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第198回 仕事がうまくいかなかったときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

仕事は、常に順風満帆というわけにはいきません。

仕事という道で、つまづいたり転んだりしながら生きる日々。

うまくいかないことがあっても、また新たな一日をがんばりたい。そんなときに思い出す詩があります。

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Parting at Morning
Robert Browning

Round the cape of a sudden came the sea,
And the sun looked over the mountain’s rim:
And straight was a path of gold for him,
And the need of a world of men for me.

*****

朝の別れ
ロバート・ブラウニング

岬を越えると 目の前に海がぱっと開けた
山の端から太陽が顔をのぞかせていた
太陽の前には 黄金に輝く一筋の道が伸びる
ぼくの前には ひとの世が待ち構えている

*****

どうですか!この朝の太陽のエネルギーは!

暗い中とぼとぼ歩いていき、岬を回り込んだその先に、朝日にきらめく海が広がっていた。

昇ってから沈むまでの一日が太陽にあるのなら、僕には生きていく世の中があるんだ!という、決意がみなぎっていますよね。

Round the cape of a sudden came the sea,
And the sun looked over the mountain’s rim:
岬を越えると 目の前に海がぱっと開けた
山の端から太陽が顔をのぞかせていた

仕事やアイディアのブレイクスルーを求めて、私たちは黙々と岬の突端を目指して歩くわけですが、それはすぐ見えてくるかもしれないし、思ったよりも時間がかかるかもしれないものです。

黙々と手と足と頭を働かせて前に進むうちに、気づいたら明るい海に出るものなのかもしれません。

And straight was a path of gold for him,
太陽の前には 黄金に輝く一筋の道が伸びる

太陽は、毎朝空に昇っては夜に沈んでいく。太陽だって、好き好んで毎日そうしてるわけでなく、宇宙の仕組みがそうさせてるだけなのですが。

それと同じように、人も、朝起きて、昼間は働き、夜になれば寝る、というサイクルを繰り返します。人間だって、実際はそのサイクルに合わない暮らしをする場合もあるわけだし、汗水流して働くよりも悠々自適の暮らしができたら、そりゃ楽だと思うわけですが。

And the need of a world of men for me
ぼくの前には ひとの世が待ち構えている

で、どんなにうまくいかないことがあっても、なぜか心と身体が勝手に動いてくれるときって、「ひとの世が待ち構えている」って実感するときなんですよね。

自分という存在を越えた先にいる人たち。狭い意味では家族、広い意味では社会。そこに生きる人たちに、自分の仕事がつながっていると思えたら、もうひと踏ん張りしてがんばろうと思える。

たった4行の詩なのに、朝日のように爽やかに心を照らしてくる気がしませんか。

*****

今回の訳のポイント

この詩の最大のポイントは、最後の決めゼリフです。

And the need of a world of men for me
ぼくの前には ひとの世が待ち構えている

ひとつ前の太陽を描写した行と対になっていて、太陽には金色の道が、僕にはひとの世が、というのがかっこいいですよね。

実は、この詩には定番の読み解き方があるんです。

ここまで、仕事と関連づけて読み解いてみましたが、ちゃんとタイトルを見てください。

Parting at Morning
朝の別れ

これって、単に、恋人と夜を過ごして朝帰るってだけの話じゃないかい!

それで考えると、最後の行も「俺にはもっと大切なことが世の中にあるんだ!」という、やや身勝手な男臭さがプンプンしてきます。

せっかくいい感じの解釈をしてきたのに、下世話な結論になり、ごめんなさい!

でも、詩人がとかく孤独で陰鬱な雰囲気になりがちなのに対して、このブラウニングという詩人は、こういうあっけらかんとして楽天的なところが、魅力だったりするんです。

繊細で複雑な感情を持ち、ちょっと影のある男と、真っすぐであっけらかんとしていて、ちょっとお調子者の男。これはこれで長い議論になりそうです。

 

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Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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