INTERPRETATION

第10 回 Brexit Update 続編

グリーン裕美

国際舞台で役立つ知識・表現を学ぼう!

「2019年3月29日」 通訳現場でも何度も言及された日付、つまりイギリスがEUから離脱するはずだった日ですが、ついにこの日が過ぎました。懸念されたcliff edge(第131回参照)は起きていませんが、見通しが立ったわけでもありません。英メイ首相はEU離脱案が可決すれば辞任するとの表明をしたものの同案は否決。英議会では8つの選択肢からindicative vote(示唆的投票)が実施されましたがすべて否決。したがって現段階では、先週お伝えした選択肢がすべて残っています。ただし、フローチャートは以下のようにアップデートされています。


2019年3月31日付 BBCフローチャート

EU圏では5年に一度欧州議会議員選挙が実施されます。今年は、その選挙の年で、5月23日~26日かけて706人の議員(MEP/Member of European Parliament)が選ばれます。英議会で離脱案が承認されても5月22日までしか延長が認められなかった理由は「選挙前にはEUを出てくださいね」とEU側に言われたからです。それ以上残りたい場合は、イギリスもこの選挙に参加しないといけないことになっています。選挙の準備は当然ながら「イギリスは離脱している」という前提で進められているので、これも長期延長する場合の頭痛の種の一つです。

実は、EUに懐疑心を抱いている(Eurosceptic)人が多いのはイギリスだけではありません。ハンガリーやラトビアなどの旧共産圏に加え、ギリシャ、フランス、スペインなどの国々でも反EU主義を掲げている人は増加しています。そして、皮肉なことにUKIP(イギリス独立党)同様に、EU離脱を主張している党の政治家が欧州議会の議員に選ばれる可能性が高まっています。というのも、EU加盟国においても欧州議会で起きていることはあまりにも遠すぎて一般の関心事ではないため、投票率は40%あまり(参照サイト)。実際に足を運んで投票するのは自国がEUから離脱することを求めている人が多い、という皮肉な結果が起きており、EUはこの動きが広まることを懸念しています。ただし、ギリスで起きた状況を見ている親EU市民は今回は投票に行くのではないかと思いますが…。

というわけで、引き続き、Brexit関連ニュースに注目です。

・英議会が何らかの案に合意できるのか、
・Theresa May’s dealと呼ばれるEU離脱協定案が4度目の正直で可決されるのか、
・いわゆるNo deal Brexit(合意なきEU離脱)、実際はon WTO terms(WTO条件に基づいて)離脱するのか、
・長期延長 (long extension)でイギリスも欧州議会選挙に参加するのか
その場合、国民投票(referendum)または総選挙(General Election)が行われるのか、Brexitを取り消すのか(cancel Brexit/revoke Article 50)

などが焦点となります。

英国に住む人々もEU側もBrexitの不透明感にはすっかり疲労しており “suffer from Brexit fatigue”という表現もよく見聞きするようになりました。来週こそは、確定的なアップデートができるといいなと思っています。

2019年3月31日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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