INTERPRETATION

第49回 ポイントは「細分化」

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

通訳という仕事柄、よく周りから「仕事に子育てにと毎日忙しいでしょう?」と言われます。確かに今年ももう12月に入ってしまったと思うあたり、毎日があっという間であるのは事実です。ただ、何でも滞りなくテキパキこなしているかといえば、決してそうではありません。私も人間ですので、「面倒くさいなあ」「何とかさぼれないかなあ」と思うことはよくあります。特に「やらされ感」で取り組んでいることとなればなおさらです。けれども私が尊敬する「森のイスキア」の佐藤初女先生が、齢90歳にして「面倒くさいという言葉は使わないようにしている」と御著書でおっしゃっているのを読み、私も「面倒くさい」という言葉はなるべく口に出さないよう心がけているつもりです。

そのような中、私なりに工夫している部分はあります。それは「すべてを細分化する」という作業です。具体的には、1つの課題に対してそれを達成するためにやるべきことをどれだけ細かく分けて行えるかを考えるのです。3つほど例を挙げてみましょう。

1.料理
以前のこのコラムでも書きましたが、私は結婚・出産までとにかく料理が大の苦手でした。私の栄養知識や食事バランスなどについては、新婚時代に夫がよくあきれていたものです。けれども子どもが二人になり、仕事もあわただしくなってきたため、いつまでも「苦手だし~、できないし~」との言い訳は続けられなくなりました。最近は以下のようにして取り組んでいます:
*献立は向こう一週間分をあらかじめ考え、レシピを集める
*レシピを見ながら必要な食材をリストアップする
*調理日の二日前には食材をそろえておく
*重い食材(お米、牛乳、瓶モノなど)は自転車や車で出かける日に調達

次は具体的な調理方法です。
(1)朝食前: その日のレシピを見ながら、食材を冷蔵庫から出して洗う
(2)朝食後: 食材を切って冷蔵庫へ
(3)通勤前: 鍋、ヘラ、調味料一式をコンロの上に出しておく
(4)帰宅後: 冷蔵庫の中の食材を取り出し、一気に調理

以前は「食材そろえて、出して、切って、調理器具出して、わあ大変!」とイヤイヤ感丸出しでやっていたのですが、上記のように変えたところ、ストレスを感じずに調理ができるようになりました。

2.掃除
こちらもやはり細分化です。たとえば日中、在宅で仕事をしている日は以下のようにしています。
(1)朝食後: 掃除機を出しておく
(2)原稿書きで煮詰まったら: 床の上の物を片付ける
(3)数十分後、気分転換に: 一気に掃除機をかける

私にとっては、PC画面から離れることで大いに気分もリフレッシュしますし、ドライアイ予防にもなっています。

3.フランス語独学
数年前から私は「公文式」でフランス語の通信講座を受講中です。プリントをためないように以下のような手順を踏んでいます。
(1)寝る前: 机の上に辞書、プリント、筆記用具を出しておく
(2)起床後: 30分間タイマーをかけて取り組む
(3)終了後: メールチェック、ブログアップ

実は以前、起床後すぐにメール作業をしていたのですが、そうするとついダラダラとネットサーフィンになってしまい、貴重な早朝時間が失われていたのです。「公文を終了したら、メールチェックはごほうび」と位置付けることで、「頑張って早く終わらせよう!」という気持ちになっています。

まだまだ私自身、苦手に思う作業はあります。けれどもなるべくこうして細分化することで、少しでも「取り掛かりやすい環境」を作っていきたいと思っています。

(2011年12月5日)

【今週の一冊】

「電車の顔」鈴木さちこ、鉄道ジャーナル社、2011年

著者の鈴木さちこさんはCMプランナーを経て現在はイラストレーター。国内線機内誌の連載などでも活躍している。本書は特急電車や在来線などの車両を真正面からとらえたイラスト集。私たちが毎日何気なく乗っている電車も、改めて見てみると「こんな人間っぽい顔だったんだ!」ということに気付く。

たとえば「りんかい線」はゴーグルをかけた海の生き物のよう。その一方で、カモノハシみたいな新幹線車両もある。写真で見ても同じ表情だけれど、やはり鈴木さんのほのぼのイラストで見ると、いかに鈴木さん自身が鉄道を愛し、車両の表情に着眼しているかがわかる。

印象的だったのが、後半のエッセイ。鈴木さんは車内でやることがなくなると、ひたすら路線図を見ているのだそうだ。「乗り換えを研究したり、デザインや駅名を吟味したりしていると、時間があっという間に過ぎてしまいます」とのこと。実は私自身、同時通訳の仕事の後などは同様のことをしている。「この駅名、訳したらどうなるかな?」「あ、この路線は『原』がつく駅名が多い」など、自分なりの小さな発見をしては楽しく過ごしている。

音楽プレーヤーやスマートフォンも楽しいのだと思う。でもこうしたアナログの世界が私にとっては実に心地よい。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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