ENGLISH LEARNING

第74回 激しい感情に襲われたときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

怒りや悲しみ。

そんな強い感情に襲われることがあります。

言ってみれば、雷のように、一瞬の衝動に貫かれるわけですが、そんなときになぜかとても美しく優しい詩を思い出してしまいます。

*****

Fragment: Thoughts Come And Go In Solitude
Percy Bysshe Shelley

My thoughts arise and fade in solitude,
The verse that would invest them melts away
Like moonlight in the heaven of spreading day:
How beautiful they were, how firm they stood,
Flecking the starry sky like woven pearl!

*****

思いはただひとり 浮かんで消えてゆく
パーシー・ビッシュ・シェリー

思いはただひとり 浮かんで消えてゆく
思いをこめた言の葉は 溶けてなくなる
夜明けの空から消える 月影のように
思いは美しく 思いは揺るぎなく
星空を綾なし瞬く 真珠のように!

*****

他人の言葉や行動に反応して、感情や思いは湧き上がりますが、それは自分の心や頭に思い浮かんでいるだけ。in solitude「ひとりで」じっと考えていると、怒りは増幅し、悲しみは大きく膨らむばかり。

負の感情であれ、美しい感情であれ、自分の心を襲ったその感情を人に伝えようと、わたしたちは言葉をたぐり寄せます。

思いに寄り添い言葉を選び、invest「手間暇をかけて」思いを伝えようとします。しかし、少し時間がたつと、また別の思いにとらわれる。

夜の闇と昼の光が、交互に繰り返されるように、泣いたり怒ったりしているかと思えば、今度はもう笑い転げている。

そんな感情のひとつひとつは確かに自分が感じたもの。だから、やがて消えてしまう思いだとしても、how firm they stood「揺るぎない」もの。

*****

そう考えると、それがどんなに激しく、暗いものであっても、Flecking the starry sky like woven pearl!「星空を綾なし瞬く 真珠のように!」思いは美しいと考えられる気がしてきます。

喜びも悲しみも幸せも怒りも、どんな感情も、すべては夜空を彩る星々のように多様なもので、自分の心という空を美しくしているのだと。

*****

今回の訳のポイント

浮かんでは消える思いを、この詩ではfadeやmelt awayと言葉を使い分けています。違う言葉なのだから、ただ「消える」とはせずに、日本語にしたいところです。

fadeは、一瞬で「消える」のでなく徐々に「消えてゆく」ものですし、meltは「溶ける」は、melt awayでは「溶けてなくなる」イメージと言えます。

悲しみや怒りの感情に襲われても、Time is a healer.「時が癒してくれる」と言われます。

さまざまな感情と思いを経験しながらも、その思いが時間とともに和らいだときに、ふと「そう言えば、こんなこともあったな」と美しい思い出として、真珠が連なるように並ぶ星、つまり星座のように、輝くのだと言えるかもしれません。

そう考えると、一回一回の怒りや悲しみには辟易としつつも、心という空にいろいろな星座が増えていくのはも悪くないなと思えてきます。

 

【英語力をアップさせたい方!無料カウンセリング実施中】
これまで1700社以上のグローバル企業に通訳・翻訳・英語教育といった語学サービスを提供してきた経験から開発した、1ヶ月の超短期集中ビジネス英語プログラム『One Month Program』
カウンセリングからレッスンまですべてオンラインで行います。
One Month Program

Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

END