高かったんです。大きなきっかけは、中学生の頃サンフランシスコでホームスティしたことです。ドイツ人ファミリー宅に滞在したことで、本格的にドイツ語を学びたい、ヨーロッパの文化を知りたいと思うようになり、留学を決めました。母親も、小さい頃からいろんな可能性を探すのはいいことだと背中を押してくれました。今でも感謝しています。
どのようにしてドイツ語を勉強されましたか?
おそろしいことに、「こんにちは」、「さようなら」しか言えない状態で留学してしまいました。現地の日本人学校に入ったので、基本的に授業は日本語ですが、町内パレードさながら送り出されておきながら、何も話せないまま帰国するなんてどんなに恥ずかしいか想像がつきますよね(笑)? 危機感を覚えた私は、毎日学校終了後に語学学校に通い、週末は寮を離れドイツ人家庭でホームステイをしました。生きたドイツ語を覚えたくて必死だったんです。あの3年間は、人生で最も勉強したと思います。
高校卒業後、日本に戻ってきたのは?
3年も海外にいると、自分の日本語力、日本に対する知識の甘さを嫌でも感じます。大学は日本でと決め、帰国しました。通訳の仕事を始めたのも大学生の時です。今から考えると、恵まれていたと思います。景気がよかったので仕事も多く、今とほぼ同額の通訳料を頂いていました。卒業後も通訳者としてやっていこうと考えていたところ、先輩通訳者に一度社会人になることを勧められたんです。名刺の出し方、挨拶の仕方、社会の仕組みを一通り学んでからフリーランスになっても遅くはない、と。もっともだと思い、就職活動を始めたわけです。
大学卒業後、再びドイツに?
フランクフルト三越に入社しました。他社からも内定を頂いており、絶対にドイツへ行くぞ! と考えていたわけではありませんでしたが、海外で働くのもいい経験になるだろうと入社を決めました。この選択は正解でした。入社間もない頃から、ジュエリーの買い付け、商品管理、販売を任せて頂き、夢のようでした。自分の決定で数千万円の商品を買うんですよ? 実力を認められれば、どんどん任せてもらえることが嬉しかったです。毎日があっという間に過ぎていきました。ドイツ語のブラッシュアップになったのはもちろんですが、商品知識もつき、今でもお付き合いが続いているブランドもあり本当に得がたい経験でした。
日本帰国後、通訳者に?
三越での契約更新をしようかどうかという時、先輩通訳者の言葉を思い出し、そろそろ日本に戻って通訳の仕事を再開してもいい頃ではないかと思ったんです。 とはいえ、フリーランスといっても最初は通訳だけでは食べていけず、塾講師もやりました。馬好きな父親の関係で、JRA競馬学校厩務員試験のための講師も担当しました(笑)。今はさすがに時間がありませんが、教えることは向いているようです。完全にフリーランスになったのは、5年前です。
通訳・翻訳、どちらがお好きですか?
通訳が好きです! 翻訳も請けますが、毎回締切りに追われる売れっ子漫画家になったつもりで気持ちを奮い立たせないといけません。好きなのは、車やスポーツ関係の通訳です。数年前から、某モーターショーの通訳を全体のマネジメントも含め担当しています。非常に過酷なスケジュールなので、毎回この仕事の後は1ヶ月ほど海外で骨を休めています。印象に残っているお仕事は?某海外ブランド車アフターパーツ専門メーカー社長の通訳をした時のことです。一日観光の時、健康についてのお守りはどれかと聞かれたので教えたところ、「君に」とプレゼントしてくださったことがあります。さりげない心遣いに感動しました。それとも私って物欲しそうな顔をしていたんでしょうか(笑)。
今だから話せるハプニングは?
インターネット上のドイツ語通訳者リストに名前を載せていたことがあったんです。ある時、結婚申し込みの挨拶を通訳してほしいと依頼がきました。忘れられない仕事です。事前準備として、彼らとメールや電話で連絡を取り合っていたものの、実際に会うのは通訳当日が初めて。女性のご両親とも初対面で、緊迫した状況に私もどぎまぎしてしまいました。普段、仕事とプライベートは切り離していますが、最後にご両親が二人を応援するとおっしゃったときには、私も思わず涙がこぼれました。主人がドイツ人なので、人事とは思えなかったのです。まるで、自分が仲人になったような気持ちでした(笑)。今でも二人とは連絡を取っているんですよ。
青宿さんの強みは?
私のポリシーは、一に度胸、二に念密な準備、三に健康管理です。もちろん、プレッシャーや緊張もありますが、それを出さないのがプロ、ですよね。声にも気を使います。震えたり、かすれていたりすると、それだけで台無しです。ドイツ語通訳者のつらいところは、常にどんな分野にでも対応できるようにしておかないといけないことです。英語のように毎日仕事があるわけではないので、「これはできますが、これはできません」と言っていたら、仕事はありません。何事も無駄知識と思わないこと、常にアンテナを張るよう心がけています。
現在の一週間のスケジュールは?
通訳の他に、最近立ち上げた会社の運営で慌しい毎日です。ドイツ人マイスターによる、完全オーダーメイドシューズの輸入・販売を行っています。通訳以外のことに目を向けることも時には大事ですし、それがいい結果となって現れることもあります。通訳と二本柱でやっていけたらいいなと思っています。ご趣味は? 2年前に始めた畑作りです。ルッコラや野菜を育てています。ボクシングジムにも通っています。ボクササイズではなく、ボクシングです! リングに上がって試合もするんですよ。先日、初めて男性をKOしました。あれは快感でしたね! 何でも好きになると、夢中になってしまうようです。
もし通訳者になっていなかったら?
DJになりたかったです。エッセイストにも憧れます。今もちょこちょこやってはいるのですが、これで食べていけたら嬉しいなとも思います。書くことが好きで、エッセイ大賞の案内には常に目を光らせています。ちょっとしたお小遣い稼ぎにもなっているんですよ。ブログも書いており、翻訳で煮詰まった時などの密かなストレス発散になっています。
最後に、これから通訳・翻訳者を目指す方、ドイツ語学習者へのアドバイス及びメッセージをお願いします。
なりたい、という気持ちは大切ですが、そのためにあらゆる可能性を模索してください。フレキシブルに幅広い分野に対応できるよう、常にアンテナを張っておくことも重要です。少しずつステップアップをして、経験を積んでください!
編集後記
目的意識が非常に高い人、という印象を受けました。常に笑顔を絶やさないその明るいお人柄と、仕事に対するプロ意識の高さは、クライアントだけでなく周りの通訳者からも大きな信頼を得ていることでしょう。どんな時も前を向いていられること、これも青宿さんの強みだと思いました!

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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