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さぼるかさぼらないかそれが問題だ

アース

通訳・翻訳者リレーブログ

わたしが本格的に在宅で仕事を始めてから、う〜ん、決して短いとは言えない時間が過ぎました(少なくとも10年以下ではありません…)。

「お仕事は?」「翻訳やってま〜す」「え〜すごっ!!どんな本を訳すんですか?」「ええと、訳すのは本じゃなくてですね…実務翻訳といって…だいたい、もっとすごい仕事は世の中にたくさん…」という説明をモニョモニョすると(聞いてくれるならですけれど)、出てくる感想は、だいたい2つ。1つは「自宅だと好きなときに休めていいですね!」。もう1つは「自己管理が大変そう」。

なるほど、外から見る限り、それが正直なところかもしれません。もっともこの2つ、表裏一体というかトレードオフの関係にありまして、どちらも「じつはそうでもない」というのが、短いとは言えない経験を有する在宅ワーカーとしての印象です。

本当に好きに休んでいたら仕事にならないことは誰にでも分かりますから、「好きなときに休めていいですね!」は、要するに「自分のペースで休みをとれていいな」ということだろうと思います。

確かに、平日に銀行・医者・役所に行けますし、どこもかしこも混みまくりの日祝日に動く必要がないことは事実ですので、その点だけ見れば恵まれているかもしれません。

ただ、特にわたしのように金融・ビジネスといった短納期の案件が多い仕事をしている場合、仕事を逃したくなければ、平日は基本的に待機せざるを得ません。そして金曜日の夕方に依頼が入って、クライアントさんや翻訳会社さんが休んでいる間にお仕事…ということも(非常に)多いです。よって、休んでいるのかいないのか、よく分からない状態がひたすら続きます。長期休暇を取ることはじつに簡単ですけれど(仕事を受けなければいいので)、なかなか勇気が出ない、というのが現実です。

1日だけを切り取ってみると、これまた想像とはちょっと違う・・かもしれません。

「もうあかん!眠い!休む!」と決心した瞬間に大の字になって寝られることは確かです。ごろごろ〜ん。

でもじつは、逆に「邪魔が入らなさ過ぎて、休むきっかけがつかめない」なんてこともあります。目のためにも体のためにも、本来ならもう少し定期的に休みをとるべきなのに、何時間もぶっ続けで働いてしまい、目が乾いて文字通り泣くに泣けなくて、ひどく後悔したり。体がかたまってしまってロボット歩きになったり。

幸い、なぜかわたしは肩凝りや腰痛にならない体質(?)のようで、その点は恵まれているのですが、知っている翻訳者さんで、腰が痛くてどうしようもなかったが、納期が迫っていたので、PCを高いところに置いて立ったまま仕事した…なんて、涙のちょちょぎれる話を聞いたことがあります。

一日に何回か、強制的にラジオ体操をさせられる会社がありますけれど、集団体操というスタイルの是非はともかく、あれはありなりに意味があるのだろうと思います。

わたしも何年か会社員をやりましたので分かるのですが、会社の場合、大勢で働いていますから、なんだかんだと作業を邪魔する出来事が発生します。隣の人に話しかけられる、給湯室で話し込む、上司に呼ばれる、会議に出席する、翻訳者がアポなしで突然やってきて対応せざるを得ない(スミマセン、わたしです)等々…。

会社の「会」の字はそもそも「人が集まる」ことを意味するわけで、仕事そのものが他者との関わりを大前提としている、ということでしょうか。在宅翻訳者が他者と関わる必要がないということはありませんけれど、すぐ横に生身の人間がいない以上、関わる「度合い」は当然ながら低くなります。(もちろん家族がいる時間を除きます)

人が関係しない「コピー」という行動ひとつとっても、会社では最低数メートルは歩かなければなりません。しかし在宅翻訳者はいちおう一国一城の主なので、こたつの周りにテレビのリモコンとマンガとミカンとティッシュとゴミ箱を集めるかのごとく、自分の周りに辞書・参考文献、PC、付属モニタ、外部デバイス、プリンタ、事務用品、電話、お茶、ティッシュ、爪切り、ゴミ箱、おやつ、なごみグッズ、音楽プレーヤー、孫の手、冷暖房器具等々がずらりと並んでおり、トイレに行くとき以外、基本的に立つ必要はありません。

したがって、訪問販売や宅配など、在宅ならではの邪魔が入らない限り、仕事を止めてくれるものがなく、延々、背中を丸め、画面に見入る時間が続きます。そしてはっと気がつくと、一日中、一言も発しないどころか、トイレ以外まったく立っていない、なんてこともあります。始業時間も終業時間もないので、文字通り朝から晩まで働けてしまいます。ですので、「いつでも休める」というよりは、むしろ「いつでも仕事ができてしまって」メリハリがつきません。こちらをむしろ「自己管理が難しい」と表現すべきなのかも、とさえ思います。

もちろん、逆にどうしても気が乗らないこともあります。叱ってくれる上司や、努力をじかに見守ってくれる同僚もいないので、その部分だけ見れば、モチベーションは上がらないように思えるかもしれません。実際、辞書を一回引いてはためいき、もひとつ引いては爪を切り、一文訳してはフィギュアの姿勢を変え、もひとつ訳してはイスをくるくる回して遊ぶ・・なんて日も、ないわけではありません。納期が緩いときだけですけどね。

しかし問題がひとつ。しかも特大の。そう。さぼればさぼっただけ、着実に仕事が遅れていきます。当たり前の話です。

したがって、これはほとんどの在宅ワーカーさんに賛成してもらえると思いますが、実際問題として、そうそうさぼれるものではありません。どれだけ仕事が山積みになっていようと、誰も手伝ってはくれませんから、納期に間に合わせるために結局、睡眠時間を大幅に削ってでも働くハメになり、自分が苦しいだけです。

報酬をいただいている以上、質が一定水準に満たない仕事を納めたり、納期に遅れたりすれば、それが仮にたったの一回だったとしても、信頼を失うかもしれません。その点、(個人)事業主の怖さかなと思います。いまこの瞬間の仕事で手を抜けば、明日から突然依頼がなくなるかもしれません。正社員さんでも解雇の恐怖は常にありますけれど、個人事業主は失業保険がありませんから、仕事を失う恐怖、明日から収入がなくなる恐怖を、常に肌でヒリヒリと感じている状態、とでも言いましょうか。

わ〜ん、こわい!!!

もちろん、ほとんど休みナシで目の回るような日々を送り、最終納品を済ませた翌日は、P

を立ち上げることなく、心ハレバレ自由を謳歌します。しかし、それも長くは続きません。どの会社からも何の連絡もない日々が続きますと、今度は不安がむくむくと頭をもたげます。「前回の案件で、とんでもないことをやってしまったのでは」「もう二度と声がかからないのでは」等々、被害妄想気味に。

まあ、これまでの経験から言って、依頼がたまたま同時に途切れたというだけで、別に心配するようなことはないのですけどね(いまのところは)。実際、「も、だめ。翻訳者廃業。」とぱたっと倒れた次の瞬間、複数の翻訳会社から大量の依頼が来る、そして再び怒濤の日々、なんてことも、往々にしてあります。

それでも、仕事のない日々が続けば不安は少しずつ膨らんでいきます。だから、仕事がいただけるだけでシアワセ。依頼があるうちが花。さぼるなんて恐ろしいこと、いまのわたしにはとてもとても……。その不安がすなわち、自己管理システムとして機能する、というわけ。

結局、好きなだけさぼりたいのなら、「納品が遅れても○○さんなら仕方ない」と言われるほどの大家になる以外、方法はないようです。先は長い……というか、んなこと絶対無理!!

earth39.JPGいまのところ真っ白な12月のカレンダー。今年も年末まで仕事がいただけているのか?? 不安と恐怖の日々です(ちょっとおおげさかしら)。

※付記。在宅ならではの「邪魔」といいますと、上記でも言いましたように、訪問販売や宅配を思いつきますが、田舎でもそれは同じです。ただ、当地(北陸地方某県ドドド田舎)に引っ越してきて驚いたのが、

1)魚の訪問販売。それを生業にしている人ではなくて、たまたま捕れすぎた?かなにかで、自分の車に積んで、各家庭を回っている…ということのようでした。ドアを開けたとたん、「魚いらん?」と言われて、面食らった覚えがあります。漁師のおっちゃんが、マージンなしで直接販売したかったのか?よく分かりませんが、いったい幾らで売ってくれるのか、それだけでも聞けばよかったです。

2)味噌の訪問販売。最初は怪しげな店じゃないかと警戒していたのですが、実際に食べてみるとたいへんおいしいので、やや高めながら、購入するようになりました。もう何年も、「蔵出し」の時期になると持ってきてくれます。

3)知らない子がトイレを借りに来た。見かけたことのない小学4年生くらいの男の子が突然、トイレを借りに来ました。せっぱ詰まった印象は受けませんでしたので、新しく建った公営住宅に興味津々で(この地域は自宅保有率が異常に高く、公営住宅は珍しい存在です)、なんとか家の中を見るための彼なりのアイデアだったのか分かりませんが、とにかく、知らない人の家にいきなり行って、しかもトイレを借りるというその発想に驚きました。ま、道で誰とすれ違ってもあいさつするよう教育されているらしい当地の小中学生にとっては(いまどき、それもすごくありません?)、それほど驚くようなことではないのかもしれませんが…。

earth40.JPG         このカード、使ってみたいなあ……。

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記事を書いた人

アース

田舎の翻訳者。外国留学・在留経験ナシ。都会生まれの都会育ちだが、現在はド田舎暮らしで、ネットのありがたさにすがって生きる日々。何でも楽しめる性格で、特に生き物と地球と宇宙が大好き。でも翻訳分野はなぜか金融・ビジネス(英語・西語)。宇宙旅行の資金を貯めるため、仕事の効率化(と単価アップ?!)を模索中。

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