INTERPRETATION

第286回 師走なので生活ノウハウを少々

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

ついこの間お正月を迎えたかと思いきや、早くも12月になりました。先日、大学で実施した単語テストでexponentially(急激に)という語が出てきましたが、私にとってはまさにtime goes exponentially fastです。

今回はみなさまの年末大掃除や時短にお役に立てればと思い、ちょっとした生活ノウハウをお伝えいたします。師走のこの時期、少しでも参考になれば幸いです。

1.思い切って大掃除はプロに頼む

掃除そのものは嫌いでないのですが、どうしても苦手項目があります。特にお風呂場のカビや水垢の除去です。長年暮らしていると、どうしてもこびりついてしまうのですね。力のある主人に頼んでも限界がありますので、思い切ってプロの掃除会社に依頼しました。今回はちょうどキャンペーン中で、お風呂場と台所の2か所でのセット料金。半日かけてせっせと汚れを落として下さり、おかげで見違えるようにきれいになりました。今後、汚れを付けないようこまめに掃除をしていけば、これが維持できそうです。お金を払うことで「時間」と「ストレスフリー」を得られましたので、これは費用対効果大です。

2.年賀状やクリスマスカードの工程リストを作成しておく

年賀状やクリスマスカードの送付は、毎年そのほとんどが同じ工程を踏みます。写真つき年賀状であれば「写真を選ぶ」「文面とデザインを考える」「発注枚数を決める」「写真店に注文する」という具合です。私はPCの中に色々な家事や手続きの「仕組みリスト」を作っています。「年賀状仕組みリスト」には時系列にやるべきことをチェックボックス付きで表示しているのです。たとえば「11月1日」の横には「写真選定」「枚数決定」という具合。「11月5日」には「写真店に行き注文する」、「12月1日」のところは「クリスマスカード送付開始」などと記しています。このようにして具体的な日付を書き、その日に取り組むべきことを書くことで、毎年繰り返し行う作業は機械的に実施できるようにしています。

3.「買いものしないデー」を設ける

冷蔵庫の中をこの時期になると少しずつ空にしていきます。冷凍庫や冷蔵庫の調味料の類など、今あるもので料理を工夫してみるのです。そうすることで徐々に空にしていけば、拭き掃除も楽になります。同様に缶詰や乾物類などもこの時期には積極的に使うようにします。防災の観点から最近はrolling stockという方法が注目されていますが、毎年9月の防災期間だけでなく、年末の大掃除にも使える方法だと私は感じています。

4.調味料をどんどん使い果たす

乾燥ハーブやスパイス類、粉類などは何かと余りがちになります。先日私はとある懸賞で各種調理用粉をプレゼントされました。ところが揚げ物をさほど作らない私にとって、大量の天ぷら粉に実は困ってしまったのですね。幸い我が家にはホームベーカリーがあり、二日に一回はパンを手作りしています。そこで強力粉に少し天ぷら粉を混ぜて作ってみたところ、ドイツ風パンのような少し硬めのものができました。ハーブやスパイスもこまめに入れることで、いつもとは違うパンが楽しめています。

5.「まだ使えるから」を断ち切る

毎日の生活を続けていると、自分たち家族にとっては色々なものが風景の一部と化してしまい、とりたてて違和感を覚えなくなってしまいます。たとえば「くたびれたタオル」や「茶渋のついたマグカップ」などがその一例です。「まだ使えるし」「ずっと愛用してきたから」という具合に、深く考えずに使い続けているのですね。けれども新年というのは気分を新たにする絶好の機会でもあります。昔の人たちはタオルや下着、服などを新年におろして使っていました。我が家もそろそろタオルを変えようと思っています。

6.「期限付きボックス」を作る

たとえば「すぐには捨てたくないけれど、あまり使わないもの」というものがあります。そうしたものを今の時期、私は一気に取り出して箱にまとめてしまっています。ポイントは、箱に入れたらそのままガムテープで封をしてしまうこと。そしてその上に「処分日」として1年後の日付を書きます。今後12か月間、一度も中身を開けなければそれらのアイテムは自分にとってもはや卒業を意味します。我が家ではそうしたボックスをそのままチャリティショップに寄贈しています。

7.「ポケットサーチデー」

これは勝手に私が命名したのですが、要はあらゆる「ポケット」の中を点検するということです。衣類のポケット、カバンのポケット、車の中のポケットなどなど、「モノを収納する小さなポケット」を今一度チェックしてみるのです。ゴミが入ったままであったり、今や不要になったチラシが突っ込まれたままだったりなど、探してみると結構片付きます。

8.家具の場所にマスキングテープを

よく小学校の教室には机の場所を決めるため床にビニールテープが貼られています。我が家ではダイニングテーブルの脚の位置にマスキングテープを貼ってみました。と言いますのも、腰かけたりぶつかったり、あるいは地震があったりした際にテーブルの位置も微妙にずれてしまうからです。同様にTV台の角の床にもテープを貼っています。

9.「縦の面」の掃除

意外と忘れがちなのが壁の掃除です。床は意識して掃除機掛けをしますが、壁にも結構ホコリがたまっているのですね。同様にPCスクリーンや電子辞書の画面もこの時期になると「縦のもの」を重点的に掃除するようにしています。

10.とにかくMax数を決める

保冷剤に割り箸、プラスチックスプーンやコップなど、「持っていればいつか役立つかも」というものが家の中にはあふれがちになります。私は「とにかく最大所有数」を決めて、それ以上になったらたとえもったいないと思っても処分するようにしています。そうでもしないと見境なく増えていってしまうからです。ちなみに保冷材は最大3個、アイスクリーム用のプラスチックスプーンなどは一切持たないと決めています。コンビニで渡された割り箸は市販のものと比べて多少脆弱なものもありますので、そうしたものは捨てる前に使ってから処分します。我が家の場合、超多忙でお皿洗いなどにまで時間を割けない日などに「今日は地球に(ゴメンナサイ)厳しいデー」を設け、余った割り箸や紙皿などを使い切るようにしています。

以上、10項目ほど並べてみました。何かひとつでも参考になることがあればうれしいです。

(2016年12月5日)

【今週の一冊】

「植民地朝鮮に生きる―韓国・民族問題研究所所蔵資料から」 水野直樹他編、岩波書店、2012年

指導している大学の授業で北朝鮮情勢を取り上げました。事前課題として学生たちには「北朝鮮」をキーワードに書籍や雑誌を読むように伝えておきました。私も学生たちと共に学び続けたいと思っていますので、学生たち同様、図書館へ出向いて本を探しました。その時見つけたのが今回ご紹介する一冊です。

本書は全編カラー写真から成り立っており、第二次世界大戦中、日本が北朝鮮や韓国でどのような支配をおこなっていたかが説明されています。私が中学高校時代の授業では、現代史に割く時間がさほどなく、いずれもさらっと取り上げておしまいだったと記憶しています。ゆえにきちんと知っておくべきことを知らないままになってしまいました。イギリスの大学院で学んでいたころ、同じ学生寮にはアジア各地の出身者がたくさんいたのですが、戦争の話になった際、きちんとした知識が無いまま話を進めていく自分を私は恥じたのでした。

以来、現在にいたるまで「過去の歴史を知ること」は私にとって大きな課題です。知らないこと自体が恥なのではなく、知らない「まま」にしておくことこそ良くないのだと今は痛感しています。ですので、学ぶ機会はすべてチャンスでもあるのです。

パラパラと本書をめくってみると、日韓併合に関する内容や抗日運動に関する資料が色々と出てきます。日本がどのように支配を進めていったかは当時の地図を見ると明らかです。日本の領土となっている部分がすべて真っ赤に塗られているからです。一方、当時の学校教育現場の様子も私にとっては衝撃的でした。植民地を含めて国を団結させるべく、いくつかのスローガンが教室には貼ってあることがわかります。日常生活における啓蒙ポスターも戦争一色です。

今回、「北朝鮮」をひとつのきっかけに本書を知り得たわけですが、こうして過去を振り返ってみると、そこには日常の生活があり、人々の人生があることがわかります。「戦争」とひとことで片づけてしまうのではなく、当時の人々に思いを馳せるということ、そしてそこから私たちが何を感じ、どういった教訓を得て、未来につなげていくかを考えること。

こうしたプロセスを私たち一人一人が考えるべきだと感じたのでした。

Written by

記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

END