INTERPRETATION

第7回 英語での教育 (English-medium education)

グリーン裕美

国際舞台で役立つ知識・表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。2月も下旬となりましたがいかがお過ごしでしょうか。イギリスではここのところとても2月とは思えないほどの快晴続きで春の訪れを感じています(このまま寒くならないといいなあ…)。

さて、今回は英The Economist誌で英語教育に関する興味深い記事を見かけたので紹介します。

2019年2月21日付More children around the world are being taught in English, often badly では南アジアやアフリカなどの旧植民地の国々での教育が英語で行われていること(English-medium education)の是非を検討しています。これらの国々での教育は日本での教育とは諸事情が異なる面があるものの、参考になることも多くあります。

まずEnglish-medium education/schoolという表現ですが、これは英語を教科・科目(subject)としてではなく伝達手段(medium)として使っている教育/学校を指します。イギリスを含め、日本人駐在員の多い国では日本人学校が設立されていますが、そこでの教育は海外でも日本語で教育が受けられることを目的としているのでJapanese-medium educationと言えます。ただし現地校に行っている子供を対象に土曜日に日本語を教えている補習校は別です。日本でもインターナショナルスクールなど英語で授業が行われている学校がありますが、それらはEnglish-medium schoolと言えます。

Private schools have been mushrooming in India.

キノコという意味では誰でも知っている言葉mushroomですが、動詞で「急増する/膨れ上がる」という意味もあります。インドでは私立の学校が急増しているとのことですが、人気の理由は英語で授業が行われているからとのことです(One of their main attractions is that the great majority of them use, or claim to use, English as the language of instruction)。

ただし、人気があるから英語が使われているだけではなく、便宜上の理由もあるようです。例えば、教材開発を現地語で行うのが難しい(Developing curricula and printing books in local languages is expensive, and doing so in scientific subjects in which the terminology is in English is difficult)とか政治的な理由(Where tribes compete for power, the colonial language can be less controversial than the local ones)など。また医学や工学などの高等教育は英語でしか提供されていないことが多いようです。

少しそれますが同記事に「I have a BA in Urdu(ウルドゥー語の学位を持っている)」という文がありました。「大学で~を専攻した」というときに “I have a BA in ~” を使えると便利です。英文履歴書でも使える表現で、私のCVにもI have a BA in Englishと記述しています。ただしBAは文系の学位で、理系の場合はBsc。修士号を取得していれば I have an MA/MSc in ~.

英語での教育においての大きな問題点は教師の英語力、そしてそれを理解する生徒の英語力が挙げられています。非母語で教育を受けることは心理的な負担にもなっているようです。南アフリカでの調査によると、英語ではなく母語での教育(mother-tongue schooling)期間を延長することで識字率 (literacy) や給与が上がったという結果が出たとのことです。エチオピアにおいても政権交代により現地語で教育されるようになってから識字率が上がり、新聞購読率も高くなったそうです。

カメルーンにおいては、現地語で学んだ生徒は3年目にすべての教科で英語で学んだ生徒を上回っただけでなく、5年目には英語の成績でも追い越したとのこと。

各国それぞれ複雑な事情があるものの、英語を媒体ではなく教科として(a subject, not a medium)教える動きは広まっています。

その一方、“If our children don’t speak English, they can’t excel in today’s world(英語を話さないと今日の社会で成功できない)”と、子供の英語教育に熱心な親も多いようです。

以上、The Economist誌より気になった記事を紹介しました。

確かにグローバル社会において、英語の4技能は必須です。英語が話せたほうが視野が広がり、仕事の機会も増えるでしょう。けれども、非英語圏で英語での教育を受けることは長い目で見ると近道とは言えないようです。まずは母語でしっかりと教育を受けた上で英語を学習したほうが全体的な知識や学力という面で効率的といえるでしょう。

大切なことは語学力ではなく学習能力。健全で学ぶ心があれば、語学は後からでも集中して習得することができるというのが私の持論です。英語圏で育った愚息の日本語は2人とも片言程度ですが、幸い「健全で学ぶ心」は持っているようなのでいつか日本語も自分の意志で勉強してくれるといいなと思っています。

2019年2月25日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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