INTERPRETATION

第2回 見かけによらず濃いあなた

寺田 真理子

マリコがゆく

冗語って、何のことかわかりますか?

話をしているときに、「うーん、そうですねえ」とか、「えーと、まあねえ」とか、そんな言葉が入るでしょう?それが冗語です。情報や意味を持たないので、訳さなくてもいい言葉です。同時通訳をするときには、冗語があると「息継ぎ」ができてありがたいですよね。(なかには冗語しか発してくれないお客さまもいらっしゃるので、あまりにも間が持たないと仕方なく”Well,…”とか”Let me see…”とか訳しておきますが・・・。)

普通に話をするときは、「考える作業」と「話す作業」が並行しているので、冗語がよく出てきます。その分、情報密度は薄まっているわけですよね。これがプレゼンや書き言葉になると、よく練られてあるので当然ながら冗語は排除されてます。情報密度が濃いので、通訳しなきゃいけないことも増えるわけです。話をしている途中でいきなり書いたものを読み上げられたりすると、情報密度が急にグン!とあがって大変です。ホントに通訳泣かせだなと思ってしまいます。

女性は一般的に早口で、冗語も少ないことが多いです。ただ、言葉数は多くても、場合によっては話の情報密度はそれほど濃くないこともありますね。

対する男性陣は、「冗語の連発!」という方が多いものです。そんな中で、ひとり、とても印象に残っている男性がいます。ある会議で、ベンダー側の参加者のひとりが、手帳を見ながらよどみなく話していくんです。それが、冗語が一切なくて、全部情報なんです!見事なまでに、一語として無駄なものがないんですよ。ウィスパリングをしていたわたしは息切れしながらも、気になって仕方ありませんでした。「この人は、何者!?」

同じミーティングに参加していた人も、やはり彼に注目して観察していたそうですが、彼が見ていた手帳には「何も書いてなかった」んですって!何も見ないで、あんなによどみなく話していたわけですか・・・ちょっとその才能、私に分けてください!

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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