INTERPRETATION

第64回 保険用語 第4弾

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。先月から保険をテーマに用語を取り上げてきたところ、英The Economist誌(9月24日号)に興味深い記事があったので、紹介します。

見出しは以下のようになっています。

Autonomous car insurance

Look, no claims!

Self-driving cars are set radically to change motor insurance.

自動運転車の技術がどんどん進化していることは、ここ数年大きなニュースになっていますが、その進化のスピードはこれまでの予想を超えており、技術的にはもう人間が運転するよりも安全性が高まった(事故率が低い)と考えられているそうです。

自動運転車が普及すると社会にどんな変化がもたらされるか、色々と議論されていますが、保険業界に大きな影響が及ぶとはこの記事を読むまで気が付きませんでした。

ではこの記事の関連用語について説明します。

autonomous/self-driving/driverless car: 自動運転車

人間が運転操作をしなくても自動で走行するクルマ。日本語では「自動運転車」という言葉で定着しているようですが、英語では上記の3つの表現に加え、carの代わりにvehicle が使われたり、van/taxi/train/truckなど具体的に表したりします。

claim:保険金支払い請求

第61回で、「保険請求をする」というときに動詞はclaimを使うことを取り上げましたが、claimには名詞用法もあり、no claimsだと「保険金の支払い請求なし」という意味になります。

car/ motor insurance: 自動車保険

先進国では運転手は事故を起こした時のために保険に入ることが義務づけられています。自動車保険といってもどこまで補償されているかでいくつかのレベルに分かれますが、義務付けられている保険はcompulsory insurance(強制保険)。日本では「自賠責」という言葉で知られますが、フルネームは「自動車損害賠償責任保険 (compulsory automobile liability insurance, CALI)」。

Liability will move from private car-owners towards manufacturers for crashes

(事故の際の法的責任が車を所有する個人からメーカーに移行する)

自動運転車が一般道で走行できるような法的整備が早急に求められている中で、一番の議論の中心は、事故の際に誰が責任を負うのか、という点。ドライバーからメーカーに法的責任が移行するのが当然と考えられますが、メーカーは部品サプライヤーに責任転嫁をする可能性もあり、簡単に答えが出る問題ではなさそうです。

損害に対する支払い義務などの「法的責任」はliability。「Aさんは~に法的責任がある」というときは形容詞のliableを用いて “A is liable for ~”。

以上、お役に立てば幸いです。

自動運転車が普及すると事故が激減し、保険の請求も大幅に減る→保険業界に大打撃、なんて言われてみれば、なるほどなー、と思いました。

クルマと言えば、若い時からクルマ好きで最近までスポーツカーを乗り回していた実父が緑内障悪化のためついに運転ができなくなるそうです。ボタン1つ押せば、driverless carがお迎えに来て、どこへでも連れて行ってくる時代が一刻も早く訪れると田舎に住む両親にとって便利になるだろうなー、と早急な法整備と技術の発展を願っています。

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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