INTERPRETATION

第611回 19時以降の過ごし方

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

あっという間に今年もあとわずかになりましたね。私は大学入学直後にサークルの先輩から、

「高校時代があっという間に終わったと思ってるでしょ?でも大学なんて2年生以降になると本当に瞬く間に過ぎていくよ」

と言われたことがあります。入学ホヤホヤの私にしてみれば、「そうかなあ?」という感じでしたが、本当にその通り。大学生活後半は息つく暇もないほどでしたし、社会人になってから今に至るまでなど「一瞬」です。人の一生というのは老いも死も万人平等に与えられるもの。ならば有意義に自ら工夫して生きていくに限る、と最近しみじみ思います。

さて、ここ2週間ほど、私はとある試みをしています。それは、
「夜7時以降、スマホに触らない」
というマイルールの徹底です。

実は教え子の学生さんが、最近そのような生活を始めてみて多くの時間が手に入った、と報告してくれたのですね。また、私の友人も「電車の中ではもっぱら紙の本を読む」と先日言っていました。それに私も刺激されて、取り組み始めてみたのです。

それまでの私はと言えば、かなりのスマホユーザー。別に使いこなせているわけではないのですが、メールやLINEが気になり、自宅でも移動中でもつい手にしていました。さりとて、フリック入力はとてつもなく遅いタイプ。よって、メールを開いたところで返信するには非常に時間がかかるので、結局、メール本文を読んでも帰宅してから返信していました。出先でメールを読み、頭の中で返事を考えてはいるのですが、数時間後に帰宅すれば結局再読して、内容を考えて、を繰り返すことになります。かなりの二度手間です。

LINEも手軽なコミュニケーションツールとしてはとても便利です。が、私のような人生後半戦街道まっしぐらの人間でさえ、やはり既読の有無は気になってしまいます。返信はまだかまだかと期待することもあります。そうした無意識の期待が時と場合によっては気分の乱高下につながりかねないのですね。ついこの間までの私はこの心理的側面に消耗していたのでした。

19時以降にスマホと距離をとってからは、多くの恩恵が生まれています。やはり大量の時間が与えられたことは大きいですね。夕食後から就寝までの数時間は読書や溜めておいた録画の視聴、日記を書いたり考え事をしたりしています。おかげで積読状態が解消されましたし、他者に左右されない時間帯ですので、自分のペースを取り戻せるかけがえのないひとときとなっています。

離れて暮らす家族や友人には「19時以降はLINEをやらないから、急ぎのときは遠慮なく電話してね」と伝えてあります。これで私の場合、十分対応できています。

振り返ってみると、ここ数年、ずいぶんLINEに振り回されてきました。テクノロジーは心の健全化に役立てるように使いたいなと思います。私のようにくたくたになる人が一人でも減りますように。

(2023年11月28日)

【今週の一冊】

「健康食品・サプリメントを科学する」金沢和樹、コープ出版、2010年

私よりはるかに年上なのに、とても生き生きしておられる方がいます。健康の秘訣を尋ねると、かなりのサプリメントのお世話になっているのだとか。ビタミンやダイエットなど広範囲にわたって摂取していると語っていました。

私も一時期サプリを定期購入していたことがあります。体重を整える系のものです。確かに数字は落ちました。ただ、そのサプリ「だけ」のおかげなのか、サプリを飲み始めたことにより私自身が食生活を意識するようになったのかは不明。数カ月続けてみたのですが、毎月の料金が決してお手頃価格ではありません。そこで思い切って購入をやめましたが、幸い体重はキープできています。

そうした中、きちんとサプリについて改めて学ぼうと思って手に取ったのがこちらの一冊。サプリに含まれる栄養素について詳しい説明が出ています。巻末には索引もあるので、調べるにも便利です。文章もわかりやすく、初心者でも理解しやすくなっています。

著者によれば、たとえば「全く野菜をとっていない人」にはサプリも効果があるとのこと。しかし、やはり大事なのは日ごろからバランスよく食生活を整えること。さらに、日本には日本独自の食生活があり、その恩恵をフルに享受した方が良い、とあります。たとえば日本には納豆や豆腐など大豆製品がたくさんあり、しかも安価。日本人のイソフラボン摂取率は世界でも突出して高く、それががんなどを防ぐ役目も果たしているのだそうです。

まずは一日30品目を目指して食生活を充実させること。そして野菜を多めにとること。これが一番のカギです。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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