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田舎のあるある話

アース

通訳・翻訳者リレーブログ

「辞書を編む」の第4回にしようかなぁと考えつつ、またもやさぼりまして、先月の「田舎のないない話」に引き続き、きょうは北陸地方N町の「あるある話」をしてみようと思います。

先月も書いた通り、(すんごい)田舎に暮らすということがどういうことなのか、どんなに説明を尽くしても、なかなか分かってもらえるものではありません。最近は定年後の田舎暮らしを夢見る方も多いようで、本格的な定住前に「一週間体験」みたいなことも行われているようですが、一週間じゃ、いいことも悪いことも、なんもわかるまいよ、と思います。ま、それはどんな土地だって同じでしょうけれどね〜。

さてさて。

先月は、主に「○○がない」というお話をしましたので、今回はどの田舎でもありえそうな「ならでは」話を幾つかしようと思います。

●タクシーでスーパーへ

…と聞けば、なんて裕福なっ。と思うかもしれません。が、先月の記事を読んでいただいた方ならお分かりでしょう。N町には公共交通機関がほとんどありませんので、免許を返上したようなじーちゃん・ばーちゃんの場合は、タクシーを利用するしかありません。ですので、スーパーの前にはよくタクシーが停まっています。

スーパーまで誰かに乗せてきてもらったが、帰りはあてがない…みたいなときは、スーパーからタクシーを呼ぶことになります。そのとき店内にたまたま近所の人がいればいいのですが、なにしろN町内は広いですから(山手線内側の4倍)、なかなかそれも難しい。

以前は店内に公衆電話があり、その上に「○○タクシー 12-3456」みたいに電話番号を書いた紙が貼ってあったのですが、時代の流れか、いつのまにか公衆電話は撤去され。ケータイを使えないばーちゃんたちは普段どうしているのか分かりませんが、ときどき店員さんが呼んであげているのを見ることがあります。さすが。

「○○タクシーでええ?」
「ええよ〜おねがいね〜」

タクシーが来るまでしばらくかかりますから、ばーちゃんたちはレジのすぐ横に座って、おしゃべりをしながら待つことになります。タクシーが来ると、店の人が「○○さん、来たよ〜」と教えてくれます。さすが。

ついでに言うと、わたしがいつも行くこのスーパー、必ず袋詰めしてくれます。また、野菜がしなびているようなときは、レジの途中で店員さんがわざわざ変えに行ってくれたりします(自分で気がつきなさいよ)。しかし。

「このサバ、三枚にお願いします〜」
「えっとぉ〜、いまちょっと忙しいからやっとられんわ」
「はあ、じゃいいです」

と、『魚くらい自分でさばかんかい』というプレッシャーはあります。(ヒマそうなときはやってくれます)

●クリーニング屋さん=私設クローゼット

田舎でもさすがにクリーニング屋さんはあります。でもいわゆるチェーン店はありませんで、すべて個人営業のお店。

北陸ですので、冬物を出すのはだいたい5月下旬、夏物は9月末といったところです。

クリーニングって、普通はできあがるまでに長くても1週間とかでしたっけ? 田舎暮らしが長過ぎて、すっかり忘れてますが、このあたりのクリーニング屋さんは、そう簡単には渡してくれない。いつ行っても「ああ〜あれまだなんですよ〜すみません〜」と言われるばかり。例えば5月末に預けて、6月が7月になり、8月になった頃には、もういいや、冬になったら返してくれれば、という気持ちになります。

実際には家に置いておくよりは湿気も少ないでしょうし、こっちにしてみれば、かえってありがたいくらい。最近はもう、預けるときに「冬前にできればいいです」「夏前にできればいいです」と言うのがお決まりに。

クリーニング屋さんの名誉のために言っておくと、クリーニングせずにほったらかし、というのではなくて、完全に仕上がっているもののビニールをかけていない、奥にあって今すぐに出せない、という程度のことで、渡してくれません。家に持って帰るだけなんだから、いちいち包装してくれなくてもぜんぜん構わないのですが、お店の人にとっては、許されない行為らしい。それから、お願いすれば(未包装のまま、恐縮しながら)返してくれますので、喪服などは大丈夫です。

理由はどうあれ、私設クローゼット、ありがたいです。

●ホーム(タウン)ビデオ

これは都会のケーブルテレビでも案外あるのではないかと思うのですが、N町でも、選挙が行われるたびに、開票の模様が生中継されます。そんなもん見てもしょうがないので、ちらっとしか見たことはありませんが、最後の一票が集計されるまで、ずっと中継しているようです。不正を防ぐという意味はあるかもしれません。

同じように、町議会もすべて中継され、繰り返し放送されます。まあ、中学校の修学旅行の密着取材や、町民運動会や、N町芸能発表会の様子が、ほぼカットなしのホームビデオ状態で延々流されるよりは、ずっと意味があると思われます。

ところで先回の町議会議員選挙の場合、投票率は都会とは比べ物にならない79%。前は90%近いこともありましたから、これでもずいぶん低くなりました。トップ当選の人の得票数は約1,000票。最下位は約650票。最も少なかった人は約250票。う〜ん、高校の生徒会並みかも…。

修学旅行や町民運動会や芸能発表会の様子も放送されるのかって?されます。これをずっと見ている人がいるのかどうかは、ナゾです。

earth73.JPG「芸能発表会」の中継。コメントは…差し控えます。

●コイン精米

コインランドリーならぬ、コイン精米。これも案外、都会にもあるのではと想像しますが、少なくともわたしはこの地に来るまで知らなかったので、一応ご紹介を。

earth74.JPG自前の田んぼで収穫したコメ、人からもらった玄米を精米するときに利用できるのが、この無人精米所です。そんなに使う人がいるのかな?と思いますけれど、かなりの頻度で車が停まっているのを見かけます。

earth75.JPG先日、初めて中に入ってみました。扉を開けたとたん、もわっとお米の匂いが!! 説明を見ると、白米(分づき米)のほか、おもちまでできるみたいです。どうでもいいけど、このチープなキャラがたまりませんわ。

●おすそわけ

田舎のことですので、ご想像の通り、ご近所からのおすそ分けは多いです。

大根やニンジン、イモ、白菜などの常識的な野菜(?)から、フキなどの山菜、ミョウガ、さらにはシイタケやタケノコ等々。はっきり言って常識外れと言ってもいいような量をいただくこともあります。

シイタケはもちろん、「自分ちの山」で採れたもの。流通に乗せることのできない巨大サイズのものをいただきます。これが、うまい。うますぎる。写真がなくて残念ですが、カサの大きさは10センチくらいあるかも。しかもぶあつくて、厚みは2センチくらいあるかもしれません。採りたてですので、軸の部分までおいしく食べられます。

な、なーんと、マツタケをもらったこともあります。それも超巨大な。ただ、調理し慣れていないためか、感動的な料理に仕上げることができず、これならシイタケのほうがいいや、と思ったことを覚えています。ああ、売ればよかった(セコい)。

そして、何といっても驚くのが「魚」のおすそわけ。野菜でも大量にもらえば処理に困るのに、すでに献立も決まった6時頃に生魚をおすそ分けされても〜!!!と、思うかもしれませんが、みんな、なんだかんだ喜んで受け取ります。

このあたりはイカ漁が盛んなので、たまにイカもいただきます。一度、わたしが買い物から帰ってきたら、ドアノブに大量のイカが入った袋がぶら下げられていて、たまげたことがありました。後で聞いたら、「他にも寄るところがあったので、置いといた」とのことでした。怪しすぎでしょ!!

earth76.JPGつい先日は、こんなのもらっちゃいました。サンマ大のカマス、実に13匹。漁師さんでなく、趣味で釣りをしている人が大量に釣ったものの「ごく一部」ということらしいです(おすそわけのおすそわけなので、はっきりしない)。しかし我が家だけで13匹も消費することは難しいので、ご近所の2軒に持っていったところ、喜んで受け取ってくれました。「朝獲れ」どころか「午後獲れ」ですので、新鮮も新鮮、ぴっちぴちのむっちむちでした。

おすそわけではありませんが、都会のオフィスに置き菓子屋さんがやって来るように、このあたりの会社等には魚屋さんが現れることがあります。わたしのオットのあきらくんが務める某地方公共天文台/プラネタリウムにも、ときどき来るらしいです。

earth77.JPGこんな感じ。あきらくんからはときどき、カエルメールならぬ「アジの干物買った」みたいな一行メールが。少ないこづかいで何をしているのでしょうか、この人は。

●持家

過疎化が恐ろしいほどのスピードで進むN町では、我が家のように、外部から町内に移り住む人は極めて少なく、もともと地元で生まれ育った人が大部分を占めますので、ほとんどの世帯は「持家」に住んでいます。

賃貸物件は、公営団地や官舎が中心で、銀行員、郵便局員、警官、医師、教師など、他地域から一時的に移り住んでいる人だけがそういった物件を利用します。ちなみに我が家も公営団地の住人です。家賃相場は…そうですね、現在の我が家と同じ広さ、同じ築年数で、東京都中央区の相場と比較したところ、5分の1と出ました。わはは。

民間アパートはあるのかもしれませんが、少なくともわたしは知らないので、持家の世帯数は見当がつきます。それを全世帯数で割った「持家率」は、わたしの推定で90%(全国平均は66%前後)。

仮に、外部から移り住もうという人が新しく家を建てたいと思っても、おそらくは土地を探すのが大変だろうと思います。田舎なんだから土地はいっぱいあるだろうって? もちろんそうですが、当然ながらどれも「誰かの土地」であって、わざわざ売ろうなんて酔狂な人はほとんどいません。売ろうとしても、買い手がいないからです。また、買い手がいないから、売ろうと思わない。いつ返してくれるかもわからないまったくの他人に貸す人もいない。つまり「不動産市場」がそもそも存在しない、というわけです。

それでも、どうしても売りたい場合、どうなるか。極端な買い手市場になることは想像がつくと思います。つまり大変いい物件が、格安で提供されます。

例えば何年か前に、こういう物件がありました。

earth78.JPG築9年の7LDK。土地付きリフォーム済み。駐車場は3台分。そのお値段は…なんと約1000万円!!!! ワケあり物件かっ、と勘ぐりたくなるようなお値段ですが、暗い過去は何にもございません。

この物件に関しては買い手がついたようですが、要するに、ここまで格安でないと引き合わないような不便な地…ということなのでしょう。単に交通機関やお店が少ないだけでなく、例えば図書館、博物館、美術館、映画館、遊園地などの公共施設がないに等しく、憲法に保障されているはずの「文化的な最低限度の生活」が送れていると言えるのかどうか、悩んでしまうレベルではあります。

ええと、過疎化についてまじめに語るつもりはなかったので、今回はこのくらいに。次回こそは辞書制作物語の続き…になるかもしれないし、ならないかもしれません。

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記事を書いた人

アース

田舎の翻訳者。外国留学・在留経験ナシ。都会生まれの都会育ちだが、現在はド田舎暮らしで、ネットのありがたさにすがって生きる日々。何でも楽しめる性格で、特に生き物と地球と宇宙が大好き。でも翻訳分野はなぜか金融・ビジネス(英語・西語)。宇宙旅行の資金を貯めるため、仕事の効率化(と単価アップ?!)を模索中。

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