INTERPRETATION

第29回 自然体で通訳を楽しむ

原不二子

Training Global Communicators

1912年に日本から米国へ桜が贈られて100年を迎える今年、ワシントンで開催される百年祭に招かれたため、普段であれば私が通訳する仕事を若い通訳者にお願いすることになりました。

いつも原稿を用意されない方の通訳ですので、今回話されるであろうトピックのリストをその通訳者に伝え、一緒に

「Good luck. Be natural, have no fear, and enjoy the opportunity. It is an honor.」

とのメッセージを送ったところ、案件終了後に次のようなメールが届きました。

「前日に原先生から頂いたメッセージにもっとも救われたかと思います。プレッシャーの大きな現場ですと、ついつい自然体で通訳を楽しむという精神状態を忘れてしまいがちで、そんな時に限ってパフォーマンスが伴わなくなるものですから、本当にありがたいアドバイスを絶妙のタイミングでいただきました。今回は準備段階で話者の著書を読むことによって、今まで自分としてはまったく持っていなかった視点を学ぶことができましたし、このような貴重な機会を与えてくださったことに感謝するばかりです。」

「自然体で楽しんで通訳をする」ことで、話者ともより良いコミュニケーションが図れ、嬉しい結果につながったのだと思います。

原 不二子

Written by

記事を書いた人

原不二子

上智大学外国語学部国際関係史研究科博士課程修了。 祖父は「憲政の父」と呼ばれた尾崎行雄、母は「難民を助ける会」会長の相馬雪香。母の薫陶により幼い頃からバイリンガルで育ち、21歳の時MRAスイス大会で同時通訳デビュー。G7サミット、アフガニスタン復興会議、世界水フォーラムなど数多くの国際会議を担当。AIIC(国際会議通訳者協会)認定通訳者で、スイスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、ILO総会の通訳を務め、最近では、名古屋における生物多様性(COP/MOP)会議、APEC女性リーダー会議、アジア太平洋諸国参謀総長会議、ユニバーサル・デザイン(IAUD)会議、野村生涯教育センター国際フォーラム等の通訳を務めている。

END