INTERPRETATION

第405回 まずは師匠探し

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

放送通訳で私が携わる番組の一つにCBS Evening Newsがあります。つい最近までアンカーを務めていたのはJeff Glorさん。今はイブニング・ニュースを離れてCBS This Morning Saturdayを担当しています。日本ではこの番組が見られず、ファンの私にとっては残念なのですが、それでもネットには専用のページがあります。アメリカも日本と同じく土曜朝専門の番組があるのですよね。
https://www.cbsnews.com/cbs-this-morning/saturday/
HPを見るとEvening Newsよりも「情報バラエティ番組」という印象を受けます。

さて、そのJeff Glor氏の奥様はフィットネスインストラクターのNikki Glorさんです。You Tubeにも専門ページを持っています。
https://www.youtube.com/user/NikkiFitness

こちらを視聴すると、様々なヒントを得られます。たとえば赤ちゃんと一緒にスクワットをしたり、公園では遊具を使って二の腕を鍛えたりという具合です。「いつでもどこでも」フィットネスに結び付けて体を動かすための工夫をしているのがわかります。

この「いつでもどこでも」というキーワード。私にとっての通訳学習も同じです。商品パッケージを見ては英訳を考えますし、街中で聞こえてくる人々の会話や自動音声なども訳出することがあります。

そう考えると運動も勉強も、要はそもそも「いつでもどこでも」できるものなのでしょうね。「ジムでなければできない」「〇〇テキストでないとダメ」というのは、ややもすると「やらないための言い訳」になりかねません。

そして何よりも大切なこと。それは、その活動自体をエンジョイできるかどうかです。「楽しくて楽しくて仕方ない」「勝手に体が動いてしまう」というのが理想です。

以前、ビジネス書を読んでいた際、「学ぶ上で大事なのは先生との相性」とありました。つまり、自分にとってインスピレーションを与えてくれる先生と出会えるかどうかが大事ということになります。

そのような先生を見つける。
先生を通じてその分野を好きになる。

運動であれば憧れたくなるようなインストラクターを。
勉強であれば、自分も学びたくなるような先生を。

自分にとっての「師匠」を見つけられれば、いつでもどこでもその活動ができるようになると私は思っています。ぜひみなさんも、良き師匠とのめぐり逢いをめざしてくださいね。

(2019年7月23日)

【今週の一冊】

「心に届く話し方 65のルール」松本和也著、ダイヤモンド社、2017年

通訳者になってから自分なりに試行錯誤してきたことがあります。たとえばメモの取り方、リテンションの強化、知識力アップのための読書などです。そしてもう一つ、自力で工夫をしたのが「話し方」でした。聴衆にとってわかりやすいイントネーションや間(ま)の取り方など、かつて私が通っていた通訳スクールでは特に指導が無かったからです。

通訳の勉強をしていると、ついつい「どれだけ単語を拾えて訳せたか」に焦点が当てられてしまいます。けれども、話し手の内容を理解していただくのはお客様です。そう考えると、通訳者が自らの話し方を向上させるのも業務の一つであると私は考えます。

本書の著者は元NHKアナウンサー。「英語でしゃべらナイト」の司会で有名になった、あの松本アナウンサーです。本書は6章から成り立っており、目次を見るだけでも「話し方」の世界は実に奥が深いのだと思わされます。

中でも私が改めてなるほどと感じたのは、「一文は5秒以内」「どんなに嫌でも録音する」という部分でした。また、自分が気持ちよく話し続けていたとしても、聴衆が同感であるとは限らないという内容にも納得がいきました。聴き手が取り残されてしまっては理解に結び付きませんよね。

ビジネスパーソンがおそらくターゲットと思える本書ですが、通訳者にとってもたくさんの発見がある一冊です。

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柴原早苗

放送通訳者。獨協大学非常勤講師。 上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。 ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。 NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。 ESAC(イーザック)英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。 通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。 著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。

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