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格闘風景

さるるん@ロシア

通訳・翻訳者リレーブログ

先週は、タフな翻訳案件(英日)と格闘しておりました。
某多国籍企業の取引先向け文書で、原文10,000ワード強、翻訳日数は正味5日(1日目午前〜6日目午前)。集中してやれば、それほど無理のない分量のはずだったのですが、苦戦しました。ちょっと振り返ってみます。

【1日目】
翻訳依頼を受け、まずは文書を読み込む。この業種については漠然とした知識しかないため、この文書の対象業務の全体像を知り、なじみのない専門用語がどんなサービスや技術を指しているのか理解するためリサーチ開始。これに予想以上に時間がかかる。

しかも、東京からモスクワに戻ってきて間もないため、時差ぼけで夕方にはすでに眠くなる。日本との時差は5時間。いつもならば仕事がはかどる時間帯の20時〜24時は、日本の真夜中にあたるので睡魔に襲われ仕事にならない。たえきれず22時すぎに就寝。1文字も訳せず。

【2日目】
時差ぼけのため朝4時半に目が覚める。進行スケジュール作成。こういうまとまった量の仕事のときはいつもそうだけれど、序盤はなかなか調子が出なくて、次第にスピードアップしていくので、初日の翻訳量は少なめで、最後は多めに設定。しかし、夕方にまた眠くなり始め、予定の枚数をこなせないまま睡魔に負ける。作業可能な時間が通常よりも恐ろしく短い・・・。こんな調子じゃ納期に間に合わないと焦り始める。

【3日目】
また5時前に目が覚める。終日PCに向かう。料理は手抜きで、朝昼兼用はたらこスパゲティ。日本で買ってきたS&Bの「生風味たらこ」使用。これ、ホントにおいしくて便利。小腹がすいたときには、おかき(秋田の「穂の恵 ぬれおかき」、激うま!)、チョコレート(ロッテ「ガーナ」、大好き)、夕食は市販の唐揚粉使用の鶏の唐揚・・・という具合に日本で買い込んできた食品が大活躍。コーヒーの大量摂取で睡魔を追い払い、時差ぼけ強制解消。

しかし、まだ全然挽回できていない。大丈夫なのか?

【4日目】
これまでの遅れを取り戻すべく、朝から深夜まで必死で作業。朝食も昼食も準備する余裕がなく、ひたすら日本で買い込んできた「かりんとう」を食べてしのぐ。お菓子と言うより、ひたすら黒砂糖のかたまりをかじっているような感じだと思いつつ、かりんとう一袋完食。夕食は、鶏手羽先の煮込み。鍋に、手羽先、にんにく(つぶす)、しょうが(薄切り)、長ネギの青い部分、醤油、みりん、酒、砂糖を投入し、ひたひたの水を入れて強火にかける。煮立ったら、あく取りシートをかぶせて、とろ火にして1時間放置。最後に白菜のざく切りを投入して柔らかくなったらできあがり。こんなに手抜きなのに、おいしい。煮込料理バンザイ!

かなり遅れは挽回してきたものの、道のりはきびしい。連日五月雨式に納品しているのだが、キリのいいところで切ると、実際に翻訳済みの部分よりも少ない量を納品することになるから、さぞやチェッカーさん、コーディネーターさんが気をもんでいることだろう、と思う。

【5日目】
この日の深夜、あと300ワードで終わる、というところまでたどり着く。しかし、明らかに脳の働きが鈍くなってきていたので、いったん睡眠を取ることにする。

【6日目】
残りの部分を訳し、全体を見直して11時すぎに納品。数時間後、コーディネーターさんからクライアント納品が完了したとの知らせを受け、ホッとした。

【びっくりしたこと】
今回の文書には、決して一般的な略語ではないのに、一度もフルの表記なしに略語だけ出てくるものがいくつかあった。インターネットで検索していたら、なんと私が取り組んでいる案件の当該のパラグラフが見つかった。どこかスペイン語圏の国に同じ文書を英語からスペイン語に訳している人がいて、翻訳関係の掲示板でこの略語が何か質問していたのだ。さすがに企業名の部分は***と伏せていたけれど。この人は別の箇所も1パラグラフ引用して質問していた。この文書、Confidentialの扱いなのに。こういうのって倫理的にどうなの?と思ってしまった。

以上、振り返ってみて思うのは、時差のある移動直後の自分の能力は割り引いて考えるべきだということ。教訓にします。それから、やはり翻訳はチームワークだと感じる場面が多々あり、お世話になった方々に感謝の気持ちでいっぱいです。

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記事を書いた人

さるるん@ロシア

米系銀行勤務後、米国留学中にロシア人の夫と結婚。一児の母。我が子には日露バイリンガルになってほしいというのが夫婦の願い。そのために日本とロシアを数年おきに行き来することに。現在、ロシア在住、金融・ビジネス分野を中心としたフリーランス翻訳者(英語)。

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