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デヴィッド・キャシディ:生まれて初めて好きになったひと

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通訳・翻訳者リレーブログ

ミュージシャン、特にデビューまもない相手にインタビューする時、冒頭で必ず振る質問があります:

“生まれて初めて夢中になったアーティストは?”
“生まれて初めて買ったアルバムは?”

それは、その人のバックグラウンドや、音楽ルーツを知る為に訊くことであり、その後のインタビューの持って行き方を決める上で、とても大事な質問なのです。

最近の若いアーティストの場合、その答えは、“5歳の頃に聴いたボン・ジョヴィ”であったり、“小学校低学年の頃に買ったラット”だったりで、その度に私は、軽い眩暈を感じています。
だって前者は、初来日公演から観ていて、当時の私はもう成人。そうして後者は、生まれて初めてインタビューした相手であり、当時の私はもう社会人。
時の流れを思いきり実感します。ジェネレーション・ギャップってヤツです。恐ろしや。

と、まぁ、それはさて置き、
では、私の“初めてのアーティスト、初めてのアルバム”は、なんだったかな? 時々思い巡らしてはいたのですが……

そんな中、先日アマゾンから、こんなメールが入ってきたのです:
“以前にシンシア・レノンの『JOHN』をチェックされた方に、このご案内をお送りしています”

紹介されていたのは:
『COULD IT BE FOREVER?: MY STORY』

そうしてその作者は:
デヴィッド・キャシディ。

あっ? おっ? え…え…え〜〜〜っ??
デ……デ……デヴィッド・キャシディ〜〜〜〜???!!!!!

その名を目にした途端、走馬灯がグリングリン大回転し始め、北極の町カルガリーでの小学校時代が、一気に蘇ってきたのです。

忘れもしない、テレビ番組『パートリッジ・ファミリー』の中の、キース・パートリッジ!
“私の”デヴィッド・キャシディ〜!
そう、まさに、私が生まれて初めて夢中になったミュージシャン、生まれて初めて買ったアルバムです。

クラスでは、大ヒットナンバー“I Think I Love You”のサビの部分を、みんなでよく大合唱していました。その当時、歌詞の意味を理解していたかどうか、いまとなってはナゾですが(ちなみにこれ、邦題は“悲しき初恋”だったそうな。先人達はよく考えたものです)。
そうしてランチ・タイムには、誰かの家に集まっては、番組にかぶりつき、話題はもっぱら、パートリッジ・ファミリー&キース・パートリッジ&デヴィッド・キャシディ。

その後、“パートリッジ・ファミリー全盛期”のカナダから、“パートリッジ・ファミリーなどまるで話題にもなっていない”日本に帰国。
その頃、この国の人気テレビ番組の主役は、ある人気お笑い集団。その彼等のやることといったら、もう! 頭をどつき合ったり、オナラをしたり、食べ物を口から吐いたり、家を壊したり…と、もう私の中では絶対にあり得ないこと、絶対に笑えないようなことばかり。
おまけに番組の翌日、学校での話題はこれ一色。

あぁ、不思議な国ニッポン!
そうして私は、遠い国からやって来た留学生、いや、地球という名の惑星に不時着してしまった、名も無き星から来た宇宙人の気分。

その“宇宙人気分”が強まるごとに、寝室に貼ってある“デヴィッド・キャシディ・ポスター”も、増えていったのであります。

即決注文した、この『COULD IT BE FOREVER?: MY STORY』は、その彼が綴った自伝。非常に興味深いものでした。

アイドル・スターだった当時の目まぐるしい日々や、ヤンチャなプライベート・ライフや、それから人気者であったが故の苦悩も、こと細かく描かれています。

例えば、
“ハワイの海岸で拾い集めた貝殻を使って、チョーカーを作って、それをしている写真が雑誌に載ったら、数日後のコンサートで、ファンの子達も同じようなものを付けていて、とにかく驚いた!”……と。
≪ゲッ! 私もそのひとりです。その白い貝殻のチョーカー(…に限りなく似たもの)を、そのハワイで購入し、しばらく付けていました≫

それから、
とても若く経験が浅く、自分にとって有利な“契約”や“権利”など、何ひとつ理解していなく、何も分からずにサインしてしまった書類もあり、その結果、数々の“関連グッズの売上”にも、当初はまるで関われず。それ以前に、“どういうグッズが出ているかも、把握できていなかった”……とも。
≪なにせ彼は、あのエルヴィス・プレスリーの後継アイドル。60年代後半—70年代前半、音楽業界のみならず、テレビや雑誌などの世界でも、断トツの人気を誇っていた人ですからね≫

その為に、
“例えば、パートリッジ・ファミリー・ランチボックスを持っている子を見るたび、思いはちょっと複雑だったりした”……と。
≪ゲッ! それ、何人もの友人が持っていました。私が愛用していたのは、スヌーピーの黄色いランチボックスでしたが…≫

本音も、ぽろり。
“自分のことを好いてくれているのか、アイドルとして人気の男のことが好きなのか、まるで分からなくて、精神的に辛かったこともあった”……と。
≪これは昔も今も変わらず。同じようなこと、こうした愚痴を、親しくなったミュージシャンから、何度聞いたことか…≫

“自分はアイドルにはなりたくはなかったのに、周囲の人々にアイドルに作り上げられてしまった”……とも。
≪現在こうしてこの世界で仕事をし、“色々と”見てきている身。今更その“仕組み”に驚くこともショックを受けることも、何もないのですが。でもこれ、“純粋なデヴィッド・キャシディ・ファン”だった当時に読んでいたら、たぶん思い切り泣いていたでしょう(笑)≫

と、まぁ、夢中で読みながら、小学校低学年当時に、いっきにタイムスリップ。とても不思議な感覚に陥ってしまった、でもちょっと素敵な数日間でした。

もしも、もしも……
日本でニュー・アルバムをリリースし、プロモ来日することがあったなら、その時には、ぜひ対面インタビューを実現させたいもの。
もちろん、“I Think I Love You”を大合唱していたことや、寝室のポスターをウットリ眺めていたことや、白い貝殻チョーカーを愛用していたことなど、大っぴらにせずに、いつものプロフェッショナル然とした態度で、クールにやり通しますので…。
あっ、でも、“生まれて初めて夢中になったアーティストは、デヴィッド・キャシディで、生まれて初めて買ったアルバムは、パートリッジ・ファミリーだった”……ということだけは、堂々と告白しても良いと思っています。そのお陰で、洋楽への扉が開き、その世界の音楽

色々と聴くようになり、いまこうしてその世界に棲めているようなものですからね、考えてみれば…。

あーー、その日が来るまで、私のpuppy loveは続くのでR。

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高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

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