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ロシアの対独戦勝記念日

さるるん@ロシア

通訳・翻訳者リレーブログ

5月9日は、ロシアの対独戦勝記念日。ロシアでは「大祖国戦争」と呼ばれる第二次世界大戦での戦勝65周年記念ということで、今年の祝典は盛大なものでした。

今年の祝典で特筆すべきは、米英仏ポーランドなどの兵士も軍事パレードに参加し、ロシア兵と一緒に行進したこと。「連合国」の勝利というイメージを喚起することで、ロシアが連合国の一員としてナチ・ドイツと戦い、ヨーロッパの解放に貢献したことを強調していました。

これは、インパクトが強かったです。言うまでもなく米英仏ポーランドと言えば、NATOを想起するわけで、NATOの東方拡大はロシアにとっては許しがたいことで、特にここ数年はポーランドに対ロシアとしか思えないミサイル防衛基地を置くという計画をめぐっての対立もあっただけに、言わばNATO軍がパレードに参加したことは驚きです。ロシア国民の中には当然NATOに反感を持つ者もいるわけで、5月1日のメーデーには、共産党などが率いるデモで「NATO軍をパレードに参加させるな」というスローガンも叫ばれていました。

ともあれ、ロシアにとっては、「大祖国戦争での勝利」は、ソ連崩壊後の新生ロシア国民をまとめるために大切なもの。その一方で、ここ数年、ロシアをとりまく国々、具体的にはバルト三国、ウクライナ、グルジアなどで「歴史の書き換え」が行われてきています。ソ連の戦勝記念碑を撤去し、ソ連よりもナチ・ドイツの方が良かったという世論喚起をする動きがあります。これは、ロシアには耐え難いこと。今回、連合国の戦勝記念を演出したのは、このような動きを牽制するものなのだろうと思います。

ドイツのメルケル首相も参加し、共に平和を祈念しました。ロシアと経済的な結びつきが一番強いのはドイツで、外交において最重要な相手です。常に主賓席というべき場所にいました。もうひとり常にメドベージェフ大統領の隣にいたのが中国の胡錦濤国家主席。ロシアの戦略的パートナーです。しかし、中国はこのV-E day (Victory in Europe Day)の当事者ではなく、中国が関与するのはV-J Day (Victory in Japan Day)なのではないかと思うと気が重くなり、祝典に先立ってプーチン首相と胡錦濤国家主席が会談で「歴史の書き換えは許さない」という共通見解を持ったと聞くと憂鬱になります(具体的にどういう見解だったのだろう?)。「連合国」を演出されると、日本は「枢軸国」「敗戦国」だったのだと改めて思うし、実際のところ「国連=連合国」であることにも疑問を感じたりします。

例年はただ浮かれているような戦勝記念日に日本人としては疑問でした。あまりに多すぎる犠牲者の数を思えば、そして勝利の後にソ連の人々を待っていた大粛正を思えば、喜べないのではないかと。今年は戦勝記念日に先立つ5月7日に、メドベージェフ大統領がイズベスチャ紙のインタビューで、かなり突っ込んだ話をしていたのが良かったです。

まず、スターリン批判が良かったと思います。確かにソ連を勝利に導いたリーダーで功績も多々あったけれど、その後、自国民に対して行った残虐行為は許しがたい、これが政府の公式見解だと発言したのです。ただし、スターリンの下で戦いスターリンを今も崇拝している国民も少なくないので、この見解は個人のスターリンへの考え方を何ら束縛するものではないとも言っています。これは、ものすごく意味のある発言だと思っています。

また、メドベージェフ大統領は、この戦勝は「スターリンの勝利ではなく、国民の勝利だ」とも強調しています。ソ連の戦死者は2,660万人で、うち兵士は8,668,400人。民間人の犠牲が非常に多いのです。その死因について調査していくとも言っています(戦場で死んだのか、戦傷がもとで死んだのか、収容所で死んだのか、飢餓によるものなのか等々)。これも大切なことだと思います。何かが見えてくるはずだと思うから。

戦勝記念日にあたり、いろいろ思うところがありすぎて書ききれません・・・。ただ、ロシアも日本も娘の祖国なので、両国とも娘が誇りを持てる国であってほしいと願っています。

夜10時から15分間続いた赤の広場周辺での花火は、ものすごくきれいでした。

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記事を書いた人

さるるん@ロシア

米系銀行勤務後、米国留学中にロシア人の夫と結婚。一児の母。我が子には日露バイリンガルになってほしいというのが夫婦の願い。そのために日本とロシアを数年おきに行き来することに。現在、ロシア在住、金融・ビジネス分野を中心としたフリーランス翻訳者(英語)。

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