INTERPRETATION

Vol.14 「自分から行動すること」

ハイキャリア編集部

通訳者インタビュー

【プロフィール】
木内裕也さん Yuya Kiuchi
幼少から英会話学校に学び、高校在学中に長野オリンピックボランティア通訳を経験。1999年、上智大学外国語学部英語学科入学と同時に学内の通訳クラスを受講、2001年より正式にフリーランス通訳者として活動を開始。学業と両立しながら、会議・放送通訳、出版・実務翻訳者として活躍。現在23歳、今春大学卒業後は通訳業に専念する傍ら、夏には米国大学院留学予定。

Q. 帰国子女ではないと伺いましたが、語学はもともとお得意だったんですか。

両親が全く英語を話せないこともあり、せめて息子には! と思ったらしいんです。4歳頃から近所で英会話を習い始め、小学校6年生からジオスに週2回通いました。大学入学まで通って、一番上のクラスまで行きましたが、その頃にはかなり話せるようになっていたと思います。英語力が伸びた、と感じた時は二度あって、最初はジオスに通い始めた頃なんです。幼少時に学んだ基礎勉強の成果が出たのでしょうか。その次は、大学に入って通訳講座を受講するようになってからです。

Q. 通訳に興味を持ったきっかけを教えて下さい。

高校2年生の頃、長野オリンピックで通訳ボランティアを経験しました。非常に面白く、もっと本格的にやってみたいと思い情報収集していたところ、井上久美先生が上智大学で教えていらっしゃることを知ったんです。通訳入門から上級まで様々なクラスがあり、週5-6時間先生の授業を受けました。

Q. 他の言語も勉強されているのですか?

フランス語を勉強しています。1999年から1年間、ロータリー財団の奨学金を得てフランスに留学しました。今はまだ通訳レベルではありませんが、将来は英仏通訳ができればと考えています。

Q. プロとして正式に通訳をはじめたのは?

大学2年時に、井上先生からの推薦で、エージェントからお仕事を頂いたのが最初です。歯科セミナーでの通訳で大変緊張しましたが、事前に資料を頂いたので問題無く終えることができました。
まだ若いのにとよく言われますが、プロとして仕事がきちんとこなせれば関係ないと思っています。自分自身は全く気にしていませんが、例えば3-4日続く仕事となると、だんだんクライアントとうち解けてきて、年齢を聞かれることがあるんです。実はまだ学生でと伝えると、かなり驚かれます(笑)。

Q. 大学では、通訳講座のアシスタントもされているそうですね。

井上先生の授業補助、教材作りなどがメインで、先生が出張される際には大学での授業を代理で受け持っています。通訳技術だけでなく精神面でも鍛えて頂き、井上先生に教わることができて本当によかったと思っています。

Q. 1週間のスケジュールは?

大体週4日仕事が入っています。全て単発ですが、会議からセミナー、放送通訳、シンポジウムなどいろんなお仕事を頂きます。空いた時間には翻訳も少しやっています。土日も次の仕事の準備に追われることが多いのですが、時間が許せばサッカーの審判をやっています。中学校3年時に審判の資格を取ったんです。休日のいいストレス発散になっています。

Q. プロとしてこころがけていることはありますか? 得意な分野を教えてください。

ただ「言葉」を訳すだけではなく、井上先生に教わった「コミュニケーションを大切にする」ことを常に忘れないようにしています。
好きな分野は、建築、スポーツ、自動車、物流です。今後は金融方面も伸ばしていきたいと思っています。

Q. 今後のキャリアプランについて教えて下さい。

MAを取得するために、今夏米国留学する予定です。その後PHDも取得したいと考えているので、6年ぐらいはアメリカにいることになります。帰国後は大学で教えることも視野に入れつつ、並行して通訳もできればと考えています。更に幅広い分野で通訳の仕事ができればいいですね。

Q. 翻訳もされるんですか。

実務翻訳に関しては、保険、自動車、アニュアルレポート、企業案内等を翻訳しています。出版分野では今までに書籍を4冊翻訳させて頂きました。日本語で読んだ本が面白かったので、出版社に英語版があるかどうか問い合わせたんです。日本語しかなかったようで、「翻訳してみませんか?」と言われました。その後縁あって、英日出版翻訳を3冊経験させて頂きました。翻訳は通訳と異なり、時間をかけて言葉を選ぶことができます。このプロセスが、通訳の時に役立っていると思っています。

Q. もし通訳者になっていなかったら、何をしていたと思いますか。

子供みたいな話かもしれませんが、サッカーの審判です。最近は日本人審判でも、有名な人が出てきていますし、面白そうだなと思います。今は通訳が本当に楽しいので、別の人生は考えられませんが。

Q. 通訳を目指している方へのメッセージをお願いします。

とにかく継続することだと思います。それから、自分から動いていくこと。出版翻訳も、出版社に電話をかけたことによって扉が開いたようなものですから。毎日コツコツ勉強して積極的に動いていけば、道は開けると思います。

<編集後記>
今までインタビューさせて頂いた中で、最年少の会議通訳者さんでした。既に国内外の大学から、将来教授として迎えたいとのオファーがあるそうですが、10年後、20年後の木内さんはいかに。「インタビューなんて、通訳の仕事より緊張します」とはにかんでいらっしゃったのが、印象的でした。

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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